サウンドハウスで取り扱っているUPS製品の中で、「UPS500LX」「UPS1200LX」は矩形波出力UPSとなります。今回は矩形波出力UPSとは何か深堀していきます。

■ 矩形波出力UPSのラインナップ
CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / UPS500LX 無停電電源装置
CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / UPS1200LX 無停電電源装置
■ 目次
1. 電源コンセントと比べて、出力波形が異なる。
一般家庭用電源コンセントからはAC100Vの正弦波波形が出力されています。そのため、電源コンセントからの出力波形とは異なります。波形を図示すると以下のようになります。
正弦波

矩形波

実際にUPS1200LXの矩形波波形をオシロスコープで読み取ったものです。

正弦波は緩やかな波のように描かれますが、一方で矩形波はブロックのような波形となります。電源コンセントからの波形とは異なる波形であることを認識しておく必要があります。
2. 矩形出力時に、テスターで直接出力電圧を計測しても100Vではない。
多くのマルチテスターのAC計測レンジは正弦波出力測定を行うものです。UPS500LX及び1200LXの矩形波出力時(バッテリー駆動時)に、出力インレットにテスターピンを当てても正確な計測はできません。矩形波出力時にマルチテスターで計測した場合、おおよそ60-85V程度の値を示します。矩形波出力測定ができる測定機でないと正確な電圧測定ができませんのでご注意ください。
実際にUPS1200LXで計測の検証をしてみました。

今回使用したマルチテスターでは、81.9V~82.1Vを示しましたが、いくつかのテスターで検証したところ、テスターの精度によってその数値にはバラツキがあり、一部高価なテスターでは矩形波であっても正確に読み取ることができるものも存在しました。
3. 接続使用機器に関する注意
UPSはいくらPC・PC周辺機器用のバックアップ電源といっても注意すべき点があります。それは、矩形波には対応していないPCも存在しているということです。
問題となるのは電源がPFC回路を採用している場合です。PFC回路とは「Power Factor Correction」の略で、力率改善回路と呼ばれます。高調波の抑制や、従来のものより消費電力を低く抑えるために採用されます。欧州では規制の対象ともなる部分で、世界的にPFC回路を採用している傾向があります。
例えば現在のPCの電源ユニットは、PFC(力率改善回路電源)又はActive PFC(電力をより効率的に使うための機構)搭載率が年々上昇していますが、矩形波出力のUPSの場合、PFCを搭載した電源では動作しない場合があるようです。原因としては、安全設計がよりしっかりしているPFC回路で波形の補正幅が大き過ぎる(従来は正弦波を受ける設計となっているため)という基準で危険を感知し、電源供給を止めます。故に停電や電圧変動でバッテリー出力(矩形波出力)に切り替わった瞬間にバックアップできず電源が落ちてしまう危険性が考えられます。
それでも矩形波UPSに一定の需要があるのは、そのコストの安さと使用者側の短時間のバックアップさえできれば問題がないという認識の上で、採用されることがあるためです。但しそこには先程説明した注意点を頭に入れておく必要があります。
実際にPCの説明書などの注意書きに矩形波非対応を明示しているメーカーを(現時点で)調査したところ、ごく一部に限られました。各メーカーによって表示に関して異なる部分があるようで、(実際には)短時間であれば使用できる場合もあるから明示していないのか、真意は定かではありません。
一方で正弦波UPSであれば商用電源と同じ波形の電力供給が行われますので、PFC回路の動作に全く影響する事がありません。あらゆるPCに対して、より安全に、安心のバックアップ電源環境を提供が可能です。弊社でも正弦波UPSをラインナップしております。
■ 正弦波UPSラインナップ
CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / UPS1000PSII 無停電電源装置
CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / UPS2000PSII 無停電電源装置
CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / UPS1000RT 無停電電源装置
以上から、UPSを選ぶ際には、PC及びその周辺機器の電源仕様とその使用環境に応じて、矩形波UPSと正弦波UPSの違いを理解し、適切な選択を行うことが重要です。