■これまでのGM音源シリーズ
GM音源01 いにしえのGM音源
GM音源02 ピアノカテゴリー
GM音源03 クロマチック・パーカッション・カテゴリー
GM音源04 オルガン・カテゴリー
GM音源05 ギター・カテゴリー
GM音源06 ベース・カテゴリー
GM音源07 オーケストラ・カテゴリー
GM音源08 アンサンブル・カテゴリー
GM音源09 ブラス・カテゴリー
GM音源10 リード・カテゴリー
GM音源11 パイプ・カテゴリー
GM音源12 シンセリード・カテゴリー
GM音源13 シンセパッド・カテゴリー
SFXとはSpecial effectから来ている略語で、主に映画の特殊撮影を意味しますが、ここは音源なので、人工的に作り出した特殊サウンドということになります。既存楽器から解放され、イメージの赴くままに作られた、一番自由なサウンドカテゴリーです。絵に例えると前衛的な抽象画といったところでしょうか。重要な点としては、このカテゴリーのサウンドには音程があり、効果音とは違うということです。
GM音源は、決められた音色リストに沿って、各メーカーがサウンドを自由に作れます。しかし実在しない楽器の場合、そのよりどころとなるのはパッチ名しかありません。GM音源はRolandが作成したGS音源が元となっているため、結局のところ、その音に近くしないと互換性を失ってしまいます。シンセならではの自由度のあるカテゴリーでありながら、自由度があまりないという微妙な立ち位置です。パッチ名も昔から賛否両論という感じです。元祖Rolandでさえ、初めに作ってしまった音色からは逃れられなかったと思います。
動画は特殊な音が多いのでエフェクトはオフにして素の音だけにしています。まずC4だけを鳴らして、どう鳴るか試し、その後に簡単なフレーズを弾いて雰囲気を見ています。
097 000 Ice Rain (2 voices) 音域 C2-C7
GM2の仕様書ではRainというパッチ名です。しかしGM音源が発売された1991年当時からRolandではIce Rain(雹:ひょう)となっていて、氷の粒を連想させるサウンドになっています。 シンセブラスかストリングスのような音と、シロフォンなどをループさせた硬いアタック音を混ぜています。 アタック音は、徐々に音が下がるというギミック入りです。サンプリングの関係上、高い音はスピードが速く、低い音はスピードが遅くなっています。音程はストリングス系の音が担い、下降するアタック音は音程感が希薄なため、効果音という扱いになっています。
098 000 Soundtrack (2 voices) 音域 C2-C7
サウンドトラックは映画音楽を意味しますが、特定の音をイメージできるものではありません。 このパッチの音はストリングス系の音を重ねて、一方のピッチをずらし、レゾナンスの効いたフィルターを通すことでアタックに癖のある音を作っています。 スペクトルを見ると自然倍音以外の音(青い線)も入っているのが確認できます。 どことなくエスニックな香りで、中国の銅鑼の弦楽器版という雰囲気がします。
099 ベル、体鳴楽器系
099 000 Crystal (2 voices) 音域 C2-C7
1987年に発売されたRoland D-50に入っていた音です。ガラスを叩いたような響きがします。音的にはチェレスタを使っているようにも聞こえます。この手の金属系の音と言えば80年代のヤマハDX7のFM音源が有名です。そのFM音源に対抗してLA音源を開発した経緯がありますが、金属的な音はFM音源に軍配が上がりそうです。
Roland D50, public domain (Wikipediaより引用)
099 001 Syn Mallet (1 voice) 音域 C2-C7
マレットは先端に柔らかい素材を付けた枹(ばち)です。マレットを使って演奏される楽器は体鳴、膜鳴楽器となります。楽器の指定はないものの、マレットを使って出る音で、そのシンセ版ということになります。 柔らかいアタックで減衰するサウンドです。
100 000 Atmosphere (2 voices) 音域 C2-C7
Atmosphereは大気、空気、雰囲気とか、そんな意味になるので、かなり曖昧なイメージです。 パッチの音は、ハープとストリングス系をミックスし、滑らかに減衰していくサウンドです。 他の楽器をサポートするのにストリングス系の音はとても便利です。オーケストラなどでは、ストリングスが全体を包み込むようにサポートすることで、音の隙間を埋めて、充実した音空間を作ります。シンセの音作りでも同じことが言えます。サスティーンが短いハープをストリングスがフォローしているわけです。
101 000 Brightness (2 voices) 音域 C2-C7
輝き、鮮明さなどの意味になります。特定の音色のイメージはありませんが、光をイメージするような音という感じでしょうか。コーラス系とストリングスを混ぜたような音ですが、本来アタックが遅い音の組合わせにもかかわらず、このパッチはアタック感があります。ただ聖歌隊的なコーラスが持っているイメージからは離れることはできないようです。
102 000 Goblin (2 voices) 音域 C2-C7
パッチ名はゴブリンで、ファンタジーなどに出てくる小鬼になります。 基本となるサウンドはシンセボイス系の音を強烈にスウィープさせています。数秒で安定したかと思うと、そこから突然変調されます。予測を裏切るような変化をさせることで、気味悪さを演出しているようです。コーラスサウンドは本来、神聖なイメージになりやすいのですが、それを変質させることで、真逆のイメージになるところが面白いところです。天使が悪魔になったような印象です。 さらに効果音として、音程のないバブルのような音を加えることで気持ち悪さを決定的なものにしています。
103 エコー系
103 000 Echo Drops (1 voice) 音域 C2-C7
エコーとは、こだまする音のことなので、ディレイ的な音を連想しますが、このパッチは、そういう音ではないようです。コーラス系の音を2個使ってスウィープさせ、鍵盤を離したときに、はじけるような音が入ります。このはじけた音が水を連想させるので、Dropsというパッチ名は納得できます。
103 001 Echo Bell (2 voices) 音域 C2-C7
アナログシンセのような音とベルの組み合わせで、太く丸い音と、キラキラ金属音の対比が特徴的です。 音を鳴らすとアタックで、ベルがチンと鳴り、そのまま小さく小刻みに鳴り続けます。そして鍵盤を離したときに、またベルがチンと鳴ります。
103 002 Echo Pan (2 voices) 音域 C2-C7
パッチ名にはトーンのイメージはありませんが、音をどう扱うかという指示だけがあります。 エコーは、こだまで、Panは左右の定位を指しますので、左右にこだまするという感じでしょうか。 その名前に偽りはなく、ちゃんとエコーしながら、左、中央、右へと音が飛んで行きます。 エコーは、おそらくエンベロープを駆使したのだと思われます。その制約から、あまり多くの回数こだまできなかったのでしょう。
104 000 Star Theme (2 voices) (sci-fi)音域 C2-C7
GM2の仕様書を見るとsci-fiというパッチ名になっています。つまりScience Fiction = SFです。TTSではStar Themeというパッチ名になっています。ここからイメージするサウンドは個人差が大きすぎて、ひとつのイメージには絞り込めません。 TTSではシンセストリングスと金属的な音を混ぜているようです。柔らかい音と金属的な音のハイブリッドという感じです。金属的なストリングスという感じなので、これがSFというイメージでしょうか。
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