■これまでのGM音源シリーズ
GM音源01 いにしえのGM音源
GM音源02 ピアノカテゴリー
GM音源03 クロマチック・パーカッション・カテゴリー
GM音源04 オルガン・カテゴリー
GM音源05 ギター・カテゴリー
GM音源06 ベース・カテゴリー
GM音源07 オーケストラ・カテゴリー
アンサンブル・カテゴリーは、バイオリン~コントラバスによるストリングス、シンセサイザーによるストリングス、ボイスコーラス、80年代によく使われたオーケストラル・ヒットなどの音色があります。
049 ストリングス
ヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスによる弦のアンサンブルで、各楽器の音域は以下の通りです。
- ヴァイオリン G3-C7
- ビオラ C3-C6
- チェロ C2-C5
- コントラバス E1-G3
本来は各楽器ごとに打ち込みを行って、それをミックスして初めてストリングアンサンブルになります。 このストリングスを使えば、各楽器を同時に扱えますし、多人数で演奏している感じを簡単に出せますので、重宝する音色と言えます。
049 000 Strings 音域 E1-C7
モノラルストリングス。
049 001 Orchestra 音域 E1-C7
より広がりがあるステレオストリングス。
049 002 60’Strings 音域 E1-C7
低音が豊かな重厚なストリングス。
050 000 Slow Strings 音域 E1-C7
上記と同じヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスによる弦のアンサンブルですが、立ち上がりがゆっくりな音色となります。 GM音源では現代的な音源に比べてアーティキュレーションが貧弱で、演奏技法に変化を加えたい場合は、音色を変えるか、音を加工するしか方法はありません。アンサンブルカテゴリーにストリングスのアーティキュレーションは、このSlowしかありませんが、オーケストラカテゴリーにもTremoloとPizzicatoがあるので、それも利用できます。GMの音色配置はカテゴリー別で、探しやすくなっていますが、例外やらカテゴリー間違いのような音色がたまにあるので、ちょっと混乱します。
051 シンセストリングス
シンセサイザーによるストリングスです。リアルなストリングスとは違った使いやすさがあります。 このカテゴリーにあるシンセストリングスは70年代に使われていたポリフォニックのストリングマシーンを思わせます。 とくに世界的に有名な機種が写真のSolina String Ensembleとなります。現在においても、この機種のサウンドは魅力的で多くのソフト音源でエミュレートされ続けています。
Solina String Ensemble
Kimi95 at it.wikipedia, CC BY 3.0 (Wikipediaより引用)
分周回路を使った49鍵盤の完全ポリフォニックで、BBDによるコーラスサウンドが特徴です。当時のシンセサイザーは、まだモノフォニックが主流で安価に和音を出すことは難しかったため、電気回路の工夫によって完全ポリフォニックを実現していました。完全とは同時発音数という数え方ではなく、鍵盤を全部押せば、すべての音が出ることを意味しています。
またBBDとはBucket Brigade Device素子のことで、日本語に直訳するとバケツリレー装置になります。文字通りの機能で、バケツに相当するのがコンデンサとなり、数百個並んでいます。そこへアナログ信号を渡し、クロックごとに次のコンデンサに移動して行きます。アナログ信号なので徐々に劣化しますが、仕方ないことでした。この素子によってコーラス効果を作り出し、独特な音を生み出していました。
当時はデジタル処理は高価だったため、このBBD素子が大活躍していました。70~80年代のエフェクタ内でよく見かけます。下写真は古い電子ピアノのコーラス回路です。BBD素子は松下電子工業のMN3204で512ステージ(コンデンサ)を持っています。隣にあるMN3102とセットで使います。最近はクリーンすぎるデジタルディレイを嫌って、あえてBBDをエミュレートするなどアナログ感を出すのがブームのようです。
051 000 Syn.Strings1 音域 E1-C7
左右に広がり、きれいな音のシンセストリングスとなっています。癖があまりないので使いやすい音です。
051 001 Syn.Strings3 音域 E1-C7
こちらは実機のSolina String Ensembleに近いざらつきが感じられます。
052 000 Syn.Strings2 音域 C2-C7
シンセサイザーならではのスイープサウンドなので、長めの音に使うと効果的です。
053 ボイスサウンド1
人の声を再現した音色です。2003年にボーカロイドが市場に登場してからは、ソフトウェア的に人の声を再現するのは珍しくなくなり、ますます自然な方向に進化しています。GM音源を開発していた1990年代は、機械に歌詞を歌わせるというのは現実的でなかったため、楽器と同じように、特定の歌声をサンプリングし、それを再生するという方法が主流でした。GM音源に搭載されている人のボイスサウンドはいくつかありますが、人の声を録音し加工したものと、シンセサイザーで合成したものに大別できます。
DistinctArt, CC BY-SA 4.0 (Wikipediaより引用)
053 000 Choir Aahs 音域 C3-G5
「あ~」という人の声をサンプリングしたボイスサウンドです。 壮大な曲等のバッキングで利用しやすい音になっています。
053 001 Choir Aahs 2 音域 C3-G5
こちらはバリエーションで、広がりがある「あ~」コーラスとなっています。
054 ボイスサウンド2
これも人の声をサンプリングし、加工した音色と思われます。アタックが強調されたボイスサウンドです。
054 000 Voice Oohs 音域 C3-G5
アタックの効いた「どぅ~」コーラス。
054 001 Hamming 音域 C3-G5
アタックの緩やかな「どぅ~」コーラス。
055 ボイスサウンド3
人の声をシンセサイザーで再現した音になります。声の母音「あいうえお」は、特定の周波数帯域が弱まったり、強まったりして、いくつかの山谷を作り出すことで発音しています。周波数帯域は相対的なもので、声の高さで変化します。この山谷のパターンをフォルマントと言います。電気的に声らしいものを作るときは、フォルマントをシミュレートすることで、母音は比較的容易に作り出すことができます。
055 000 Syn Vox 音域 C3-C6
シンセサイザーで合成したボイスサウンドでナチュラルなコーラスに向いている音になっています。
055 001 Ana Voice 音域 C3-C6
やや濁りのある太い音のアナログシンセボイス。冨田勲がアルバム惑星の中で使った宇宙飛行士のボイスのような音がします。下写真のMoogモジュラーシンセは接続の自由度が高く、アイデア次第で様々な音が作れました。ただしモノフォニックで、パラメータも記録できないので、これ1台で多重録音するのは、かなりの労力と根気が必要だったと思います。
The original uploader was Kimi95 at Italian Wikipedia, CC BY 3.0 (Wikipediaより引用)
056 オーケストラル・ヒット
80年代によく使われたFairlight C.M.I(当時1200万円)によるオーケストラル・ヒットがオリジナルサウンドです。実際のオーケストラ演奏の一部を切り取って、それをプリセットとして用意したところが画期的でした。プリセットの「ORCH5」はストラヴィンスキーの火の鳥の一部を使っているため、著作権など心配する声もありましたが、大ヒット曲で使われ始めても大騒ぎにならなかったことから、積極的に使われるようになりました。Fairlight C.M.Iの登場によってシンセサイザーはサンプリングの時代に突入しました。
Joho345, Public domain (Wikipediaより引用)
056 000 Orchestrahit 音域 C3-C5
Fairlight「ORCH5」に近い音です。 オーケストラル・ヒットの音は構成音がなんともつかみにくいため、周波数スペクトルで見てみます。 下画像がC4を鳴らした周波数スペクトルです。 2オクターブ下のC2からも出ていることがわかります。基本的に倍音豊かな単音、もしくはメジャーコードと考えてよいと思います。 オーケストラル・ヒットは、弾いている音だけが鳴っているわけではないので、気を付ける必要があります。
056 001 Bass Hit 音域 C3-C5
000にベースの音がミックスされたオーケストラル・ヒット。ベースは鍵盤で弾いた音よりも2オクターブ下が鳴っています。
056 002 6th Hit 音域 C3-C5
000に6thが入っているオーケストラル・ヒットです。YesのOwner of a Lonely Heartはオーケストラル・ヒットを有名にした曲ですが、おそらくこれに近い音が使われているように思います。
056 003 Euro Hit 音域 C3-C5
000よりもドライで歯切れのよい音がします。
コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
投稿についての詳細はこちら