
このコラムは、これから初めて弾き語りライブを計画している方に向けて、私ゲンダユウのこれまでの様々な経験をもとに綴っています。参考にしていただけたら幸いです。
ライブにおける集客とは何か
本シリーズもこれまで「会場選び編」「セットリスト編」「事前練習編」と続けて来ましたが、今回は「集客」というテーマに触れていきたいと思います。そもそもなぜ必要なのか、どうやれば良いのか、始めたばかりの頃は分からないことも多いと思いますが、まずは「ライブにおける集客とは何か」を考えていきましょう。
音楽活動において、集客ほどミュージシャンのモチベーションやメンタルに大きな影響を与えるものはないかも知れません。中には集客に左右されず自分の音楽をひたすら追求して活動していくという人もいますが、大抵の人は自身の集客力を音楽的評価や人気のバロメーターとして捉えて、一喜一憂してしまいがちです。音楽活動の目的をどこに置くかにもよりますが、ミュージシャンにとって集客は良いに越したことはないものと言えるでしょう。
次に金銭面への影響についてです。ライブ会場も店舗としての経営がありますので、出演者側に集客ノルマを設定しているところも多くあります。例えば、1,500円のチャージ5名分7,500円で設定され、もし3名しか集まらなければ、不足の2名分の3,000円は出演者側で支払うことになります。この仕組みをノルマではなく、出演料と割り切って活動する人もいますが、そこは個人の考え方によるところかと思います。反対にチャージバックと言って、集客が多い時にその人数に応じたチャージ金額の一部をギャラとしてミュージシャン側に還元するお店もあります。このような場合は集客が収益にダイレクトに比例します。
一方で、集客ノルマを設定していないお店もあります。例えば、飲食が収益のメインで、ライブはあくまでも付加価値としているお店です。出演者への金銭的負担がない代わりに、付加価値としての音楽的クオリティが求められます。また、これとは別に、出演料(例えば30分枠で3,000円等)さえ払えばライブができるようなお店は、「出演者=お店にとってのお客さん」という構図になっています(ノルマ制の会場も厳密に言えば同じ構図ですが)。このようなお店は、集客ストレスなくライブができるので気楽ではありますが、やはりできる限り集客を心掛けた方が自分にとってもお店にとっても良いと思います。
最初は友人知人に来てもらおう
このように集客の意味合いについて説明して来ましたが、初めて弾き語りライブをやる場合は、あなたの音楽に理解や興味を示す友人知人に声を掛けて来てもらうことをオススメします。この「理解や興味を示す」と言うところがポイント。音楽は個人の趣向性が強く、仲の良い友人が必ずしも音楽の理解者になるとは限らないからです。相手の気持ちを察することなく、何度も誘ってしまうと関係性にも影響が出て来てしまうかも知れませんので注意しましょう。
余談ですが、集客ノルマを果たすために、手当たり次第に知り合いにライブの誘いを掛け、友人知人を失うミュージシャンが昔からいます。どんな場合も「心から来て欲しい」と思う相手に声を掛けるよう心掛けましょう。
また、お知らせ時には日時(出演時間)はもちろん、チャージ金額やお店のURLや地図も必ず付けておきます。誘う頻度も高過ぎると負担を掛けますので、関係性を加味した適度なインターバルでお誘いするのが理想です。
ライブは音楽以外の楽しみも提供できる
声を掛けてライブに来てくれる人はなぜ来てくれるのでしょうか?もちろん、音楽自体が好きだからであり、あなたの歌や演奏、作品にも興味を持ってくれているからであることに間違いありません。
ですが、貴重な時間とお金を割いて足を運んでくれると言うことは、あなたの日頃の人望によるところも多々あると思います。プロミュージシャンに対しても、音楽性だけじゃなく人間性も含めてファンになることってありますよね。それと同じだと思います。そんな時は素直に感謝しましょう。
一方でライブは、来てくれる人にとって音楽以外の楽しみを提供できる場にもなり得ることが多々あります。例えばそのお店のお酒やお食事。最近では本格的なバーやレストランを兼ねているお店も多く、雰囲気や看板メニューも含めて楽しんでいただけるかも知れません。
また、ライブ会場の近くに、兼ねてから行きたいと思っていた場所(お店や名所など)がある場合、来たついでに、そこへ行く良い機会になることもあるようです。人によっては思い出の場所であったりもするようで、私も実際「久しぶりに懐かしい下北沢に来ることができて良かった!」と言われたことがあります。それ以前に、演者が誰であれライブ自体に「非日常」を提供する力があるということも知っておくと良いでしょう。
ちなみに、長らく活動していくと、ライブが昔の仲間との再会の場や同窓会的な場として機能してくれることもあります。私の場合は幸運にも学生時代のバンドサークルの仲間と今でも繋がりがあるので、その時の仲間たちが定期的に応援に来てくれて繋がりの継続にも役立っていますし、それゆえにライブ後の乾杯タイムも楽しみだったりもします。まさにライブは「ご縁繋ぎ」になっています。

友人知人以外を集客することはできるのか
活動が継続していくと、友人知人に声を掛けて来てもらうことにもやがて限界が訪れます。また、知り合いのよしみ、ひいき目ではなく、純粋に自分の音楽のファンになってライブに来てくれる人が欲しいと思ってしまうのも、またミュージシャンならではとも言えます。
ネット上でも「ライブに人が来ない」「固定客が増えない」等の悩みが散見され、これを解決すべく、チラシやSNS等での告知を強化すべきとのアドバイスも数多く見受けられますが、現実はなかなか難しいものです。そもそもメジャーの世界でも、ブレイクさせるためには、宣伝や営業といった専属スタッフが置かれているくらいなので、集客力がないからと、自分の様々な至らなさに目を向けて落ち込む必要もないと思います。また、そのような心理に付け込んで、怪しいレッスンやイベントに誘う悪いオトナもいますので注意してください。
とは言え、集客へのチャレンジをすることは大切なこと。そのためには、やはり誰でも気軽に自身の情報を知ることができる場や、楽曲を聴くことができる環境を整えることが第一歩になります。今の時代はネットがありますので、YouTube等へデモ音源やライブ映像をアップしてみたり、SNSでライブ情報や自身の考えを発信してみたりするのも良いですし、そこから何かのきっかけでバズってライブに多くの人が来てくれる…なんて可能性もゼロではないかも知れません。
また、現実的な話をしてしまうと、世に出る運命を持つミュージシャンは、その魅力ゆえに周囲が放っておかないので、ファンが続々増えていったり、メジャーからも声が掛かったり、本人も理由が分からず大きな流れが押し寄せる…ということが多いように思います。もちろん、あなたもその運命を持つ一人かも知れませんので、まずはチャレンジをしてみてはいかがでしょうか。
まずは身近な「お客さん」となる共演者やお店の方を大切に
仮に集客が0人だったとしても、ブッキングライブであれば、あなたにとっての「お客さん」になり得る人が必ずいます。それは共演者です。また、その共演者がお客さんを呼んでいてあなたの出番の時も聴いていたとしたら、あなたにとってのお客さんにもなります。当然、共演者同士でも同じ関係性が成り立ち、持ちつ持たれつということにもなります。また、お店のマスターやスタッフの方々も、お店としての仕事をしつつも、あなたの歌や演奏に耳を傾けてくれていることが多いものです。一期一会かも知れませんが、ぜひそんな聴き手の方たちを大切に、心を込めたライブステージにして欲しいと思います。
私も友人知人以外の集客ができずに、音楽活動の意味を見失い、やめてしまおうかとすら思った時期もありました。そんなことを音楽バーのマスターをやっている先輩ミュージシャンに相談したところ、「そうやって悩むところもミュージシャンぽいな(笑)。だからこそ曲ができるんだよな」と励ましてくれた上で、「聴き手の人数やリアクションという見返りを求めるな。どこかで誰かが聴いてくれているかも知れないし、いつか誰かに伝わるかも知れない。とにかく曲を書いて歌い続けろ。さり気なくかっこよく…」という言葉をもらい背中を押されて今に至ります。
音楽活動の目的は人によって異なると思いますが、やはり最後は「音楽への愛」、それも見返りを求めない「無償の愛」を持つことができれば、幸せな音楽活動人生を歩めるのではないでしょうか。集客に惑わされることなく、例え自己満足だとしても、あなたの信じる音を奏でて充実した音楽人生を歩んで欲しいと思います。
あなたの記念すべき初めての弾き語りライブが素敵な時間になることを願っています。
※ネットへの楽曲のアップは集客のきっかけとなるかも知れません。そのための録音ツールとしてオススメなのがこちらのiPad・iPhone・iPod touch対応オーディオインターフェイス。手軽にマイクやギターからの音を録音アプリへ取り込むことができるので私も愛用しています。
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