■これまでのGM音源シリーズ
GM音源01 いにしえのGM音源
GM音源02 ピアノカテゴリー
GM音源03 クロマチック・パーカッション・カテゴリー
GM音源04 オルガン・カテゴリー
GM音源05 ギター・カテゴリー
GM音源06 ベース・カテゴリー
GM音源07 オーケストラ・カテゴリー
GM音源08 アンサンブル・カテゴリー
GM音源09 ブラス・カテゴリー
GM音源10 リード・カテゴリー
Pipeカテゴリは、木管楽器のエアリード系を扱っています。リード・カテゴリーと同じくGM2になっても拡張されなかった珍しいカテゴリーです。 管楽器全般に言えることですが、メロディなど目立つパートを担うことが多いです。ベタ打ちでは機械的になりやすいので、音量変化、ビブラート、ピッチの上がり下がりなど、楽器ごとにニュアンス調整が必要で、細かなエディットを要求されるカテゴリーです。
エアリードは、リード楽器のように振動するパーツがあるわけでもなく、リップリードのように唇を振動させるわけでもありません。唄口と呼ばれるエッジに空気の流れを与え、気圧差によって管と共鳴振動を起こし音が鳴るようになっています。近代になるまで、その原理は解明されなかったと思いますが、楽器としては数千年前から存在しているわけで、原理が分からなくても実用品は作れるというわけです。
下動画でTTS-1による各楽器のサンプル音が聞けます。
073 000 Piccolo 音域 D5-C8
管楽器の最高音域を出すことができます。原理はフルートと同じで、約1オクターブ上の音が出ます。サイズはフルートと比較して約半分程度の長さになり、フルート奏者が持ち替えで吹くことが多い楽器です。鋭い高音は、音圧の高いブラスバンドの中でも目立つほどです。

074 000 Flute 音域 C4-C7
フルートは、エアリードを代表する楽器です。現代のオーケストラにレギュラー入りしているエアリード楽器は、このフルートと、そのバリエーションのピッコロだけです。現在の表現力豊かなフルートは、テオバルト・ベームによって考案されたものが基準となっています。このベーム式フルートは1851年のロンドン万博で一般公開されました。それまで木製だったフルートが金属になり、全音孔にキィ(孔を押さえる機械式の蓋)が採用され、プレイヤビリティも向上。音量があり、ピッチも安定、楽器としてのバランスに優れていました。 その後フルートといえばベーム式フルートというぐらい世界中に浸透していきます。それから150年以上経ちますが、楽器自体には大きな変化はありません。いかにベームのフルートが完成されていたかが窺われます。 元々木製だったので、木管楽器と呼ばれていたフルートですが、ベーム式が誕生してからは、金属製なのに、そのまま木管楽器と呼ばれ続けます。どこかで呼び方を変えようという意見はなかったのでしょうか?個人的には、エアリード楽器と呼びたいです。

075 000 Recorder 音域 C4-C7
バロック音楽の時代からあるリコーダー。小中学校ではソプラノ、アルトリコーダーを音楽の授業で吹いた人も多いと思います。 楽器は進化していきます。リコーダーはかつて宮廷音楽で使われていても、次第に音量や表現力が求められ、新しい楽器に取って代わられます。実際にリコーダーは一度表舞台から姿を消しています。 復活したのは近代の音楽教育に採用されたからです。ウインドウェイが固定されているため、表現力はフルートには及びませんが、安定したピッチで比較的容易に音が鳴ります。構造もシンプルで、プラスチック成形技術を使えば安価に製造できたため、教育用途では重宝されたというわけです。

076 000 Pan Flute 音域 C4-C7
パンパイプとも呼ばれています。原始的な構造で、各音程ごとに管がある閉管楽器です。メロディを吹くには、ハーモニカのように移動が必要となりプレイヤビリティで難があります。素朴な音で、民族的な雰囲気が漂います。世界中にこれの原型となる楽器はありますが、多くの日本人は南米アンデスのイメージが強いと思います。

Photograph © Andrew Dunn, CC BY-SA 1.0 (Wikipediaより引用)
077 000 Bottle Blow 音域 C4-C7
ビンを吹いたときのボーという音で、ヘルムホルツ共鳴原理に基づき音程が決定されます。 楽器として扱われることは稀ですが、科学実験としてはメジャーな存在です。 またサンプリングしたものを利用するならば、プレイヤビリティは関係ないので実用的な音色として扱えます。 音色としてはパンフルートに近いですが、アタックに息を吹きかけるときの盛大な「フッフ」ノイズが入ります。

Aurélien Mole, CC BY-SA 3.0 (Wikipediaより引用)
078 000 Shakuhachi 音域 G3-C6
日本の尺八です。構造的にはフルートに近いエアリード楽器で、その表現力もフルートに酷似しています。音孔は5個しかないため、演奏する調ごとに尺八を持ち替える必要があります。 表現力があるということは、様々な質の音が出せることを意味します。 TTSのような昔のサンプリング音源では、それらを網羅することは難しく、かなり限定的で平坦な音しか出すことができません。

Lombroso, CC0 (Wikipediaより引用)
079 000 Whistle(口笛) 音域 C4-C7
口笛です。かつて冨田勲さんがアナログシンセサイザーのモーグで口笛っぽい音を出していましたが、かなりリアリティのある雰囲気でびっくりしたのを覚えています。一方TTSの口笛はサイン波に軽くビブラートがかかっているだけという印象で、あまり口笛っぽくありません。おそらく生音のサンプリングでもないように思います。 そうなると口笛らしく聴かせるには、いろいろなテクニックを駆使する必要があります。 動画では、アタック処理がよろしくなく、ノイズもないので、とても人工的になってしまいました。別音色のノイズなどを組み合わせて、オートメーションを使いまくれば、もう少しそれらしくなると思います。

Frank Duveneck, Public domain (Wikipediaより引用)
080 000 Ocarina 音域 C4-C6
オカリナはエアリード楽器ですが、形状が他の管楽器と違って円筒状になっていません。筒の長さで音程を決定するのではなく、その容積で決定されます。音程は基本的にヘルムホルツ共鳴原理から計算できます。 以前、計算結果から作ったことがありますが、ダイアトニック・スケールの音であれば、近似させられましたが、半音階は平均率から大きくかけ離れてしまい、孔数などを増やしたり、フルートのようなキーの必要性を感じました。 正確なピッチで調整したオカリナでも、吹き加減で、簡単にピッチがずれてしまうので、演奏者にゆだねる部分が多い印象です。 また音域も狭く、他管楽器のような音域を実現したい場合は、複数のオカリナを合体させるか、内容積を可変させる必要がありました。そんなことで、何かと制約の多い楽器です。オカリナでクロマチックな演奏をする人は、優れた音感とテクニックが必要になってきます。見た目や音色からは、お手軽な楽器に見えますが、実際はかなり大変な楽器です。
TTSのオカリナは、波形そのものはサイン波に近いです。多少の倍音は含まれていますが味気ない感じになりやすいです。 オカリナらしさを演出するには、ピッチの不安定感や音量を動的に調整する必要があります。サンプルは宗次郎さんのコンドルを真似してみました。

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