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蠱惑の楽器たち 48.GM音源09 ブラス・カテゴリー

2022-11-15

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

■これまでのGM音源シリーズ
GM音源01 いにしえのGM音源
GM音源02 ピアノカテゴリー
GM音源03 クロマチック・パーカッション・カテゴリー
GM音源04 オルガン・カテゴリー
GM音源05 ギター・カテゴリー
GM音源06 ベース・カテゴリー
GM音源07 オーケストラ・カテゴリー
GM音源08 アンサンブル・カテゴリー

金管楽器カテゴリーです。名前に金管とあるので、金属製の管楽器をイメージしてしまいますが、分類的にはリップリードの管楽器を指します。 マウスピースを使うことで、唇を震わせて空気の疎密波を作ります。これが音源であり、音程となります。それを管で増幅させ最終的な音を作り出します。 金管楽器は管の長さが同じでも整数次倍音を鳴らすことができ、突撃ラッパなどは3、4、5倍音の3音を使ってメロディを作っています。 下写真はバルブを持たないビューグル(軍隊ラッパ)です。

Bugle-rhside w:User:Nevilley, CC BY-SA 3.0 (Wikipediaより引用)

現代の金管楽器は、管の長さをバルブなどで伸縮させることで、2オクターブ以上の音域をクロマチックに演奏することが出来るようなっています。 金管楽器の歴史は管の長さ調整機構の歴史でもあります。

このカテゴリーでは代表的な金管楽器、そのアンサンブル、さらにシンセブラス系を扱っています。下動画でTTS-1による各楽器のサンプル音が聞けます。

057 トランペット

トランペットは金管楽器の中では高音部を担当します。 金管楽器は奏者が吹いた息を効率よく音に変換できるため、大きな音を出しやすい楽器です。特にトランペットは可聴域でも敏感な周波数帯域を得意としていますので、なおさら大きく、よく通る音に聞こえます。 以前、高速道路の下、おそらく100dB超える騒音の中で練習をしているのを見たことがありますが、トランペットだけが自動車の騒音を物ともせず鳴り響いていました。どんな騒音の中でも貫く音を出せるようです。軍隊で信号ラッパとして使われていただけのことはあります。

実際に大きな音は、力強い音に聞こえることがほとんどです。逆にパワーが無ければ大きな音が出ないわけで、当たり前のことではあります。しかし、力強い音をスピーカーなどで小音量で再生した場合でも、力強さは損なわれません。 力強く聞こえる音の理由は諸説ありますが、大音量、倍音が豊富ぐらいでは、説明がつきません。 もっと生命の危機感を覚える、爆発のような振動が、根本にあるように思えます。 音楽では生命の危機はないので、迫力という範囲でとどまっているという感じでしょうか。 そのひとつとして、リップリードの特徴となりますが、音が安定するまでに、わずかにタイムラグがあるということです。そのためアタックが若干不安定に揺らぎます。直後に減衰しないまっすぐな音が出ると、パワーで無理やり押し出したような、突き抜けるような印象を受けます。

057 000 Trumpet 音域 Bb3-Bb5

標準的な明るい音のするトランペットです。

057 001 Dark Trumpet 音域 Bb3-Bb5

こちらは落ち着いた音色のトランペットです。

058 トロンボーン

中音部を担当する金管楽器がトロンボーンです。 金管楽器の多くが近代的なバルブによって管の長さを段階的に変化させているのに対して、トロンボーンは古典的なスライドによって管の長さを伸縮させ音程を作っています。スライド構造は500年以上の歴史があります。一時期トロンボーンもバルブに置き換わった時期もありましたが、またスライドに戻ったという経緯があります。 スライドの利点は、シンプルな構造と、音程間をなめらかにつなぐことが出来る点ですが、反面正確な音程や速いフレーズを演奏するのが難しい構造ではあります。

打ち込みの際には、トロンボーンの特徴であるスライドをうまく使うことで、それらしい音に聞こえてきます。

058 000 Trombone 音域 E2-C5

明るめの標準的なバランスのトロンボーンです。

058 001 Trombone 2 音域 E2-C5

丸い音のトロンボーンです。

058 002 Brite Bone 音域 E2-C5

倍音が多く、金属的な歪の強い音がします。音声ファイルが無圧縮の状態では歪んでませんが、動画では歪んでいると思います。現代の圧縮音声ファイルを考慮する場合、気を付ける必要がある音色です。

059 000 Tuba 音域 F1-G3

金管楽器の中で最も低音部を受け持つのがチューバです。チューバはいくつか種類がありますが、バス・チューバが一般的にチューバと呼ばれ、さらに細かく音域ごとに数種類存在します。音域的にはコントラバスとほぼ同じで、アンサンブルの中のベースとして機能します。弦楽器のベースと比較すると、倍音が豊かに出るため、最低音付近では基音がややつかみにくい音になっています。管楽器は管の長さが長いほど低い音が出るわけですが、トランペットが約1.5m程度に対して、チューバは9m以上の長さになっています。

060 ミュートトランペット

写真のようにトランペットのベルにミュートというアタッチメントを取り付けた音になります。 金管楽器は音の出口がベルだけのため、このような簡易的な方法でも消音が可能になっています。 木管楽器では、このような手軽な消音方法がありません。 ミュートは本来、練習することが目的でしたが、音質がユニークなことから、積極的に演奏に使われるようになっていきます。 現在ではミュートの種類もたくさんあり、様々なテクニックと共に多様化しています。

060 000 Mt Trumpet 音域 Bb3-Bb5

標準的ミュートトランペット。

060 001 Mt Trumpet2 音域 Bb3-Bb5

より倍音が強調されたミュートトランペット。

061 ホルン

金管楽器で最も音域が広く、3オクターブ半あります。低音はチューバに迫り、高域はトロンボーンを超えてトランペットに迫るほどです。ホルンは金管楽器の中でも複雑な構造を持った楽器です。広い音域を演奏しやすくするために、2つの楽器を組み合わせたようなダブルホルンや、3つ組み合わせたトリプルホルンという具合に発展しています。またトランペットはミュートを使って音色づくりをするケースも多いですが、ホルンは手をベルに入れて、音色コントロールすることがデフォルトになっています。金管楽器は、どれも基本構造や、材料(真鍮)は同じなのですが、それぞれコンセプトを変えることで共存を可能にしているようです。

061 000 French Horns 音域 F2-F5

輪郭のはっきりした音がします。

061 001 Fr.Horn 音域 F2-F5

甘い音がするホルンで、オーケストラの中で使われる溶けるような音がします。

062 ブラスセクション

オーケストラでは、ホルン、トランペット、トロンボーン、チューバの構成。ブラスバンドなどでは、さらに他の楽器も加わり構成されます。ブラスセクションはアタックの独特な力強さと濁りが魅力です。

062 000 Brass 1 音域 C2-C7

標準的な明るいブラスセクションの音。

062 001 Brass 2 音域 C2-C7

ややダークな音。

063 シンセブラス

シンセサイザーで合成されたブラスサウンド。 初期のアナログシンセから存在する定番サウンドです。 80年代に入るとFM音源、サンプリング音源も使われるようになります。 今でもアナログシンセ風ブラスサウンドは健在で、音源の種類ごとに棲み分けができているように思います。 シンセブラスはアタックに力強さが出せ、サスティーン部分では本物ほど濁らないので、シンセならでの使いやすいサウンドといえるでしょう。

Roland Jupiter-4 Raymangold22, CC0 (Wikipediaより引用)

063 000 SynthBrass 1 音域 C2-C7

標準的なシンセブラスサウンドで、人工的な感じですが、生楽器とは違う気持ちよさがあります。

063 001 SynthBrass 3 音域 C2-C7

音域ごとに左右に振られているので、広がりを演出できます。

063 002 Oct.SynBrass 音域 C2-C7

奇数倍音が若干下がった音色です。

063 003 Jump Brass 音域 C2-C7

名称からして明らかにヴァン・ヘイレンの1984年の曲「Jump」をイメージした音です。1981年に販売されたOberheim OB-Xaをフルテンにしたサウンドです。アナログのポリフォニック・シンセサイザーで、2~8ボイスのラインナップがありました。8ボイスの機種は200万円近い価格でした。

Oberheim OBX-a Alison Cassidy, CC BY-SA 4.0 (Wikipediaより引用)

064 シンセブラス2

全体的にシンセらしさは控えめでナチュラルな傾向です。アタックも控えめで、ロングトーンにするとわかりますが、ゆらぎが強調されています。

064 000 Synth Brass 2 音域 C2-C7

アタックが柔らかく、倍音も少な目の控えめなシンセブラスです。

064 001 Synth Brass 4 音域 C2-C7

コツコツしたアタックが特徴の音です。

064 002 Velo Brass 音域 C2-C7

アタックが丸く、ややデュチューンが強調された大人しいシンセブラスです。


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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あちゃぴー

楽器メーカーで楽器開発していました。楽器は不思議な道具で、人間が生きていく上で、必要不可欠でもないのに、いつの時代も、たいへんな魅力を放っています。音楽そのものが、実用性という意味では摩訶不思議な立ち位置ですが、その音楽を奏でる楽器も、道具としては一風変わった存在なのです。そんな掴み所のない楽器について、作り手視点で、あれこれ書いていきたいと思います。
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