修理をする者にとって、簡単そうに見える修理ほど実は難しかったということはよくある話です。
今回は最近行った修理を例にあげて紹介したいと思います。
AMERICAN DJ ( アメリカンディージェイ ) / VIZI BEAM RXONE ムービングヘッド
通電しても正常に起動しなくなったという症状でお預かりしました。
動作の確認を行うために本体を設置していると、横の回転に違和感があったので通電する前に調べてみると…
パンベルトが切れていました。
(ムービングヘッドは横の回転をパン、縦の回転をチルトと呼ぶので横回転のベルトはパンベルトと名称されます。)
ムービングヘッドにおいて一番物理的に動くパーツがベルト類になります。何年も使用していると摩耗や劣化が起こり切れやすくなります。
この個体も4年以上使用されていたのでパーツの寿命がきて切れたのかと思われます。
一旦ベルトを取り除いてから通電し、手動でリセット作業を行いパン動作以外に問題がないか確認します。幸いにも他の部分に動作不良はなかったのでパンベルトのみの交換で済みそうです。
さて、ここからが本題です。
パンベルトのみの交換ならば簡単では?と思われるかもしれませんが、実はムービングヘッドにおいてパンベルトの交換が一番大変です。
なぜかというとパンベルトの位置に問題があります。大体のムービングヘッドはベースとアームの間にベルトが通っていて、この機種も例に漏れずその位置にベルトがあります。
ベース側からヘッドに電力を送る配線やデータ通信用の配線が何本も通っていて、パンベルトを交換するためには、まずその配線を全て外す必要があります。
次に、配線が外せたらベースとアームを分離させてパンベルトを通すのですが、パンベルトの径より小さくなるようにベース側の筐体部品を外す作業が必要です。ここまでやるとベース側はほぼ全ての筐体部品が分解された状態になります。
ここまでパンベルトを通せたら、モーターと支柱のギア類を外してベルトを組みます。やっとパーツの交換が完了です。配線の通り道やコネクター箇所の記録をしたり、筐体部品の位置を記録したりと、分解しながら戻すことまで考えて作業していたのでここまでに2時間近くかかりました。
パーツ交換が済んだら今度は分解の逆の手順で組上げます。組むついでに分解したパーツのクリーニングも行い、最終的な動作確認まで行うと4時間くらいはかかる作業でした。
交換するパーツはベルト1本ですが、その修理内容を紐解いていくと実は結構大変だったりします。
今回はそんな修理の裏側の紹介でした。修理した商品も末長く大事に使っていただけると幸いです。