電源の話のブログを過去2回書きました。また続きを書こうかと思います。
近年は9Vに限らないエフェクターが増えているなんてことをVol.1で軽く書きました。まだご覧になっていないかたは、併せてお目通しいただけると、今回のテーマもより深く理解いただけるかと思います。
今回はパワーサプライをいくつか見てみましょう。
VITAL AUDIO ( バイタルオーディオ ) / POWER CARRIER VA-05 MkII
VA-05は9Vアウトプットが3口、9V/12V/18Vで切り替えできるアウトプットが2口あります。
VOODOO LAB ( ブードゥーラブ ) / Pedal Power 2 Plus
Pedal Power 2 Plusは8口のうち6口は9V/12Vを切り替える事ができます。残りの2口は9Vから下げることができます。電池が減った時の感じを再現できるようになっているようです。
Ojai R30は5口のうち2口が9V/12V/18Vで切り替えできるようになっています。
といった感じで、エフェクター用パワーサプライで切り替えられる電圧は9V/12V/18Vが多いということです。
どの電圧を使用するかは各エフェクターに合わせて設定する必要があります。
例えば、
MXR ( エムエックスアール ) / M108S 10 Band Graphic EQ
M108SはDC18V仕様です。この機種はよくパワーサプライにつないだら音が出ない!LEDが光らない!変に歪む!など問い合わせがありますが、多くは9Vに接続しているのが原因です。
これに対し、最近では入力電圧を選べる機種も出てきました。
XOTIC ( エキゾティック ) / EP Booster オーバードライブ/ブースター
EP Boosterは実は9Vでも12Vでも18Vでも動作します。ほとんどの人が9Vで使用している気がしますが。
MAD PROFESSOR ( マッドプロフェッサー ) / Mighty Red Distortion
調べていたらMighty Red Distortionは公式ホームページにSupply voltage range: 7,5 to 18VDCとありました。7.5Vなんてアダプターあるのか?という感じでエフェクター用として発売されている物は思い浮かびませんが先に上げたVOODOO LAB Pedal Power 2 Plusなら7.5V出力にすることもできるかと思います。
EBS ( イービーエス ) / MultiComp BlueLabel
MultiCompの最新のバージョンは9~18Vまで対応しています。音の変化の考え方などは後述しますが、古いバージョンは9V Onlyだったので高い電圧にはつながないでください。
といったように、その電圧でないとならない機種と電圧を選べることができる機種とあります。電圧を指定されている機種はその電圧以外で使用すると正常に動作しません。
電圧が選べる機種は電圧によって音が変わるということでその仕様になっている訳ですが、一般的に電圧は低い方が歪み感は強く、高い方がパリッとしたクリーンな音になります。
と書くと、じゃあ歪みのエフェクターは電圧を下げたらハイゲインサウンドになるんだ!!高いとクリーンブースターみたいに歪まないんだ!!と思ってしまう方がいますが低い場合の歪みは濁って潰れたファズ感のある音になりオーバードライブがディストーションになるわけではありませんし、クリーンブースターに無理やり高い電圧を入れたらレベルを上げても全く歪まず音量が上がる、という訳ではありません。
昔から言われる話で「オーバードライブは電池が少なくなってきたころがいい音がする」というものがあります。上記のVOODOO LABのパワーサプライはそれを再現できるようになっているのですが、エフェクターの内部にはICやトランジスタと呼ばれる信号を増幅するパーツが入っており、電池が減り電源の電圧が下がると各パーツへ供給する電圧が下がって本来の出力をしなくなります。それにより少し潰れてコンプ感が強く濁った歪みになります。逆にその音がいい、と思う人もいるのでそのように言われてきました。
電圧が高いとハリのある音になるのでMultiCompやM108Sなど歪ませる目的ではないエフェクターの18V駆動は理に適っているなと思います。ただギターエフェクターは実際には多少の歪み感がある方が好まれたりもするので好みの問題です。
これが正解!!なんてことはないので皆さんそれぞれの気に入った使い方を探してください。
ここからやっと「絶対に覚えてほしいこと」の本題なのですが、この電圧が高いと音が変わるという話はCENTAUR(ケンタウロス)という今ではプレミアで超高額になっているオーバードライブが9Vを中で電圧を上げているから良い音がしているらしい!!なんてことが話題として広まったあたりから電気に詳しくない方々の間でも言われるようになったように思います。
ケンタウロスは実際、昇圧(電圧を上げること)ICを使用して内部で9V以上の電圧を作っており、近年色々発売されているケンタウロスを手本にしたオーバードライブも同じように内部に昇圧ICを搭載しています。
そんなこんなで「じゃあ高い電圧のアダプターをつなげば僕のオーバードライブはもっといい音になるんじゃないかぁ?!!」と考えた人たちが既定の電圧より高い電圧をつないだことで、数々のエフェクターがぶっ壊れるという事態が続出しました。
エフェクター内部のコンデンサー、IC、トランジスタなどの素子は掛けられる電圧に限度があり、超えたら壊れてしまいます。
小型のコンデンサーなどもありますが上の画像のように大きい電圧に耐えるとなるとコンデンサーの大きさもでかくなります。
エフェクターに限らず電気を使用する機器は、既定の電源を使用する場合に内部にかかる電圧を考えて設計されています。多少余裕を持って設計されている場合もありますが、製品のパーツはコストや入手しやすさ、製品の大きさなどさまざまな事情で選定されており割とギリギリな場合もあります。
ちなみにオリジナルのケンタウロスに使われている昇圧ICの既定の最大入力電圧は10Vでした。12Vなどの電圧がかかったら一発でぶっ壊れます。
ケンタウロスの内部では歪ませる回路は昇圧していない電圧を使用し、トーンの回路で昇圧した電圧を使用しており、一概に電源電圧を上げればいいというわけではないことが考えられた設計になっています。
つらつら書いてきましたが要するに「既定の電圧以上のアダプターや電源は絶対につながない!!」ということを守ってください。
これに加えて前回のセンターマイナスかプラスかもしっかりと把握して電源は選びましょう。