
前回の記事にて紹介したシンセサイザーの音源方式について、引き続き解説していきます。
FM音源方式(乗算方式)
FMとは、周波数変調(frequency modulation)の略。ラジオにも起用されるFMと同様、大元になるサイン派の波形(キャリア派)に別のサイン派の波形を用いて変調を行い、変調波と呼ばれる波形を形成する方式です。
1980年頃に開発された音源で、アナログ音源などでは作れないような音源を作成できます。特徴的な音として、エレピやシンセブラス、シンセベルなどの倍音をイメージする音が多く、80年代のポップスには欠かせない音源とも言えます。
ハード
80年代当初にヤマハより発売されたDX7を復活させたような製品で、37鍵盤というミニキーボードの見た目に反し、12タイプのアルゴリズムと2種類のエフェクトを搭載しています。
reface DX同様にDX7を元にし、専用の音源FM-Xを搭載。
ヤマハのフラグシップシンセとして多彩な操作ができ、FM音源特化ではなく、さまざまな音源と掛け合わせて使用できる、他では表現できない音色を扱う特別なシンセとなること間違いなしです。
ソフト
Native InstrumentsのKOMPLETE 14にSTANDARD以上から搭載されている音源です。
アルゴリズムなど、FM音源の主要な操作パネルはもちろんのこと、中心に記載のあるプリセット音源が960種と非常に充実しています。音源を聴いて、そこから選択し編集が可能なため、複雑で細かなFM音源の編集をスムーズに行えます。
V collection 9内に収録される音源の1つで、他のシンセ音源を含め9,000種類ものプリセットが収録されています。
こちらもDX7を元に作られたシンセサイザーです。
ソフトウェアシンセとしてさまざまなページへノブなどコントロール部が分枯れています。
また、変調波をオシロスコープで観測することで、従来複雑な内容であったFM音源の調整などを視認することができます。
欲しい音を作るための操作が最も簡単なのではないかと思います。
またプリセットを検索する「プリセットブラウザー」という機能もあり、他機種同様にプリセットから理想の音に近い音源を呼び出し、調整を行うことも可能です。
サンプル音源方式
その名のとおり、サンプラーなど収録した音を鳴らす音源方式です。
収録した音を鳴らすものとして認識されるサンプラーですが、シンセサイザーにはその中でもPCM(pulse code modulation)と呼ばれる音源方式を利用して収録されているものが多いです。
PCMとはその名のとおり矩形波を細かくし波形に添わせて収録することで、どのような波形も縦横のデジタル信号として認識させることができ、最低限のデータ容量で音源収録できる技術です。このため、他のシンセ音源が作り出す音を再現することなども可能です。このことからワークステーションシンセには搭載されている機種が多数あります。
しかし、この万能な音源にも1つ弱点があり、音源に直接的な波形変化を与えることはできません。フィルターやエフェクトなど外部的干渉を行うことは可能なので、それを利用することで最低限の再現は可能です。
ハード
MELLOTRON / M4000D Digital Mellotron
サンプリングシンセといえば私が初めに想像するキーボードはこちらです。
過去、レコーディング現場などでも、さまざまなメディア録音の技術が存在しましたが、今のように音源をデータで取り込む以前に主流であった、テープレコーディング技術を利用したキーボードです。その歴史は古く、1960年頃に開発されビートルズなど著名なアーティストも利用したと言われています。
各鍵盤に1つレコーディングできるテープを備え、鍵盤を押すことで各録音された音を再生することができます。代表的な音色としては、フルートやブラスなどの管楽器、バイオリンなどのストリングス楽器の音が使われています。現在ではデジタルとして、過去の機種の音色を収録した機種を取り扱っています。
ヒップホップやエレクトロミュージックなど、サンプリングを利用する場面では言わずと知れたサンプラーとして有名な2機種です。
その1つであるAKAIのMPCは、トラックメーカーの人たちなら一度は憧れる、あるいは1つは持っている機材かと思われます。
現行のMPC LIVE2もさまざまな機能があり、これだけでサンプリングはもちろんDAWと同レベルにループ物の曲を作れてしまう優れものです。
もう一方がROLANDのSP404。こちらは2020年まで変わることのなかったそのボディが改良され、後継機種として発売されたモデルです。エフェクターなどより操作性に優れた形となりました。
サンプリング音源の紹介としてあげさせていただきましたが、トラックメイキングの面でこの機材たちもピックアップしたいのでどこかでまたご紹介できたらと思います。
現代のデジタルシンセにはそのほとんどにPCM音源が使われていることから、どの機種を挙げても説明できるのですが、今回は個人的な好みも含めてこちらの機種をご紹介します。
2023年に新たに発表されたNORDの最新モデルstage4、NORDの stageシリーズはオルガンセクション、ピアノセクション、シンセセクションとあります。現行ではオルガンのみの機種はありませんが、それぞれのノードの機種の特徴をまとめた機材です。わかりやすく特徴的なのは、シンセセクション内にシンセだけでなく、ストリングスやブラスなどの音源が入っています。
わかりやすくPCM音源ととれるのはこの部分ですが、NORDはすべてがサイトからダウンロードできるアプリを使用して、シンセをはじめほかの音源も全て入れ替えることができます。セクション関係なくその全ての音源がPCMでできているのです。
今回紹介していないブランドも含め、ワークステーションシンセはこのような物が多くあります。ワークステーションシンセのなんでもできると紹介される点は、ここからきていると言えるでしょう。
ソフト
Native Instruments / Kontakt 7
Native InstrumentsのKontakt、こちらは単体としての販売もありますが、FM8同様KOMPLETE 14にも収録されています。
Native Instrumentsのプラグインがモンスター級であると言わしめる要因の一つがこの製品で、膨大な音源の数々には通常のサンプリング音源として使用するようなブラスなどの音から、ダンスミュージックなど現代的な音楽の要素で使用するような音源まで幅広く取り入れています。
音色によっては他では聞いたことが無いような異質な音色を奏でることもでき、唯一無二の音源ともいえます。
以上FM音源方式とサンプル音源方式のシンセサイザーでした。
次回はより複雑化された派生形のシンセサイザーのご紹介をさせていただきます!