ここまで初心者向けにシールドケーブルの作り方を書いてきました、過去の記事を読んでいない方はこちらをご覧ください。
関連記事
はんだ付け初心者にもわかりやすくシールドケーブルの作り方を解説〈準備編〉
はんだ付け初心者にもわかりやすくシールドケーブルの作り方を解説〈実践編〉
はんだ付け初心者にもわかりやすくシールドケーブルの作り方を解説〈L型編〉
はんだ付け初心者にもわかりやすくシールドケーブルの作り方を解説〈平型プラグ編〉
今回はショートプラグ編です。
エフェクターボードのスイッチャーやラックマウント機材のパッチケーブルなどに重宝します。
今回使用するプラグはこちら
SWITCHCRAFT ( スイッチクラフト ) / 380
ショートプラグの定番、SWITCHCRAFTの380です。
はんだ付けする端子部分はこうなっています。

このプラグの中身を初めて見る方はちょっと戸惑うかもしれません。
一般的なストレートプラグの端子は長い方がグランド(シールド線)になっていますが、このプラグは芯線側が大きくグランド側が小さいのです。
そして何よりケーブルを抑える機構がないのです。『これで強度は大丈夫なの?!』と思うかもしれませんが、普通に作れていればトラブルはあまり聞きません。プラグから抜くときなどにケーブルを引っ張って抜かないようにしてください。(これはどのプラグを使用していても一緒ですが)
ただ、ギターからエフェクターやアンプにつなぐ用途などの長いケーブルには向かないと思います。あくまでパッチケーブル用のプラグと考えてください。
ちなみにG&Hのショートプラグにはケーブルを抑える機構があります。
G&H ( ジーアンドエイチ ) / BF2P SHORT NNN
じゃあこっちの方がいいじゃん!!って思うかもしれませんが、この小さいサイズでこの形状だと慣れないとちょっと作りづらい感じはしました。
SWITCHCRAFTの380がこの形状なのは現場でパッチケーブルを制作する時は何本も作る必要があるので制作時の手間を考えたものだとも思われます、G&Hのショートプラグのケーブル保持の強度は上手く作れれば380より高いと思いますので気になった方は試してみてください。
今回もケーブルはMOGAMIの2524を使用します。
ショートプラグの作り方も他のプラグと基本的には同じですが、以前ケーブル製作上級者の方に教わったやり方を一部取り入れた作り方を今回はご紹介します。
今回はプラグに付属している絶縁用ストロー(↓画像)をあえて使用しません。

そして、絶縁用に収縮チューブを使用します。
住友電工ファインポリマー ( スミトモファインポリマー ) / SUMITUBE F 10Φ
収縮チューブは径が色々あり、ケーブル作成には10φあたりの物が向いています。 サウンドハウスでは販売していませんがカラフルな物もあります。今回は青色の収縮チューブを使用します。手持ちであった青色の収縮チューブは9φでしたが使えることは確認しました。

プラグの構造は下の画像のように赤がTip、青がSleeveに繋がっています。例によって要はTip側に芯線、Sleeve側にシールド線を繋げばいいだけの話です。

ケーブルの先端を1.5cmほど剝いてシールド線を束ねてケーブルと合わせていきます。導通ビニールを剝くのも忘れずに。

持ち手部分と収縮チューブをはめておくのも忘れずに。

ケーブルに予備ハンダを行いプラグに合わせてみます。

このままプラグにも予備ハンダをして、それぞれはんだ付けを行えば完成です。もちろん、それで終わりでも良いと思いますが、今回は前述のとおり少し変わったやり方をご紹介。
すずメッキ線などの裸線の単線をグランド側の端子に下の画像のように巻き付けます。エフェクターの自作などする方にはおなじみの抵抗などの切った足でも構いません。

Tip側の端子を少し曲げます。

下の画像のようにケーブルをあてがってみます。

この時点で動かないように芯線側を少しだけはんだ付けしてもよいです

裸線をぐるっと曲げてシールド線を固定します。(本来は裸線をもっと長めにしておいて端子に巻いた方が良かった)

その部分をはんだ付け

プラグを回転させ芯線側もはんだ付け。


余分な部分をはんだごとカットします。

この時点でケーブルを揺らしても配線が接触しないか確認してください。
大丈夫そうなら収縮チューブを被せます。

この収縮チューブは温めれば縮むわけですがここで必要になるのがヒートガンです。

ヒートガンは簡単に言うとドライヤーの超強力な機械です。とても熱くなるので火傷する恐れもあるので取り扱いには注意が必要です。ケーブルをこれからいっぱい作りたい方は一台持っておくとよいです。ただしドライヤーとして髪の毛を乾かすのに使用するのは絶対にやめましょう。
ヒートガンが無い方はライターで炙るのが一般的です、ただ黒い収縮チューブならよいのですがカラータイプのものは黒くなってしまいます。ドライヤーでも縮むなんて情報も聞き、試した事がありますが、この太さのチューブは全然縮みませんでした。
ヒートガンで収縮チューブを熱して縮めます。

持ち手部分を被せて。

これで完成です。

あえて収縮チューブを使ったのは、ケーブルにもチューブが被さることで多少ケーブル保持力が上げるためです。またカラーの物にするとエフェクターボードやラック機材の配線などケーブルがごちゃごちゃになる場所に使用する際に一目でどことどこが繋がっているかわかるので便利です。
アンプのSEND.RETURNなどを使用する場合などは長いケーブルにもこういった目印をつけると便利です。
収縮チューブを使うデメリットとしては断線を疑うようなトラブルがあった場合に端子部分の目視が出来なくなります。一長一短といった所ですね。
今回のようにプラグには様々な形があり製作しやすいもの、しづらいもの、色々あります。これは各メーカーの考え方なり製造コストの問題だったりと様々な要因でその形状になっています。
上級者の方のケーブル製作方法を見ているとそのプラグに合わせたやり方をその人なりに考え製作しています。今回紹介した380ショートプラグのやり方もそういった方に教わったやり方を含んでいます(実際に教わったやり方は少し違います)。
初心者の内は「○○のプラグは使いづらいからダメだ!!」と安易に考えがちですが、上級者の方は難なくそのプラグで素晴らしいケーブル制作していたりすることもあります。仕事でケーブルを大量に制作する場合などは顧客の予算の都合などもあるので様々なプラグに対応できるようになるのだと思います。
ひとまずこのブログは初心者向けに書いていますので、色々なプラグを使っていっぱいケーブルを作ってみてほしいと思います、配線のやり方も工夫して試してみてください。最初は失敗することも多いですが、そのうち、きっと納得のいくケーブルを作ることができます。