楽器や音響の世界では、ケーブルはなくてはならない存在です。
一口にケーブルといっても、単純な構造のように見えて、昨今さまざまなケーブルが販売されています。
その数多あるケーブルについて、根本的な材質をベースに少しお話したいと思います。
今回は前編として芯線材に使用される「導体」についてお話します。
まず初めに、材質のお話に入る前に、簡単にケーブルの構造を見ていきましょう。
● ケーブルの構造
ここでは音響に関わるケーブルを前提に、基本的な構造についてお話します。
主にケーブルは3つの構造体で構成されています。
■ 導体・・・芯線(内部導体)、外部導体に使用される金属線部分
■ 被覆・・・ケーブル外装、芯線外装部分
■ 絶縁体・・主に芯線(内部導体)部分を覆う絶縁材料部分
ケーブル断面を図に表すと、以下のようになります。

実際にOYAIDEのGSPOTケーブルで現物を見てみましょう。

OYAIDE ( オヤイデ ) / G-SPOT CABLE
上記のとおり、ケーブルは「金属線」とそれを覆う「絶縁材料」によって、構成されており、構造自体は難しいものではありません。
では構造が分かったところで、本題へ入りましょう。
● ケーブルの芯線(導体)材
ケーブル芯線に使用される金属の材質は、そのほとんどが実は「銅」です。
なぜ芯線(導体)に銅が使われるのでしょうか。
それには理由があります。
簡単に言えば、最も高いコストパフォーマンスを実現できるのが「銅」だからです。
では(楽器・音響ケーブルの)芯線(導体)におけるパフォーマンスとは何でしょうか。
単純に「音質が良い」・「ノイズがない」これが理想ですよね。
ただ音質に関しては、好みやシチュエーションによってさまざまなので、難しいところではあります。
前置きはこれくらいにして、ではなぜ「銅」が音質面やノイズ性能で優れているかを考えていきましょう。
ここで考えるのは、金属の「導電率」です。
導電率は電流の流れやすさを示す指標です。
つまり導電率が高い金属程、よりスムーズな信号伝送が可能であり、 ノイズの影響を受けにくく、より解像度が高い音質になります。
実際に主要な金属材質と導電率を比較してみると、

上記のように銅を100%基準で考えた場合、「銅」よりも導電率が優れているのが「銀」。
「金」も導電率は他金属よりも高い方ですが、「銅」には劣ります。
「銀」「金」に関しては、希少価値が高く、宝飾品などにも用いられるため、高価です。ですが、一部の高級ケーブルでは、銀を使用したケーブルもあります。
また楽器・音響の話からはズレますが、送電線などの長距離を繋ぐようなケーブルの場合、「銅」よりも重量が軽い「アルミニウム」が使用されるケースはあります。
ここまでで、「銅」が導体に使用されるのに適した金属であることは分かりました。
ただ「銅」といっても、さらにまだその先があります。
より不純物の少ない方が、さらに導電率を高めることができます。
電気精錬など、技術の進歩により、「銅」の中でもさらに優れた「無酸素銅」通称「OFC(Oxygen-Free-Copper)」というものが製造できるようになりました。
「無酸素銅(OFC)」は、いまやケーブル業界ではスタンダードな存在になってきました。
JIS規格に基づき「純度99.96%以上」の高純度の銅が、「無酸素銅(OFC)」と呼ばれるものになります。
※純度が低いものは、タフピッチ銅(TPC)と呼ばれ、OFCはTPCよりも高価です。
少し余談になりますが、OFCの中にも、さらに高度な技術で生成されるものがあり、種類が増えています。
OFCの加工方法において、信号伝送の障害となる部分を排除した「Hi-OFC」や、超高純度を追求したものが存在します。
OFCの純度は「99.96%以上」とお話しましたが、この「9」の数字が何個あるかを示す「N」の表示がついているものがあり、超高純度の無酸素銅のものは「6N-OFC」のようにNが表示されます。
具体的に、6N-OFCだと「99.9999%」の純度を示し、現在は8Nまで実用化されています。
まとめますと、以下のようになります。

世の中に出回っているケーブルの導体のほとんどは前述のとおり、TPCやOFCであり、さらに高級なケーブルでは、Ag(銀)やOFCの中でも高純度・高度加工がされたものが採用されています。
今回弊社取り扱いケーブルでいくつかピックアップしてみました。
OYAIDE社は独自技術による高度加工導体が特徴です。
■ OFC導体
↓楽器用
CANARE ( カナレ ) / GS6
MOGAMI ( モガミ ) / 2524 ギターシールド
↓スピーカー用
audio technica ( オーディオテクニカ ) / AT-ES1100E
■ 高度加工OFC導体
↓楽器用
OYAIDE ( オヤイデ ) / QAC-222
↓マイク、スピーカー用
OYAIDE ( オヤイデ ) / PA-02 V2
↓スピーカー用
OYAIDE ( オヤイデ ) / ACROSS 3000
今回はケーブルの材質(導体編)をテーマにお話を進めました。
簡単な内容で言葉足らずがあるかもしれませんが、ご容赦ください。
これからのケーブル選びの一助となれば幸いです。
次回は被覆に関して、お話していく予定です。