普段アコースティックピアノをエフェクティブに加工して即興演奏やアンビエントを行っているため、そのスタイルでの使用に焦点を当てながらレビューさせて頂きます。
アコースティックピアノという楽器は基本的にはそれそのものの音をそのまま使用することが多いので、ギターやシンセのように音をある程度自由に変質させても成立する楽器ではないと考えています。そのため敢えてアコースティックピアノをプロセッシングする場合、普段からエフェクターを選ぶ際にはピアノとの相性をよく検討しています。歪み系のエフェクターでは和音を弾く際に音が潰れてしまうので難しいことが多いのですが、今回は敢えて飛び道具的な使い方を試してみました。

右側のセクションでモジュレーション具合を決め、さらにそれを左側のLFOを使用して周期的に変化させることができるようになっています。また中央のツマミではドライブも付加することができます。
■ WARM AUDIO RingerBringer Piano Test by ryo sugimoto
WET100%でちょっとしたリフフレーズに掛けてみました。ピアノ本来のピッチ感がほぼ失われて、金属的で効果音的な側面が強い音色になっています。
■ WARM AUDIO RingerBringer Piano Abstract by ryo sugimoto
こちらもWET100%の設定で、即興で抽象的な演奏をしてみました。このように、元々ピアノの持つクリアなピッチ感を敢えてぼかす方向の音色にし、かつプレイ内容自体もアブストラクトなものにしてしまうと、危なげなムードを演出できます。
■ WARM AUDIO RingerBringer Piano Blues by ryo sugimoto
こちらはWETの値を下げて原音とブレンドした上でブルースを弾いています。このように先ほどまでの動画よりコード感のある演奏の場合でも、金属的な倍音成分を付加してプレイにアクセントをプラスすることができます。歪みも効かせることで敢えてピアノを上品ではない方に転がしています。 演奏中は勿論ピアノ本体から出ている原音も一緒に強く聞こえてしまうのでモニタリングのバランス調整は注意する必要がありますが、エフェクト音を聴きながら演奏するとインスピレーションにも繋がって楽しいです。
■ WARM AUDIO RingerBringer Wulitzer by ryo sugimoto
YAMAHAのYC73のウーリッツァー系音色にも使用してみました。16分系の細かいコンピングに歪み要因プラス音色のアクセントとして加えています。
■ WARM AUDIO RingerBringer MOOG Subsequent37 Arpeggiator by ryo sugimoto
最後にMOOG Subsequent37でアルペジエーターフレーズに掛けてツマミを色々いじってみました。やはりアナログシンセとの相性はよく、ツマミをいじるだけでも様々な音が出て楽しいです。
欲を言えばLFOの波形にバリエーション、特にランダムがあるとよりエラー感のあるグリッチーなプレイができそうだなと感じました。
今回は敢えてあまり人がしなさそうなアコースティックピアノなどに使用してみましたが、シンセ類ではアナログシンセは勿論、デジタル系のシンセに太さや味を追加する用途でも活躍してくれそうなエフェクターです。
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