シンセサイザー鍵盤狂漂流記 続・突然のサルサ!
前回は私がニュース番組で取材したミュージシャンをご紹介しました。今回もその予定ではありましたが、前回のサルサネタを受け、続・サルサでお送りしようと思います。
前回は日本のサルサバンド、オルケスタ・デ・ラ・ルスの鈴木義郎さんを取り上げましたが、今回は日本のサルサバンドの超老舗、「オルケスタ・デル・ソル」を取り上げます。デ・ラ・ルスも素晴らしいバンドですが、更に強力なのがオルケスタ・デル・ソルです。
オルケスタ・デル・ソルは1978年結成の日本で初めてのサルサバンドです。パーカッションのペッカー、木村キムチ、ピアニストの森村献、ベーシストの高橋ゲタ夫を中心にした強力なラテン系バンドです。1981年に「レインボー・ラブ」でレコード・デビューしています。当時、日本でサルサの認知度は低く、サルサと云われても、どのような音楽なのかを答えられる人は多くありませんでした。
オルケスタ・デル・ソルは日本のサルサミュージックの扉を開け、けん引した偉大なバンドでした。
サルサとは…
サルサはキューバ音楽であるソンやルンバ、マンボなどから派生した音楽だといわれています。1960年代にニューヨークに住むプエルトリコ人やキューバ人等により、ロック、ジャズ、ソウルなど、様々な音楽と混じり合い、洗練されていきました。サルサ固有のモントゥーノと云われるリフに乗ったボーカルは、この音楽特有のグルーブ感を生み出します。
オルケスタ・デル・ソルのフレンチホルン奏者、タマサユキさん
私が勤務する放送局のアナウンサーの先輩がタマサユキさんです。本名はフルタマサユキで頭のフルを省略したニックネームが「タマサユキ」になったのでしょう(詳細は聞いていません)。絶妙な名付けだと思います(笑)。古田さんは音大出身者です。
静岡で開かれた室内楽の演奏会に同僚のアナウンサーと訪れました。古田さんは由緒正しい正装をして、フレンチホルンでクラッシックを演奏されていました。
サルサは管楽器が鮮やかな音楽です。デル・ソルもトランペット、トロンボーン、フレンチホルン等、多人数のホーン奏者らで成り立っています。その1人がフレンチホルン奏者、古田さんです。ジャズなどのバンドにフレンチホルンは見かけませんが、オルケスタ・デル・ソルを聞くとフレンチホルンが効果的な仕事をしているのが分かります。
古田さんとは演奏会の後、静岡の街に繰り出しました。古田さんは寡黙な一面があるものの、とても楽しい方でした。英語と日本語が混じった会話で冗談を言い合いながらの酒席となりました。お店の人への対応も同じ調子だったので店員さんは我々を外国人だと思ったかもしれません。
オルケスタ・デル・ソルのピアノ奏者 森村献!
デル・ソルには素晴らしい、ピアノ奏者、森村献さんがいます。森村さんは偉大なるラテンピアニスト松岡直也さん亡き後の日本を代表するラテンピアノ奏者です。デル・ソルのアルバム全編でその腕前を聴く事ができます。
キーボード・マガジンに連載されていた森村さんのピアノ講座を読んで、私もサルサピアノを練習しました。森村さんのコラムで松岡(直也)さんの指は私よりも大きくないに、あの様な演奏ができるのが私の励みになっています…と書かれていたのが印象的でした。
■ 推薦アルバム:オルケスタ・デル・ソル / レインボー・ラブ(1981年)

オルケスタ・デル・ソルの記念すべきファースト・アルバム。 このアルバムリリースにより、日本のサルサミュージックがスタートしたといっても過言ではありません。その後、サルサの勢いはとどまるところを知らず、メジャーな音楽になりました。先陣を切った勢いが丸ごとパッケージされたようなアルバムです。
推薦曲:『レインボー・ラブ』
日本を代表するパーカッション奏者ペッカーがボーカルをとる。サビ部分、モントゥーノなピアノリフの中、♪~レイボーラブ ♬~心の旅路 ♪~レイボーラブ ♬~
輝く未来…とコール&レスポンスのサビが響き、日本サルサの未来を予測していたかのように思える。
■ 推薦アルバム:オルケスタ・デル・ソル / 原宿ライブ(1982年)

原宿ライブ レコード盤

原宿ライブ CD盤
オルケスタ・デル・ソル幻の名作ライブ盤。発売当時は勿論、アナログ盤です。2000円程と比較的安価で購入した記憶があります。ノリノリの超名盤で原宿ライブハウス「クロコダイル」での熱狂と熱演がパッケージされています。今でも私の大愛聴盤です。バンドのグルーブ感は半端ではありません。そういう意味ではデル・ソルのようなバンドはライブ盤で聴くのが一番で、あの熱はライブ盤だからこそ伝わるものではないかと思います。
私がクロコダイルを訪れた際もデル・ソルは同様な演奏を繰り広げ、押し寄せるサルサリズムの素晴らしさに胸が熱くなりました。特に木村キムチさんが演奏するギロは壮絶で、このバンドのキーになってると思いました。木村さんからは演奏の休憩時間にギロの演奏方法を教えてもらいました。最初、ギロはこする楽器だと思っていましたが、ギロはこするのではなく、「叩く」楽器たったのです。叩いてこすることでグルーブが生まれることを教えてもらいました。
デル・ソルのメインボーカリストはタイロン橋本さんですが、タイロンさんの他にも、木村キムチさん、ペッカーさんなど大勢のボーカリストがいて、重なるボーカルや森村献ちゃんのCPエレクトリックグランドによるモントゥーノ、高橋ゲタ夫のベース、多くのパーカッションが作り出すリズムが混然一体となって、あの凄まじいグルーブが生まれる事を知りました。とにかく、このライブは本当に最高です!!是非、お聴きになることをお勧めします。
この「原宿ライブ」1990年にボーナス・トラックを加えCD化されました。ボーナストラックの5曲は私が以前、古田さんから頂いたカセットテープと同じ内容で、南アルプスのスタジオで録音されたトラックが入っていました。
推薦曲:『ティンバレロ』
パーカッションのティンバレス奏者を歌った楽曲。印象的なサビが美しい。
推薦曲:『カンタンド・ビビレ』
森村献ちゃんのピアノによるモントゥーノが強力!多数によるサビパートのボーカル、美しいサルサ的メロディ、ブラスアンサンブル、パーカッション等々…が混然一体となり押し寄せ、形成されるグルーブは、このバンドでしか体現できないものではないかと思う。必聴!!
■今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用機材
- アーティスト:オルケスタ・デル・ソル、タマサユキ、森村献、木村キムチ、高橋ゲタ夫など
- アルバム:「レインボー・ラブ」「原宿ライブ」
- 曲名:「レインボー・ラブ」「ティンバレロ」「カンタンド・ビビレ」
- 使用機材:フレンチホルン、ギロ、アコースティック・ピアノ、ヤマハCP-70 エレクトリックグランドピアノなど
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