2021年シンセサイザー購入備忘録
新型コロナ感染症は世界中を覆いつくし、オミクロン株の猛威が懸念されています。
コロナ禍でバンド活動が制限され、辛い日々を送っているバンドマンの皆さん、お疲れ様です。私もその1人です。
バンドをやるということは即ち、スタジオでの練習が必要になります。スタジオは密閉空間であり、空気の流れは阻害され、換気も悪くなります。もし、コロナウイルスに感染したメンバーがいれば仲間も感染リスクに晒されます。状況としてはカラオケと同等です。特にオミクロン株の場合は感染力が強い為、注意が必要です。サーキュレーターや扇風機、換気扇などで空気の入れ替えをすることで感染リスクは軽減されます。
2020年から始まった新型コロナ感染は今年で3年目です。この間に弊社のコロナ規則もあり、バンド活動ができない私はモヤモヤの蓄積でシンセサイザーを5台購入してしまいました。
どれも優れモノでした。その中でも素晴らしかったのはシーケンシャル社がリリースしたTAKE5です。今回の鍵盤狂漂流記は私が購入したシンセサイザー、TAKE5のリポートをお送りします。その前に…
■ シンセサイザークロニクル
私は18歳から鍵盤楽器を始めて以来、多くのシンセサイザー、オルガン、エレクトリックピアノ等を購入してきました。学生時代から始めたバンドは今も継続しています。
シンセサイザーは技術の発展とシンクロしている為、30年前に1千万円以上していたものが、今では10万円台で手に入るなんていうこともあります。
その昔、一千万円以上したフェアライトCMIは当時8ビット仕様。今では8ビットでサンプリングされた音源は存在しない筈で、隔世の感があります。
世界で大ヒットしたイエスの「ロンリーハート」のオケヒット音がフェアライトの音です。シンセサイザーという切り口で音楽を見ると、その時代が見えてきます。
■ 単音しかでないモノフォニックシンセサイザー
モノフォニックシンセサイザーの元祖はなんといってもミニモーグ、アープオデッセイです。70年代当時、ミニモーグは63万円、アープオデッセイは55万円?とアマチュアに手が届く楽器ではありませんでした。この2台はシンセサイザーの王道であり、今でも世界中のプロが使い続けています。
しかし、大きな問題がありました。当時のシンセサイザーは単音しか出なかったのです(オデッセイは2音)。キーボードプレイヤーは和音が出せるポリフォニック・シンセサイザーを求めていました。

ミニモーグシンセサイザー
■ 一世を風靡したシンセサイザーの代表シーケンシャル・サーキット プロフェット5!
1978年にエポックが起きます。シーケンシャル・サーキット社が5音の和音が出せる ポリフォニック・シンセサイザー、プロフィット5を発売。世界中のミュージシャンがプロフェット5を使い、音楽を作りました。当時、日本での価格は170万円!と高価で、アマチュアには手が出ない価格でした。
現在、プロフェット5は499,800円と価格は下がりましたが、アマチュアには依然、敷居の高い機材であることは間違いありません。

シーケンシャルサーキット プロフィット5
■ 2021年、シーケンシャルからTAKE5発売!
1978年から40年以上の時を経て、シンセサイザーマニアにとって画期的な事が起きました。シーケンシャルからTAKE5という5音ポリフォニックのシンセサイザーが発売されたのです。TAKE5は2021年の11月に発売。その価格は236,600円。プロフェット5の半額以下でシーケンシャルのポリシンセが手に入るのならと、私は数日後にサウンドハウスさんに予約を入れ、納期を待ちました。
Sequential(Dave Smith Instruments) ( シーケンシャル ) / Take 5
2022年だった納期を待たずしてTAKE5が届きました。久しぶりのアナログシンセサイ
ザーです。私は腰が悪い為に10キロ以上の機材を持つと翌日、辛い腰痛になるので重いシンセサイザーは購入できません。その点、TAKE5は7.7キロと軽量です。
安価なシンセサイザーは電源ケーブルがACアダプターですが、このシンセは通常の電源ケーブルです。ACアダプターはコンセント部分が大きく、ケーブルが細く、機材設置の際には足元がゴロゴロとしているので私はACアダプターが好きではありませんでした。安価なシンセは電源部分を外に出すことでコストを下げるというメリットがある為、仕方がありませんが、TAKE5はそれがないのでセッティングも演奏も快適にできます。
■ TAKE5の音
肝心な音の話です。私がこれまで所有していたアナログシンセサイザーはローランドSH-5、コルグPOLY-6、ローランドJUPITER-6、オーバーハイムXPANDERです。価格の差はあるものの圧倒的に音が良かったのはオーバーハイムのXPANDERでした。 私のアナログシンセの1つの理想は「野太い音」これに付きます。ポリ6やジュピター6もいい音ではありましたが音はやや細く、私の好みとは少し違っていました(この細めの音が好きな方も大勢います)。しかし、私がアナログシンセに求める1番の要素は太い音であり、存在感のある音。ギターの爆音にも埋もれない音でした。TAKE5の音はオーバーハイムの音とは違いましたが、存在感があり、音に芯のある粘っこく、ソリッドで素晴らしい音でした(音の表現を日本語にするのは難しいです)。

オーバーハイムXpander(6音ポリ)
コロナ感染者が減少傾向にあった12月のクリスマス前にバンドメンバーと音を出しました。TAKE5の音は大きなギターの音にも埋もれることはありませんでした。サイン波でフィルターのカットオフを抑えめにしたフルート的な柔らかな音でもオケの中でしっかり聴こえました。 デジタルシンセサイザーでこの手の音はオケの中に埋もれてしまい、聞こえない事が多く、このシンセの利点であると思いました。多分、オシレーター(発信機)のクオリティの高さが要因ではないかと思います。
オーバーハイムもそうでしたが、TAKE5は私が使った鍵盤楽器の中で最もパワーもある楽器でした。通常、鍵盤楽器はボリューム7か8(10段階)で使いますがTAKE5は2か3で使用できるパワーをもっていたのが驚きでした。
もう1つ嬉しかったのは 音にある種の品位があることでした。アナログシンセで大切なのはこの辺りなのだと思いますが、プロミュージシャンがシーケンシャルのシンセを選択する意味がTAKE5を使ってみて分かった気がしました。 まだまだ、使いこなすまでは程遠い状況ですが、更にこのシンセの奥が見えたところでリポートを出したいと考えています。
追記:シーケンシャルTAKE5はミュージックラダーというウェブサイトで2021年のベストハードウェアシンセサイザーにも選出されています。
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