シンセサイザー鍵盤狂漂流記 突然のサルサ!
これまでのハモンドオルガン特集が終了し、新たな展開として私がニュース番組で取材をさせてもらったミュージシャンや知合いのミュージシャンとその名盤を紹介させていただきます。
鍵盤ネタとは少しズレますが、ブログを読んでいただいた皆さんに素敵なミュージシャン達の横顔を感じてもらえればと考えています。
突然ですが、私はサルサやラテンミュージックが大好きです。ウイリー・コローンやアルトゥーロ・サンドバル、レイ・バレットなど等…。サルサ独特のクラーベなリズム アンサンブルが聴こえてくるだけでテンションが上がります。
サルサの要素はこれまでにも様々な楽曲に取り入れられてきました。
サルサをアレンジに取り入れた好例としては2018年にリリースされ、ニュース番組のタイトル曲にもなった椎名林檎の「獣ゆく細道」はサルサタッチで素晴らしかったですね。大サビの後に名プロデューサー、笹路正徳のピアノソロ後のサビ部分にサルサなピアノ一発で宮本浩次のボーカルが乗るところなど、たまりません。レコーディングメンバーもベースは高水健司、ドラム、山木秀夫で村田陽一、本田雅人などホーンセクション。日本のファーストコール達による見事なバンドアンサンブルが展開されています。アレンジャー、笹路正徳天晴です!少し、話が逸れました。私が取材した話に戻ります。
国連平和賞をとった日本のサルサバンド、オルケスタ・デ・ラ・ルス!
1993年、新聞を読んでいた私は、ある記事に目に留まりました。「オルケスタ・デ・ラ・ルス 国連平和賞受賞!」国連平和賞がどのような賞なのかは分かりませんが、原稿を読み進めるとオルケスタ・デ・ラ・ルスのメンバーに静岡県豊岡村出身のパーカッショニストがいることが分かりました。パーカッショニストの名は鈴木義郎。私はデ・ラ・ルスの事務所経由で鈴木さんに連絡を取り、取材許可を取りました。
国連平和賞とは
国連平和賞は第3代国連事務総長により創設され、国連が発行するメダル顕彰の1つで、優れた文化活動家や政治家、ミュージシャンなどに贈られる賞です。日本では岸信介や高田健三、寺内タケシなど17名が受賞しています。 オルケスタ・デ・ラ・ルスは日本語で「光の楽団」。しかし、この「光の楽団」が世界的な賞を獲っただけでは全国ネタのニュースにはなりますが、静岡内ニュースにはなりません。ローカル局で取上げるためには、デ・ラ・ルスに静岡県出身者が加入している事が重要になります。ニュースデスクを説得して私は取材に入りました。
オルケスタ・デ・ラ・ルスのコンサート取材が浜松で…
オルケスタ・デ・ラ・ルスのライブスケジュールを確認すると浜松市でコンサートをすることが分かりました。浜松は音楽の街と云われていますが、1993年当時のコンサートホール決して褒められたものではありませんでした。
1994年、駅前にあるアクトシティの中に立派なパイプオルガンを備えたアクトホールができます。このホールは浜松国際ピアノコンクールが行われるほどの立派なホールですが、93年当時はまだできていませんでした。
私はこのアクトホールで山下達郎やダリル・ホール、渡辺香津美、山下洋輔などのライブを観ていますが、本当に素晴らしいホールで響きも秀逸です。デ・ラ・ルスのコンサートもアクトホールで観ることができたらと今でも思っています。
デ・ラ・ルスのコンサートは年季の入った、「はまホール」という会場。 鈴木義郎さんはティンバレスというパーカッションを担当しています。

ティンバレス
鈴木さんはとても気さくな方でインタビューにも快く応じてもらいました。私は打楽器の事はよく分かりませんが、ニューヨークやキューバツアーの話などを伺いました。 ライブでのプレーぶりは華やかで元気がよく、デ・ラ・ルスにグルーブ感を作り出していました。会場は観客総立ち。クラーベのリズムがうねる中、バンドと観客が一体化した様子を映像に収めました。デスクらからは楽しい企画だったと好評でした。
コンサート終了後にはバンドメンバーに同行させてもらい、鈴木さんの豊岡村の実家でお母様が作った「とろろ飯」をたらふくご馳走になりました。お母様にもインタビュー取材にご協力頂きました。
僕の家のバスルームには鈴木さんから頂いたデ・ラ・ルスのキューバツアーのステッカーが今でも貼ってあります。
私の心残りはピアニストである塩谷哲さんにお話しを伺っておけばよかったと後悔しています。カルロス菅野、ノラさんにもインタビューをしたかったのですが、残念ながら時間が取れず、断念しました。
カルロス菅野さんのインタビューが実現するのは、それから15年後。カルロスさんがソロアルバムをリリースした時でした。
その後の鈴木義郎さん
数年前、NHKのSONGSという番組で井上陽水の特集が放送されました。井上陽水が自 身の曲をラテンタッチでカバーしていました。その時のバックバンドがオルケスタ・ デ・ラ・ルス。鈴木さんの姿がないかと、モニターに目を凝らすと一番隅で元気にティンバレスを叩いていました。「元気でやっているな~」と私は嬉しさと懐かしい気持ちで一杯になりました。
■ 推薦アルバム:オルケスタ・デ・ラ・ルス『デ・ラ・ルス』(1990年)

90年に日米で同時発売されたオルケスタ・デ・ラ・ルスの歴史的デビュー・アルバム。このアルバムはアメリカビルボード誌のラテン・チャートで11週連続の1位を獲得。ニューヨークのミュージックシーンで高い評価を得ます。また、翌年にはニューヨーク批評家協会賞のベスト・アルバム・オブ・ジ・イアーも獲得。日本レコード大賞特別賞も受賞するという記念碑的なアルバムです。 アルバム的にも、まとまりのある好盤で曲も分かり易くポップな曲が揃っています。洋盤のサルサアルバムを購入すると、いい曲は数曲で後は捨て曲も多い盤が散見しますが、このアルバムは粒揃いの曲が並んでおり、ビルボード・ラテン・チャートで好結果を残したのは推して知るべしだと思います。
推薦曲:「サルサ・カリエンテ・デル・ハポン」
オルケスタ・デ・ラ・ルスの最もデ・ラ・ルスらしい名曲。クラーベのグルーブ感一杯のこの曲を聴くと腰が浮いてきます。塩谷哲のピアノ、稀代のパーカッショニスト大儀見元らの叩き出す強力なリズムが複数のボーカルと一体となり、バンドの未来を照らし出しているように感じます。
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、 推薦曲、使用鍵盤
- アーティスト:オルケスタ・デ・ラ・ルス、鈴木義郎
- アルバム:「デ・ラ・ルス」
- 曲名:「サルサ・カリエンテ・デル・ハポン」
- 使用機材:ティンバレス、アコースティック・ピアノ等
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