ハモンドオルガンの名プレイヤーと数々の名盤特集 Jジャズ編
今回の鍵盤狂漂流記はハモンドオルガンのJジャズの名盤と、これまでに紹介していない日本人で私がライブで聴いたハモンドオルガンプレイヤーをご紹介します。
日本を代表するオルガン奏者、酒井潮さん
私はシンセサイザーという楽器も好きですが、ハモンドオルガンには強い思い入れがあります。それは大学生時代に最初に演奏した楽器がオルガンだったからかもしれません。ハモンドの上にローランドのモノシンセSH-5を乗せ、左側にフェンダーローズ、その上にコルグのポリフォニックアンサンブルオーケストラ(ストリングス)というのが私のメインセットでした(ローズは同僚の所有機)。
お金がなかったのでレスリースピーカーは買えません。プロになった友人からヤマハのロータリースピーカーを安価で買い、ハモンドにつなげていました。
テレビの仕事ではハモンドオルガンを製作していた浜松の鈴木楽器がMIDIを利用して鍵盤の無いハモンドオルガンを作ると聞き、取材をしました。その時の取材対象は日本を代表するオルガニストの酒井潮さんでした。静岡から東京阿佐ヶ谷まで取材に出かけ、酒井さんを取材させてもらいました。
ハモンドの音がどういうものかを視聴者に理解してもらう為、酒井さんにハモンドを演奏して頂きました。ジャズを絵にかいたような酒井さんが弾いてくださったのはセロニアス・モンクの「ラウンド・ミッドナイト」でした。私は目の前でプロが演奏するハモンドオルガンを初めて見ました。重厚なハモンドサウンドが心の奥に今も響いています。
■ 推薦アルバム:Various Artists / BLUE NOTE VOYAGE(2019年)

ハモンドサウンドが際立つブルーノート名盤!
私見ではありますが、ジャズのアルバムは楽曲全てがハイレベルでいいというのは余り見られないのが正直なところです。しかし、このアルバムは違います。いい楽曲、いい演奏がパッケージされています。
ブルーノート80周年を祝し、制作された日本発のトリビュート・アルバムです。
若手のトップジャズミュージシャンが往年のブルーノートの名曲を演奏しています。
この中に宮川純(敬称略)というキーボーディストがハモンドオルガンを弾いている曲があります。彼が演奏するハモンドは若手ジャズマンの新しい切り口を感じます。
推薦曲:『フィール・ライク・メイキン・ラブ』
ユージン・B・マクダニエルの名曲。1974年にロバータ・フラックが歌い、全米チャート1位に輝きました。75年にはマリーナ・ショウが歌い、大ブレイクしました。また、ボブ・ジェームスの演奏でも知られています。私のバンドでも演っています。
アマチュアのセッション等でもよく取り上げられる名曲が若手ジャズマンの手によりに再現されています。
メロディを取るのは宮川純の弾くハモンドオルガン。ハモンドの良い音がしています。このアルバムでは「チュニジアの夜」も宮川が演奏していますが、「フィール・ライク同様、そのプレイは白眉です。 私は静岡のジャズクラブで宮川氏の演奏を聴きました。とても素敵でした。というよりも若手ミュージシャンのジャズへの想いが音に出ている感じがして好感を持ちました。 オルガンジャズは「黒い」という先入観がありますが、彼の演奏は私が聴いた中ではとてもスマートでとても「白い」演奏でした。上鍵盤で右手でメロディを弾きながら、下鍵盤に絶妙なタイミングでコードバッキングを入れているのが印象に残っていて、そのバッキングがある種のグルーブを生み出していました。
■ 推薦アルバム:大野雄二『THE BEST COMPILATION of LUPIN THE THIRD「LUPIN!LUPIN!!LUPIN!!!」』(2007年)

ルパン30周年を記念したお腹一杯のルパン三世テーマのみのを大集合させた2枚組アルバム。これまで様々なシーンでアレンジされてきたルパン三世のテーマが一堂に会するとある種、圧巻の一言!1つの曲を22曲の異なったアレンジ聴かせるというとんでもない企画ものである一方、大野雄二という音楽家の懐の深さを知ることができます。>新たに録音された2曲に加え、ボーカルバージョンが5曲収録されています。 同じ曲でアレンジを変えて22曲も聴いていると飽きてしまいますが、そこは大野雄二さん!不思議と飽きずに聴かせてしまうのが職人技。抽斗の豊富さを窺い知ることができます。
推薦曲:『THEME FROM LUPIN Ⅲ (’99Version)』
ハモンドオルガンによるシンプルなアンサンブルで始まるアレンジ。ハモンドの楽曲としてオルガンのいい部分が強調されたアレンジになっている。音としては典型的なハモンドサウンドを聴く事ができる。サックスソロ~バイブソロ~オルガンソロ~と抑制されたソロパートが印象的。バイブソロの時にハモンドオルガンのハイトーンとレスリーをファストにしたバッキングが美しい。
■ 推薦アルバム:JOE HENDERSON meets KANKAWA 『ジャズタイムⅡ・ブルー・ボッサライブ1987』(2005年)

このアルバムの収録曲はたったの4曲!オルガニストKANKAWA(敬称略)がジョー・ヘンダーソンを招いておこなったツアーからのライブ。ジョー・ヘンの代表曲をオルガニストKANKAWAが料理をしている。「朝日の様にさわやかに」「リコーダ・ミー」「星影のステラ」「ブルー・ボッサ」とスタンダードの名曲が揃う。印象に残るのは1963年に発表されたジョー・ヘンのヒットアルバム、『ページワン』に入っている「ブルー・ボッサ」と「リコーダ・ミー」がこのライブでも演奏されていることです。ブルー・ボッサはトランペットプレイヤーであるケニー・ドーハムがジョー・ヘンにプレゼントしたことで知られています。
推薦曲:『ブルー・ボッサ』
私のバンドでも「ブルー・ボッサ」は演奏曲に入っていて、毎回、1番最初に演奏しています。ジャズを演る人達は皆さん、この「ブルー・ボッサ」が大好きです。私も例外ではありません。サビからのコード進行が絶妙で哀愁を帯びた美しいメロディーにこの曲の普遍性を感じます。
KANKAWAはこの曲で素晴らしいオルガンプレイを披露しています。1曲が20分以上もある大作で寒川のウネウネとしたジミー・スミス直伝の黒いソロが展開されています。
私が静岡のジャズクラブでKANKAWAを聴いた時には彼はハモンドオルガンではなく、ノードの2段鍵盤タイプのオルガンとレスリーを使用していました。ノードのオルガンはドローバータイプではなく、ドローバーをボタンで上げ下げするタイプで器用にボタンを操作し、音を変えていたのが印象に残っています。
演奏はかなりファンキーだったと記憶しています。それなりにお歳(失礼1)なのにステージではノリノリ。顔の上で左手の人差し指を上にあげるポーズもキマッテいました。チョイワルなおじ様的風貌で本当にカッコ良かったです!
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、 推薦曲、使用鍵盤
- アーティスト: 酒井潮、KANKAWA、宮川純、大野雄二等
- アルバム:「BLUE NOTE VOYAGE」「THE BEST COMPILATION of LUPIN THE THIRD」 「ジャズタイムⅡ・ブルー・ボッサライブ1987」
- 曲名:「フィール・ライク・メイキン・ラブ」「THEME FROM LUPIN Ⅲ (’99Version)」「ブルー・ボッサ」
- 使用機材:ハモンドB-3オルガン
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