ベース用歪みペダルの定番といえば、SansampのBass DriverやMXRのBass D.I.+、そして近年ではDarkglassのB7Kなどが挙げられます。
TECH21 ( テック21 ) / Sansamp サンズアンプ/Bass Driver DI V2 定番プリアンプ
MXR ( エムエックスアール ) / M80 Bass D.I. + 定番ベースプリアンプ
Darkglass Electronics ( ダークグラス ) / Microtubes B7K Ultra V2 With Aux IN ベース用プリアンプ
ところで、ギター用の歪みペダルをベースで使ったことはありますでしょうか?
実は、昔からギター用歪みペダルをベースに使用する例は多く、有名なところではBlurの「Song 2」でベースにRATを使ったり、T.M.スティーヴンスがMetal Zoneをベースに使用していたりします。
しかし、ギター用歪みペダルをベースで使う際には、いくつか注意すべき問題があります。

ギター用ペダルをベースで使う際の問題点
ギター用ペダルの多くは、ギター向けの周波数特性に調整されており、エフェクトをONにするとローカットがかかるものがあります。このローカットによって、ベースに必要な低域が削られてしまい、バンド内での存在感が薄れてしまう原因になります。
実際にギター用オーバードライブをベースに繋いだ時どれだけ低音域が減衰するか見てみましょう。

エフェクトOff

エフェクトOn
これを見ると50hz以下が顕著に減衰しているのがわかると思います。
また、ベース用歪みペダルにはエフェクト音と原音(クリーン)をブレンドできるノブが搭載されていることが一般的ですが、ギター用ペダルにはその機能がないものがほとんどです。
ベースでは、歪ませすぎると低音がぼやけたり、芯がなくなったり、アタック感が失われたりするため、原音を混ぜて補うことが大切です。ギター用ペダルをそのまま使うと、単体ではかっこいい音でも、バンド内ではギターと被ってしまい、ベースとしての役割が弱くなることがあります。
それでは、ギター用歪みペダルをベースで効果的に使うにはどうすれば良いのでしょうか?
ここでは筆者が実践している方法をご紹介します。
ギター用ペダルをベースで使うための工夫
1. 信号を2系統に分ける
まず、ベースの信号を「クリーン」と「ドライブ」の2系統に分けます。
筆者は普段GT-1000を使用しており、内部でルーティングを組んで分岐しています。最近のマルチエフェクターなら、多くが同様の機能を持っており、他メーカーの製品でも再現可能です。
アナログペダルで組む場合は、フィルター機能付きのブレンダーを使うのが効果的です。
例:Umbrella Company ( アンブレラカンパニー ) / Fusion Blender
2. クリーンの音作りをする
クリーンチャンネルでは、通常のベースの音作りと同じ感覚で構いません。ただし、トレブリーなサウンドは避けた方が良いでしょう。ドライブ側で高音域を補うため、必要に応じてローパスフィルターで高域をカットしておくのも一つの手です。
3. ドライブチャンネルにハイパスフィルターを入れる
ドライブ側の音作りでは、そのままベースの信号を歪みペダルに通すと低音が暴れたり、音がぼやけてしまうことがあります。
そのため、ギターのような帯域に調整してからペダルに入れると効果的です。筆者は250Hz前後に設定したハイパスフィルターを歪みペダルの前に挿し、すっきりとした歪みサウンドを作っています。
4. 好みの歪みペダルで音作り
初めて挑戦するならTS系ペダル(Tube Screamer系)がおすすめです。
そのほかにも、RATやVoodoo-1などのディストーションペダルはベースとの相性も良いので、ぜひ試してみてください。
ペダル後段にEQを入れてギターと被りそうな中音域をカットしてあげるとアンサンブルの中での立ち位置が作りやすいです。
5. クリーンとドライブをブレンドする
最後に2つの信号をミックスします。
まずはクリーンのみの状態から始め、徐々にドライブ音を混ぜてバランスを取りましょう。ドライブの割合を増やすほど派手な音になりますが、低域が薄くなる場合があるので、使用するシチュエーションに応じて調整が必要です。
この音作りのヒントになったのは・・・
この手法のヒントになったのは、筆者が大好きなベーシスト、Billy Sheehanの音作りです。
BillyはPearceというギター用プリアンプを使って歪みを加え、チャンネルディバイダー(クロスオーバー)で信号を低域と高域に分割。高域だけを歪ませることで、深く歪んでいても芯のあるベースらしいサウンドを実現しています。
この発想をもとに、ギター用ペダルでもベースで使えるセッティングを模索しました。
もっと簡単にするには? ― “ADD CBF”という選択肢
ここまでご紹介した手法は、マルチエフェクターなら比較的簡単に再現できますが、ペダルボードで実現しようとすると少々手間がかかります。
その理由は、フィルター付きのブレンダーなどを別途用意しなければならないためです。
そこで、よりシンプルにギター用歪みペダルをベースで使える方法としておすすめしたいのが、KarDiaNの「ADD CBF」モジュールです。
このモジュールにはLPF(ローパスフィルター)が内蔵されており、原音のロー成分のみをブレンド可能。これにより、ベースに必要な低音域を保ちながら、中高域にはしっかりとエフェクトをかけることができます。
今は終売になってしまった限定モデル「Vitamin C - Super Lucky 7」のADD CBFモデルを試した際、ファズの荒々しさを残しつつ芯のあるサウンドが得られ、アンサンブルでも埋もれないベーストーンに感動したのをよく覚えています。
現在サウンドハウスでは6機種の「ADD CBF」されたペダルが販売中なので、気になる方はぜひチェックしてみてください!
- KarDiaN ( カージアン ) / SEROTONIN ORIGIN S.T. "ADD CBF"
- KarDiaN ( カージアン ) / CHLOROFORM "ADD CBF"
- KarDiaN ( カージアン ) / NITROGLYCERIN "ADD CBF"
- KarDiaN ( カージアン ) / SEROTONIN "ADD CBF"
- KarDiaN ( カージアン ) / VITAMIN C "ADD CBF"
- Limetone Audio ( ライムトーン オーディオ ) / JACKAL MIDNIGHT ADD CBF
まとめ
ギター用歪みペダルをベースに使用する際は、ローカットや原音ブレンド機能の欠如といったギター用ペダルならではの問題がありますが、信号を2系統に分けることで、それらを解決することができます。クリーンとドライブを分離・調整し、それぞれの帯域を適切にコントロールすることで、ベース本来の低音感を保ちながら、歪みの効いた個性的なサウンドを実現できます。
このアプローチはBilly Sheehanの音作りにもヒントを得ており、マルチエフェクターを使えば比較的簡単に再現可能です。また、より手軽に導入したい場合は、KarDiaNの「ADD CBF」のような原音ブレンドモジュールが入ったペダルを活用するのもおすすめです。
ギター用ペダルの魅力をベースでも活かしたい方は、ぜひ今回紹介したセッティングを試してみてください!
おまけ
先ほどの音作りを踏まえてGT-1000でBilly風サウンドを作ってMR.BIGのBurnを弾いてみました!
コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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