こんにちは
後輩に『「ガンバの冒険」知らないとかありえないです』と言われ、内容を熱く語られたので全26話見た者です。
EDの曲「冒険者のバラード」はとても良い曲なのですが、児童向けアニメとは思えないほどのなかなかの攻め具合。ぜひ一度聴いていただきたいです。
ちなみに私の推しのキャラクターはイカサマです。
さて、前回のブログではピックの構造と音を変化させる要因について書かせていただきました。
これで次の章に移れるなと思っていたのですが、大切なことを忘れていました。
それはハムバッキングピックアップ、通称ハムバッカーの構造についてです。
一般的にハムバッカーはシングルコイルと比べノイズに強く出力が高いと言われていますが、なぜそのような特徴があるのか?
その仕組みについてお話させていただこうと思います。
○ ハムバッカーの誕生
そもそもハムバッカーはどういった経緯で作られたのか、少しだけ歴史のお話です。
ハムバッカー搭載のギターと言えば、そう、世界最強の知名度を誇るシグネチャーモデルGibsonのレス・ポールモデルですよね。
しかし初期のレス・ポールモデルのピックアップはハムバッカーではなくシングルコイルでした。
それが、ウォルター・フラー氏が開発したP-90。
温かみのある独特なトーンとアジャスタブルポールを採用したとても素晴らしいピックアップでしたが、時代とともに音楽も変化。大音量で歪ませた音がギタリストに好まれるようになるとある問題点が出てきます。
ノイズです。
さまざまな方法で対策を施してもやはりシングルコイルには限界がありました。
そこで1955年当時、Gibson社の社長だったテッド・マッカーティ氏の呼びかけで、ウォルター・フラー氏とセス・ラヴァー氏が新たにノイズの少ない構造のピックアップの開発を開始したわけです。
そうして完成したのが皆さん大好き、世界で最も有名なハムバッカーPAFです。
当時、ピックアップの裏にPAFと書いてあるシールが貼られていたからそう呼ばれていますが、PAFとは「Patent Applied For」の略で特許出願中という意味です。
当時は画期的な発明だったため「これ特許出願中だからバラして真似すんじゃねーぞ」というメーカーからの警告みたいな感じです。
まぁ現在ではメーカー各社からPAFを再現したピックアップが販売されているんですけどね。
さて、このハムバッカーという最強の武器でGibson社がエレキギター界の覇権を握ると黙ってはいられないメーカーが……最大のライバルであるFender社です。
Gibson社が発売した後にFender社もハムバッカーの開発を行っていたのですが、どうしても完成させることができなかったのです。
そこでFender社がとった行動が1967年セス・ラヴァー氏の引き抜き。
おいおいマジかよ、さすがにやりすぎじゃねって感じですよね。
ですが、そうした経緯で誕生したのがFender社初のハムバッキングピックアップ、ワイドレンジハムバッカー。
個性的な見た目とバランスの良いパワフルなトーンで現在も多くの愛好者がいらっしゃるピックアップですね。
こちらのピックアップ、正式名称がCuNiFe WIDE RANGE HUMBAUCKERなのでクニフェと呼ばれる事もあるのですが、このクニフェというのはピックアップに使用されている磁石の事なんです。
主成分が銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)であるためクニフェという名前でピックアップの他には電球や真空管のリード線などにも使用されていたりします。
そんなこんなで今なおハムバッキングピックアップは音楽の変化とともに進化し続けているわけですね。
○ ハムバッカーの構造
少し前置きが長くなってしまいましたが今日の本題、ハムバッカーの構造についてです。
ハムバッカーは2つのコイルを合体(直列接続)させて作られていますので、上の図は単純にシングルコイルを2つ合体させたものです。
そうするどうなるのか?
単純にパワーが2倍です。
しかし、ノイズも2つのコイルで同じように検出されるので2倍です。
ではどうすればよいのか?
片方のピックアップのコイルのエナメル線の巻き方向を逆にするのです。
これによって片方のコイルに流れる電流の方向が逆になります。
それでどうなるの?ってお話なのですが、2つのコイルの巻き方向を逆にすることによってノイズの信号が逆向きになります。
このことを逆位相と言うのですが、ノイズの信号を逆位相にしてあげることでお互いの信号が打ち消されることでノイズが少なくなるという仕組みになっています。
しかしコイルの巻き方向を逆にするとピックアップの出力の位相も逆になってしまうため、爪弾いた音色も打ち消しあうことになってしまいます。
ですので、片方のコイルは磁極の向きも逆にします。
こうすると磁界の向きが逆になり出力の位相が元通りに戻ります。
そしたらノイズの位相も逆になってノイズが増えるんじゃあ……ってなりそうですが、ノイズの位相は磁界には影響されないのでひっくり返ったまんまになります。
結果、ノイズは逆位相でピックアップからの出力信号は同じ位相で揃った状態になるのです。
これでノイズは逆位相で打ち消されてピックアップの出力は位相が揃い直列で繋いでいるので、ノイズに強くパワフルなピックアップが完成というわけなんですね。
理論上はこれで完全にノイズレスになるのですが、実際には完璧に打ち消すことができないのであくまでノイズに強いパワフルなPU。
ではなぜ完全にノイズが打ち消されないの?
これはハムバッカーを構成する2つのシングルコイルピックアップの位置が完全に同じ位置にないためです。
完全に同じ位置で音やノイズを拾うと波形の形も完全に同じなので逆位相でぶつければノイズはゼロになるのですが、ハムバッカーは構造上コイルを横に並べてあります。
これだと音やノイズを拾う場所が異なるため、ノイズ同士の信号の形が若干異なるために完全に打ち消すことができないという感じになっています。
ムスタングのセレクタースイッチなどで逆位相にした場合に、完全に音が完全に消えずスカスカな音になるのも同じ理由ですね。
いかがだったでしょうか今回は歴史のお話の方が少し長くなってしまい申し訳ないです。
いろいろとひっくり返したり元に戻したりで読んでいて頭がこんがらがってしまったかもしれませんが、ハムバッカーの構造について何となくご理解いただけたら幸いです。
まだまだピックアップについてお話したいことが沢山ありますので、今後も技術者目線から皆様にピックアップについてのブログを書かせていただきたいと思っております。
それではまたサウンドハウススタッフブログで会いましょう。
さようなら。