温度20℃、湿度50%が弦楽器にとって最適な環境です。

こんなフレーズを目にしたことはありませんか?
20℃、50%は人間にとってもかなり快適な数値です。最初に言った人が誰なのかは調べても分からず。そうネットに書いてあるし、複数の人が同じことを言っているとそれが真実と思い込んでしまいがちです。まして自分の習っている先生がおっしゃればそれはもう聖典レベルの話。疑いをさしはさむ余地などありません。

アントニオ・ストラディバリウスはバロック時代の人でした。あの時代にエアコンはありませんでした。彼らが湿度に無関心だったわけは無いですが、今日のように「20℃・50%」という数字を認識していたかどうか、これもまた不明です。Wikipediaによればルネサンス期にはイタリアで既に湿度計が存在していた、という記事も目にします。バロックの時代ともなれば科学も発展を遂げていますから思いのほか現代に近い感覚で「湿度」を捉えていたかもしれません。
雨の多い時期は楽器が響かない、お天気のいい日は楽器が良く響く、といった経験的な感覚で湿度が楽器の響きに大きく影響を与える事は知っていたことでしょう。それでもエアコンがない時代、湿度をコントロールするという考えは持っていなかったのではないかと思います。
実際のところ楽器を使うのに、極端な環境でなければ、ある程度の気候の幅は容認せざるを得ません。
21世紀の現代では湿度を管理するのにエアコン、除湿器、加湿器と暮らしそのものが温湿度をコントロール可能な環境で生活をしています。そうした設備機械が備わっているのだから一見心配する事もないようにも思えてきます。
一方、楽器ケースの中に入れて使用する湿度調整材は色々な種類のものが販売されています。少し紹介してみましょう。
まずは湿度計です。
DADDARIO ( ダダリオ ) / PW-HTS Humidity & Temperature Sensor
毛髪湿度計など色々な製品がありますが、デジタルゆえの精度は期待が持てそう。
Fender製品に付属するもあるBoveda。ポップなパッケージデザインは目も楽しませてくれます。
70g×1袋入り 交換目安:2~3か月
テクノスナカタ ( テクノスナカタ ) / ドライフォルテ 弦楽器用湿度調整剤
バイオリン、マンドリンユーザーに愛用者の多いドライフォルテ。テクノスナカタという日本の湿度調整材のメーカーが製造販売している製品です。小さめの袋が3個でバイオリンケースにも最適。
30g×3袋 交換目安:3~4か月
GRECO ( グレコ ) / DRY CREW Orange 湿度調整剤
シリカゲル素材は他のメーカーと一緒ですが、グレコのDRY CREWは香り付き。全9種類、画像はオレンジの香り。
70g×1袋 交換目安:6~12か月
FERNANDES ( フェルナンデス ) / Dr.Dry 楽器用湿度調整材
ギターメーカー、フェルナンデスのDr.DRY。
40g×2袋
ドライフォルテの30g×3とDr Dry40g×2。
40gのパッケージはギターケースには意外に合うサイズかもしれません。使用する楽器のサイズやケースの形状などで検討してみてはいかがでしょうか?
PICKBOY ( ピックボーイ ) / H-95 DRYKEEPER
50g×2袋 トータルで100gあるH-95はコスパの高さでは随一かもしれません。
私がクレモナを初めて訪ねたのはもう25年以上前のことになりますが、当時、クレモナの工房でエアコンがついているところは数えるほどでした。まだ通貨がリラだった時代です。
楽器の工房と言ったら空調が完璧な部屋で……みたいなイメージがあるかもしれませんが、現実はなかなかそうではなかった記憶があります。
湿度管理を完璧にするのはとても難しい事です。しかしここで紹介したような「B型シリカゲル」の湿度調整剤は楽器への湿度の影響はある程度軽減できることは確かです。
楽器を大切にする、というのは楽器演奏の基本姿勢でもありますね。
ドライフォルテのメーカー、テクノスナカタさんのHPにシリカゲルについて詳しく説明されています。さすがは専門メーカーですね。
もう一つ読者の皆様にお願いしたいことは、「天気のいい日には楽器ケースの中を掃除」していただきたいという事です。楽器自体は拭いたり、磨いたり、手を入れるけれどケースの中はいかがですか?梅雨に入るとなかなか風を通す日も少なくなります。掃除機をかけて直射日光は避けて風を良く通してケースの中も清潔に保ちましょう。弓の松脂も拭き取るなど掃除をしてみましょう。
快適なバイオリンライフをお楽しみいただけますよ。