AKAIの新製品「MPC KEY 37」が発売されました。現行品でもあるMPC KEY 61を小型化した商品ですが、小さくなっても同じように使えるの?と疑問に思った方も多いはず。
国内代理店inMusic Japan様のご厚意をいただき、発売前のデモ機を貸し出してもらったので、早速皆さんの疑問に応えるべくレビューしていきましょう!


MPC KEYとは?
まずはそもそも「MPC KEY」ってなんだ?というところから説明していきます。
AKAIの代名詞ともいえるMPCとは、単体で動作するサンプラー兼シーケンサーのこと。MPCのワークフローを受け継ぎ、鍵盤を増やしたというのがこのMPC KEYなのです。
スタンドアロン動作、シンセサイザー、MIDIキーボード、サンプラー、シーケンサー、オーディオインターフェイス……と機能をてんこ盛りに詰め込んだ、言うなれば最強のDTMアイテム!
もちろんDTMだけでなく、アナログシンセサイザーの自動演奏などに使用するCV/GATE端子を備えているため、パフォーマンスに役立てることも可能。1台何役もこなす器用なヤツですね。

本体スペックについて
まず目につくのはボディの赤色。

MPC KEY 61では黒を基調として、背面にAKAIレッドを使っていましたが、MPC KEY 37はその逆。デスクトップ環境において目立つことって意外と大切です。またライブ現場に持って行く場合は友人をアッと驚かせることもできるでしょう。
次に背面の違いについても確認していきます。
※ここではスペックは考えず、形のみ記載しています。
MPC KEY 61の背面に備わっているものは以下の通り
- AC電源
- 電源ボタン
- イーサネットリンクポート
- USB Type-Aポート ×2
- USB Type-Bポート ×1
- ヘッドホンアウト
- アウトプット ×4
- インプット(コンボジャック) ×2
- CV/GATE ×8
- MIDI IN/OUT/THRU 計3
- サスティンペダル ×1
- フットスイッチ ×1
- エクスプレッション ×1

一方MPC KEY 37の背面は以下の通り。MPC KEY 61と異なる部分は赤太字にしています。
- DC電源
- 電源ボタン
- USB Type-Aポート ×1
- USB Type-Bポート ×1
- SDカードスロット ×1
- インプット(ライン入力) ×2
- アウトプット ×2
- ヘッドホンアウト ×1
- CV/GATE ×4
- MIDI IN/OUT 計2
- サスティンペダル ×1
- フットスイッチ ×1
- エクスプレッション ×1

MPC KEY 61と大きく違うのはSDカードスロットの有無でしょう。元々MPC KEY 61には32GBのストレージがあり、SATAコネクターを介してHDDと接続し容量を拡張することができました。
MPC KEY 37では、本体自体のサイズが小さいことと、携帯性の面からSDカードスロットに変更されたのだと思います。なおMPC KEY 37もストレージは32GBを備え、SDカードを使用することで最大22GBの拡張が可能。
イーサネットにより接続可能であったネットワーク・システムは、本体内蔵のWi-Fi/Bluetooth接続により実現しています。ここも省スペースに役立っているポイントですね。37鍵モデルは有線でのネットワーク接続ができない、と覚えておきましょう。ファームウェアアップデートなどにも使用するので覚えておいてください!
メーカーが公表しているスペック表でも比較してみましょう。長くなってしまうので、ここではそれぞれで違う部分にフォーカスして記載します。
技術仕様 | MPC KEY 61 | MPC KEY 37 |
---|---|---|
鍵盤数 | 61鍵 | 37鍵 |
専用ファンクションボタン | 44個 | 31個 |
タッチストリップ | ◯ | × |
RAM | 4GB | 2GB |
RAMのスペックやファンクションボタンの数に違いはありますが、そのほかはおよそ共通した仕様というのが驚き。ディスプレイの大きさも共通しており、今までMPC KEY 61を使っていたユーザーでもすぐに操作感に慣れると思います。
実際に使用してみた感想!
まず驚いたのが、ディスプレイの綺麗な画質。写真で伝わるか分かりませんが、とにかく起動時にその画質に圧倒されました。
起動画面からデモソングの選択画面への移行においても、その切り替わりが分かりやすく、また選択肢もワクワクさせてくれる画像だと思います。

デモソングだけでも十分に遊べるMPC KEY。もちろんそのまま曲作りに繋げても良し、新規プロジェクトを立ち上げて1から制作するも良し。自由な曲作りを本体のみでこなしてしまえるのが魅力です。
パッドに割り振られるサンプルをデモソングから組み替えることも可能で、Future BassにDrum'n'Bassのスネアを入れてみる、といった実験も可能。初期段階からサンプルは相当数入っており、またジャンルごとに分けられているためサーチも簡単。
キーボードのタッチ感はしなやか且つ硬めで、シンセアクションのため使いやすいと思いました。なんとアフタータッチにも対応。パッドも同様に対応しており、ストリングスやブラスの打ち込みにも便利ですね。サンプリングのサブスクリプションであるSpliceから直接ダウンロード、再生ができるというのも面白いポイント。Spliceも利用していますが、非常に膨大な量の良質なサンプルが数多く入手できる面白いサービスです。MPC KEY 37をお求めの際は合わせて加入されることをオススメします!
パッドの感触は他の機器に比べるとやや硬め。自分の出したいベロシティをそのままフィードバックするなら正直この硬さがとても丁度良い感じです。柔らかすぎると叩いた感触より押し込み度が勝ってしまい、打ち込みにおいて遅れが目立ってしまいがち。その点MPC KEY 37は繊細なベロシティも十分に再現できることから、硬いといって使いにくいことは一切ありません。
ピッチベンド/モジュレーションホイールは、MPC KEY 61が鍵盤左側であったのに対し、MPC KEY 37は左上に移動。それに伴いMPC KEY 61で配置されていたボタンが場所変更されています。クリック感の強いボタンが採用され、押した感触がダイレクトに分かるのも評価したいポイント。
データダイヤル以外のノブは無段階クリック無しのタイプ、データダイヤルはプッシュ可能なクリック有りのタイプとなっており、ここはMPC KEY 61と変更はありませんね。
電源ボタンは背面に備わっており、押すと元の位置まで戻ってくるタイプ。終了時にもう一度押すと、それまでのトラック制作状況を保存するか聞かれるのが特に嬉しいポイントでした。間違って触ってしまい、今まで作っていた楽曲が!!とならないのは安心できる仕様ですよね。

Bluetooth接続について、筆者のiPhoneと接続してみました。送受信可能なのはMIDI信号のみですが、シンセサイザーやPC用のMIDIキーボードとして使いつつ、iPhoneなどにも接続してラフスケッチを行えるのは便利なポイントだと思います。
まずはデモソングを選択もしくは空のプロジェクトを作成します。その後、画面下部の「MENU」を押し、画面右下「PREFERENCES」を選択。メニュー内の「BLUETOOTH」を選び、機能をONにすると自動的にペアリングを開始します。表示されたデバイスをタップし画面下部の「PAIR」を押してペアリングは完了です。

もちろんBLUETOOTHをONにした時点でペアリングモードに入っているため、使用するデバイスから選択することも可能。
はじめてBLUETOOTH機能をONにした際は、セットアップまで少々時間が掛かるようですが、2回目以降はかなり素早く接続可能でした。どうしても上手くいかない場合は、一度別メニューに切り替えてからBLUETOOTH機能に戻ると成功しやすいと思います。
MIDIデバイスとして使用する場合はトラックの設定から使用したいデバイスを選択してください。
注意したいのは、MPC KEY 37のディスプレイ上で選択を行う場合は、該当箇所をダブルタップ/ホールドする必要があるという点。1タップのみでは反応しないので気を付けましょう。設定項目など決定する必要がある場面ではダブルタップが基本動作になります。
PCと接続してみた
MPC KEY 37はUSBケーブルによってPCと接続し、MIDIキーボードとして使用することも可能。
※後述する全ての機能を使うためにも、PCにMPC Softwareをインストールしていただくことを推奨します。
じつを言うと、本機はスタンドアローンモード時でもMIDIコントローラーとして使用することができるんですね。
一旦、コントローラーモードとして使う場合について解説しましょう。
まずはBluetooth接続時と同様に、プロジェクト画面を立ち上げます。右上にある「MPC」と書かれたアイコンをタッチするとスタンドアローンモードからコントローラーモードに移行します。
※MPC Softwareをインストールしていない場合はPCを探す表示から移行しません。
ここでMPC 2.0を起動すると、MPC KEY 37の画面と同じようなウィンドウがPCに表示されます。……そうなんです。MPC KEY 37の画面を本体で動かせば、それに追従してPCに映されたMPC 2.0の画面も変わるのです!各トラックのメイン画面から、果ては環境設定画面まで、全て共通した画面が表示されるのが本当に面白い。これで本体の画面を見なくても編集や録音動作を行うことが可能になります。
そしてMPC KEY 37をUSBで接続することによる機能拡張はこれだけではありません。なんとオーディオインターフェイスとして認識されます!
2in/2outの44.1kHzインターフェイスとして、もちろんDAWにキーボードへ入力される音を録音する、といったことも可能。MPC 2.0自体がVST/AUプラグインに対応し、DAW上で起動させられるので、MPC KEY 37に搭載されていないプラグインであっても適用できるというのが素晴らしい。
総じてMPC KEY 37の活用方法として、従来のMPCのようなハードウェアだけで完成させない、次世代のMPCとしてより洗練されていると感じました。
まとめ
冒頭にてご紹介のとおり『小さくなっても同じように使えるの?』という疑問に対しては、全く問題ない!というのが回答です。むしろ小型であるというメリットを生かして、MPC KEY 61と比較してもしっかりとした差別化がされており、ニーズに合わせてお選びいただけるかと思います。
ステージ用のセカンドキーボードとして、また同期演奏にも使いやすく、軽量であることからパフォーマンス用ギアとして非常に優秀。DTM環境の拡張としてもオーディオインターフェイス機能や、アナログ環境のユーザーでもCV/GATEによるシンセサイザーなどの接続を行い橋渡し的な役割を持たせることも可能ですね。
このブログを機に、ぜひAKAI / MPC KEY 37 をご検討ください!