実は結構大事な部分なのに今一つ注目されにくい部分であるスピーカーユニットについて色々語ります。
ギターからエフェクター、アンプと来て最終的に電気信号を音に変換する部分であるスピーカーユニットはユーザーが最も簡単に、危険を伴わずにアレンジできる部分でもあります。
今一つ注目されない理由はスピーカーユニットに付随するデータの意味が分からないことと、実際にその音の違いを体験する機会があまりないためでしょう。
今回はわかりやすくデータのどこを見るべきなのかと、大まかな音の傾向、注目したいユニットを紹介していきたいと思います。
まずユニットのデータで最初に注目したいのは音圧レベル(SPL)です。
○○dB/mと表記されている部分ですが、これは1Wのパワーを入れた時に1m離れて聞いた音の大きさを示しています。
当然数値が大きければ大きいほど出てくる音は大きい。つまり入れた音を無駄なく音に変換できていると言う事なのです。
注意したいのは、音を大きくするイコール音が良い!ではないという事。
次に耐入力(MUS)
このユニットがどのぐらいの入力信号に耐えられるか?という数値です。
良く聞くのが10Wの耐入力スピーカーに100Wのアンプを繋ぐとスピーカーが壊れると言いますが、それはスピーカーのコーン紙が可動範囲を超えて動きその際にコーン紙が破れたり、コーン紙が動く限界を超えてもなお入力した場合、コイルが熱を持ち焼け焦げてオシャカになるパターンが多いです。
要はこの数値を超えない範囲の入力信号ならOKということなのですね。
再生周波数帯(Hz)
このユニットはこれぐらいの低い音からここまでの高い音を出せますよと言う範囲を示しています。
実際はその範囲以上に広範囲で出てはいます。しかし平均出力音圧レベルに満たない部分は出ていてもデータには出ていると表示されません。
最低再生周波数(fo)
エフゼロと読みます。
このユニットの低音再生の限界値と思ってください。この周波数の低音まで再生できるという数値で、口径の大きいユニットほど低くなる傾向があります。
あとはユニットのインピーダンス(Ω)ですね。 楽器用で使用されるインピーダンスは4Ω、8Ω、16Ωがほとんどです。
それでは代表的なメーカーとユニットを紹介していきましょう。
CELESTION

イギリスのメーカーで1924年に設立されました。
楽器用スピーカーとして最も採用されているメーカーでMarshallアンプには必ずこのメーカーのユニットが搭載されています。
現在の代表的なユニットはG12/Vintage30やG12/M75です。友人のMarshallキャビネットにG12/Lead100が4発搭載された物を試した時は最高の音と思いました。
圧倒的な高音の透明感に加え余裕のある低音とアンプの歪みに左右されない立体的な音像はまさにCELESTIONならではの音と思いました。
全体的に能率が高いユニットが多く、モダンサウンドからビンテージサウンドまで何でも揃います。
リプレスメントの筆頭メーカーでしょう。
EMINENCE

Jensenなき後Fender AMPを支え続けているメーカーです。
CELESTIONのような派手さはなく、全体的に素直な音の印象です。
それ故エフェクターやアンプの音の違いが聞き取りやすく大変扱いやすいユニットでもあります。
出力周波数分布が暴れていないのでJazzやベース用に良いでしょう。
MESA/Boogieのギター用キャビネットにEX-212と言う品番が有りますが、このキャビネットの上のユニットはCELESTIONで下のユニットはEMINENCEです。
一つのキャビに違うメーカーのユニット入れるという珍しい方式ですが、そのユニットを最大限に生かすためCELESTIONをオープンバック、EMINENCEを密閉にしています。
JBL / ALTEC / ElectroVoice

この3種のメーカーに関しては詳しく述べることができません。
本が2~3冊できてしまいます。
エピソード的な話をいくつか。
- Randy Rhoadsの愛用していたMarshallキャビネットの中のユニットはすべてALTECの417-16Hという品番のユニットに変えられていた。
- Fender USAのアンプはオプションでEMINENCEスピーカーをJBLかElectroVoiceに変更できた(オプション料金追加で)。
- MESA/Boogie生産当初の標準搭載ユニットはALTEC、ダンブルアンプの標準搭載ユニットはElectroVoice、これらはすべてアンプ製作者の強いこだわりによる物。
- Stevie Ray Vaughanのフェンダーバィブロバーブアンプには15インチのJBLスピーカー(D-130)が付いていました。しかし本人はJBLの音が大嫌い、最終的にElectroVoiceに交換された。
- 実は元々JBLには楽器用スピーカーという概念はなく、すべてシアター用、PA用として作っていた。それを楽器用やオーディオ用に流用する人が多かったため、家庭内オーディオや楽器用ユニットの開発を始めた。 JBLやALTECに負けない内容と音質の日本製スピーカー(楽器用)が何種類か存在する。
→ JBL / スピーカーユニット 一覧
→ ElectroVoice / スピーカーユニット 一覧
大変興味深い話はまだたくさんありますが、長くなりすぎたのでこの話は次回のブログ「楽器用スピーカーユニットあれこれ 後編」に続きます。