はじめに
こんにちは。
筆者は最近、初めてエフェクターの自作を経験しました。今回は回路図から必要な部品まですべて同梱された「自作キット」を利用したのですが、ゆくゆくは自分で1から作れるようになりたいと思っています。
KORG ( コルグ ) / Nu:tekt OD-S オーバードライブ組み立てキット
さて、このエフェクター自作という取り組みですが、イメージ通りというべきか、やはり一筋縄ではいきません。何度も壁にぶつかって、それを乗り越えてようやく完成の日の目を見るのです。
ということで今回は、筆者の経験をもとに、自作エフェクターの失敗しやすいポイントをまとめて紹介していきます。
失敗しやすいポイント
● 部品の判別
自作の第一段階におけるミスです。
エフェクター製作では、見た目のよく似た部品をいくつも使って基盤を構築していきます。この時、一つ部品を間違えるだけでも完成品が正常に動作しない可能性があります。変な音が出るという問題が起こった際は、ここをチェックしてみましょう。
筆者が間違えたのは「抵抗」の識別です。抵抗はひょうたん型の本体につけられた4本の線の色(カラーコード)によってその値を示しています。この線の色が一本でも違うと、その働き方が全く変わってくることになります。
〈図1〉

例えばこの画像では、左から黄→紫→橙→金と並んでいます。この組み合わせのカラーコードを持つ抵抗は47kΩである、と規格が定まっているのです。つまり、この色が違う抵抗器を使うと、思った通りの効果が得られないことになるのです。
筆者は実際に組み立てる際に赤と橙を見間違え、異なる値の抵抗を取り付けそうになったことがあります。
ここで取り上げたのは、組み上げ時の部品取り違えについてですが、その前段階の、購入時から部品の確認は必要となります。キットを利用せずに自分で1つずつ部品を購入する場合は、なおのことです。また、キットを購入しても、封入された部品の不足や間違いは起こりうるので、必ず作業前にチェックをしましょう。
● はんだ付け
エフェクターの自作におけるミスとして、最もイメージしやすいのがこの「はんだ付け」の失敗でしょう。極端に難しい作業というわけではないですが、はんだ付けは中学校の技術科以来だという人にはハードルが高く感じられるかもしれません。
ここでは、はんだ付けの失敗例について見ていきましょう。
まず前提として理想的なはんだ付けは、はんだが富士山のような円錐形をえがく状態である、ということを共有しておきます。この形が崩れているとき、失敗している可能性があると考えられるでしょう。
〈図2〉

例えば「いもはんだ」というミスは、はんだが団子状になって基盤にしっかりとつかず電気が正しく流れなくなるものです。
他にも、はんだに艶がなくくすんでいる、黒い焦げたような跡がある、はんだの量が足りていないなどのミスも起こりますので、発見し次第やり直したほうが良さそうです。
さらには、以下でも説明する「短絡(ショート)」というミスもあります。はんだの量が多すぎて隣のはんだとくっついてしまうことによって起こる不具合です。
また、プリント基板の「パターン剥がれ」というものもあります。基盤についている銀色の輪っかが剥がれると、はんだが基盤につかなくなってしまいます。このミスに対しては、基盤を無視して部品の足同士を直接結線する方法によって対処することが出来ました。このとき、他の部品の足をリード線として利用できるので、ニッパーで切った足は捨てずに保管しておくと便利です。
これらの問題でも、エフェクトON時に変な音が鳴るという現象が起こります。
● 部品同士の短絡(ショート)
基板上でのはんだによるショートだけでなく、筐体に収めてから起こるショートもあります。この場合は蓋を閉めてみないと分からないこともあるので、慎重に確かめましょう。
筆者は、このショートには何度も苦しめられました。前述の通り、蓋を閉めると音が鳴らないけれど蓋を開ければ音が鳴るために、どこが原因になっているかを調べにくいのです。
そこで筆者は、ショートしていそうな部分を手当たり次第にビニールテープで覆うことにしました。荒療治かもしれませんが結果的には一番効果はありました。
具体的には、POTの裏と結線部分、インプット/アウトプットジャック、DCジャック、そして蓋の裏です。結局どこが原因だったのかは分かりませんが、この対策によって正常に音が鳴るようになりました。
● 配線材の長さ
これは直接的に音が鳴らなくなるようなミスではありませんが、地味ながら致命的なミスになり得ます。
配線材は長すぎず、短すぎず、適切な長さにすることが重要です。特に長すぎるとノイズが増えたり、ケースに入りきらなくなってしまうため、筆者はできるだけ短く配線するように心がけていました。
しかし、これもやりすぎは禁物でした。スイッチから基盤にのびる線が短すぎて結線部に負担がかかり、ケース内部で切れてしまったのです!結局、はんだ付けをやり直すことになりました。
慣れないうちはなかなか難しいですが、適切な長さで配線できるようにしていきたいですね。いったん部品を筐体に収めてみて、配線材の長さチェックを入念に行いましょう。
おわりに
今回は、エフェクター製作の中でつまずきやすいポイントに着目した記事をお届けしました。これが少しでも、自作に行き詰まっている人の助けになればと思います。
エレキギターの楽しみは、演奏することだけに留まりません。その周辺機材を自作し、誇張抜きに「自分だけの音」を作れるという自由度の高さも創作欲を大いにくすぐります。
今や個人のビルダーがネットショップでオリジナルのエフェクターを販売できる時代です。そんな世界に、まずはここから足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
今回もありがとうございました。
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