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Rock’n Me 27 洋楽を語ろう:ラッシュをこよなく愛するアーティストたち(その2)

2023-07-31

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

こんにちは。洋楽を語りたがるジョシュアです。
第27回は、前回(その1)に引き続き、ラッシュ(Rush)をこよなく愛するアーティストたちを取り上げます。

◆ Rockn’ Me 1 洋楽を語ろう:ラッシュ

前回取り上げたのは、ラッシュへの影響がその音楽からバレバレなアーティストたちでした。今回は「えー、この人たちが?」という意外なバンドを2組紹介した後、ラッシュの遺産を次世代に継承するアーティスト2組を取り上げます。

スマッシング・パンプキンズ

1990年代のオルタナティブ・ロック全盛期を突っ走り、活動休止を経て現在まで活動を続けているスマッシング・パンプキンズ(通称スマパン)。スマパンとラッシュは、一見結びつきづらい印象があります。しかしスマパンの中心人物、ビリー・コーガンは、事あるごとにラッシュへの愛を語ってきました。自身のコンサートでは、ラッシュのヒット曲「ライムライト (Limelight)」をカバーしたこともありました。さらには、ラッシュのメンバーたちとビリーがイベントで共演したこともあります。ロサンゼルス郊外、ハリウッドには「ウォーク・オブ・フェーム」という観光名所があります。ここは、路面に2,000以上の星型のプレートがあり、それぞれエンターテイメント界の大物たちの名前が彫られています。ラッシュの「星」は2010年に刻まれましたが、そのイベントにメンバーたちとともにビリーが登場したのです。

それだけではありません。最近のインタビューで、ビリーはラッシュのフレーズを借用していたことを告白しました。スマパンの出世作といえば、2作目の『サイアミーズ・ドリーム(Siamese Dream)』です。このアルバムのオープニング・ナンバー「天使のロック (Cherub Rock)」では、クリーン・トーンで弾かれたギター・リフが強く歪んでいく様子が、当時の音楽シーンに衝撃を与えました。実はこのリフ、ラッシュの「岩山の貂 (By-Tor and the Snow Dog)」のフレーズ(動画3:53~)をモチーフにしたものでした。

■ スマッシング・パンプキンズ「天使のロック (Cherub Rock)」

■ ラッシュ「岩山の貂 (By-Tor and the Snow Dog)」

マニック・ストリート・プリーチャーズ

マニック・ストリート・プリーチャーズ(以下、マニックス)は、1986年にデビューし1990年代にブレイクしたイギリス・ウェールズ出身のバンドです。ギタリストのリッチー・エドワーズ失踪(後に死亡宣告)という悲劇を乗り越えて、現在も元気に活動し、11月にはスエードとのダブル・ヘッドライナーで来日公演を予定しています。

マニックスの音楽性は言葉で説明するのが難しいですが、パンク、グラム・ロック、オルタナティブ・ロック、ブリット・ポップをミキサーにかけた感じでしょうか(あくまでも私感です)。正直なところ、その音楽性とラッシュはなかなか結びつきませんでした。しかし、ラッシュ・ファンならば『ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ (Journal for Plague Lovers)』(2009年)のタイトル曲が耳に入った瞬間、「これは!」とラッシュ・センサーが働くはずです。イントロからAメロのギター、1・2弦の開放弦を使ったフレーズ(動画0:29~)がラッシュ「ザ・スピリット・オブ・レイディオ」(動画0:39~)に似ているのです。調べてみると、ベーシストのニッキー・ワイアーはインタビューでこの曲についてこう語っていました。「ラッシュにインスパイアされた曲を書いて、マガジン(イギリスのパンク・バンド)が演奏しているフリをする、というアイデアだった。」

■ マニック・ストリート・プリーチャーズ「ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ」

■ ラッシュ「ザ・スピリット・オブ・レイディオ」

さらに調べると、ビックリする過去が判明しました。(マニックスにもたびたび関わっている)ニッキーの兄であり詩人のパトリック・ジョーンズが、ビックリするツイートを載せました。ラッシュのドラマー、ニール・パートが2020年に病死した際、パトリックは追悼ツイートを寄せました。しかもその内容は「ニール・パートから手書きの手紙をもらい、それを宝物にしている」というものでした。パトリックとニッキーが10代だった頃、大ファンだったラッシュのコンサートに行くことができましたが、行く際には母親とひと悶着あったそうです。驚くことに、母親は、その顛末を記した手紙をニール・パートに書いたのです。才能ある子どもたちを持った母親の行動も凄いですが、それに返事を書いたニールも同じく凄いです。

YYNOT

アメリカで2015年に結成されたバンド、YYNOTは、日本ではほとんど無名の存在です。しかし、アメリカではラッシュのトリビュート・バンド兼オリジナル・プログレバンドとして、評価を高めつつあり、ラッシュの曲を次世代に伝えるために、小規模のツアーをこまめに行っています(小規模となる理由は後述)。

このバンドは、もともとセッション・ギタリストのビリー・アレキサンダーによるプロジェクトでした。そのきっかけは、ラッシュのコンサートを観て昔からのラッシュ愛が再燃したことです。ビリーは、ラッシュへの敬意を表すため、オリジナル曲制作のプロジェクトを立ち上げました。そこでインターネットで探し当てたベーシストが、ラッシュの「弾いてみた」動画をアップしていたティム・スタラーチでした。その結果、ラッシュの「YYZ」から曲名のヒントを得て「YYNOT」という曲を創りました。その曲名には、①Nを90度回転すると「YYZ」と読める、しかし②YYZではない(Not)という2つの意味がこめられています。

なお、彼らのアルバムは全曲オリジナルですが、ラッシュ・ファンが聴けばニヤニヤするものばかりです。例えば「Kingdom Come」は、ラッシュの未発表曲と勘違いしそうなフレーズと展開が満載です。

■ YYNOT「YYNOT」

■ YYNOT「Kingdom Come」

話題が少々逸れますが、ティムの経歴はかなり面白いです。ティムは若い頃にミュージシャンを目指したものの断念し、機械工として長年働いていました。その間、ベースには全く触れなかったそうです。しかしある日、ベース熱が再燃し、先の「弾いてみた」動画をアップしました。そして、この活動がご縁でYYNOTに加入しただけでなく、テック21社への転職を果たしました。そう、テック21といえば、ギタリストもベーシストもお世話になるプリアンプ、「サンズアンプ」のメーカーです。ラッシュのベーシスト、ゲディ・リーも長年サンズアンプを愛用し、自らのプリアンプモデルが複数発売されたことで知られています。 そんなティムは平日にテック21で働き、週末にYYNOTのライブ活動を続けています。サウンドハウスの商品ページでも、プリアンプ2製品のサンプル動画で「YYZ」を弾きまくるティム(一度見れば忘れられない髭顔)が確認できます。

TECH21 / YYZ ゲディー・リー・シグネチャー ベースプリアンプ

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TECH21 / DI-2112 ゲディー・リー・シグネチャー ベースプリアンプ

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クラウン・ランズ

次いで取り上げるのは、ラッシュと同じくカナダ出身の2人組、クラウン・ランズ (Crown Lands)。2020年にデビューした新鮮なバンドですが、これがまた強烈です。音楽性はあえて表せばプログレッシブ・ハードロック。ラッシュを素材にして、ジェネシスとドリーム・シアターのスパイスを加えて、2人編成用に圧縮した感じです。プロデューサーなどの制作陣にも、ラッシュ人脈が関わっています。これだけ書くと意味不明ですが、「なんかスゴい」というのは伝わりますでしょうか。

さらにスゴいのは、彼らは超難解な曲をわずか2人だけで再現するのです。コディ・ボウルズはヴォーカル+ドラム+パーカッション、ケヴィン・コモーは、ダブルネック・ギターを用いて、ギター+ベース+キーボード+ベース・ペダルを担当しています。つまり、3人で創り上げたラッシュ・ワールドを、彼らは2人だけで創り上げるのです!まあ、文章をこれ以上書くよりは、動画をご覧いただくのが早いです。18分の組曲ですが、その曲芸ぶりに見とれていると、あっという間に最後までたどり着きます。若い2人が今後どのように進化していくのか、とにかく楽しみです。

■ クラウン・ランズ「Starlifter: Fearless, Part II」

さて、そろそろこの記事を締めますが、そんな私もラッシュをこよなく愛する一人で、ラッシュのことを本コラムの第1回で取り上げたぐらいです。この記事をお読みになってラッシュに関心を持たれたら、ぜひ彼らの音楽にも触れてください。


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ジョシュア

1960年以降の洋楽について分かりやすく、かつマニアックに語っていきます。 1978~84年に米国在住、洋楽で育ちました。2003~5年に再度渡米、コンサート三昧の日々でした。会場でのセットリスト収集癖があります。ギター・ベース歴は長いものの永遠の初級者です。ドラム・オルガンに憧れますが、全く弾けません。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズに関するメールマガジン『Depot Street』で、別名義で寄稿しています。
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