日本のギター・メーカーとして世界的な知名度を持ち、多くのプロのミュージシャンに愛されているブランド”Ibanez”。
Ibanezのフラッグシップモデルといえば、”j.custom”ですが、実はj.customが登場する以前、90年代初頭から中期にかけてアメリカ製のIbanezが発売されていたのはご存じでしょうか?
今回はIbanezファンの間で幻とされているIbanez USA Custom シリーズについてご紹介します。
USA Customシリーズについて
USA Customシリーズは、1990年代初頭から中期にかけてIbanezによって製造されたラインナップです。
USA Custom シリーズには5つのラインナップがあります。
- American Master (MA)
- USA Custom Exotic Wood (UCEW)
- USA Custom Graphic Design (UCGR)
- USA Custom The Metal Design(UCMD)
- USRG
ではそれぞれのラインの特徴をご紹介します。
American Master (MA)
American Master(以下MA)はUSA Customシリーズの中でも上位グレードに位置していたラインナップで、最大の特徴はスルーネック構造です。
90~91年の2年間しか生産されておらず、それに加えアメリカ国内のみの販売だったこともあり非常にレアなモデルです。
またUSA Customシリーズの中で唯一ベースが作られたのもこのMAシリーズです。
2022年にHoshino USA50周年を記念してMAシリーズの一部モデルが各種一本ずつ復刻製造され話題になりました。
Ibanez 50th_Anniversary lacs8
Ibanez 50th_Anniversary lacs7
Ibanez 50th_Anniversary lacs6
USA Custom Exotic Wood (UCEW)
USA Custom Exotic Wood (以下UCEW)の最大の特徴は、なんといっても杢目が非常に美しいエキゾチックウッドを”贅沢”にトップ材に使用していることです。
ちなみに筆者が所有しているRGはこのシリーズのものです。
(筆者所有機については後ほど詳しくご紹介します)
また、顧客の好みに合わせたカスタムオーダーにも対応しており、日本国内でもごく僅かですが販売されていました。
USA Custom Graphic Design (UCGR)
USA Custom Graphic Design (以下UCGR)はボディートップにインパクトのある手書きのグラフィックが施されたモデルです。
USA Customシリーズのうち今まで紹介した2つはアメリカ国内で全て製造を行なっていましたが、UCGRシリーズはギターのボディーとネックは日本のフジゲンによって生産され、アメリカにて組み立てと仕上げが行われたモデルです。
こちらのモデルも顧客の好みに合わせたカスタムオーダーを受け付けてました。
(日本では未発売)
USA Custom The Metal Design(UCMD)
USA Custom The Metal Design(UCMD)はボディートップに動物柄が施されたモデルです。UCGR同様ボディー&ネックはフジゲン製で組み立てと仕上げはアメリカで行われました。
(日本では未発売)
USRG
USRGは正確にはUSA Customシリーズではないのですが、94〜96年にかけて製造販売されていたアメリカ製のモデルです。
USRGの特徴としてテンションフリーネックと呼ばれるトラスロッドを持たない独特の機構が備わったネックが使用されていました。
※同時期にUS ATKとよばれるアメリカ製ATKベースも発売されていました。
筆者の所有するUSA Customを徹底解説!
モデル名[UCEWQM]

< 製造年1992年 >
こちらは先ほど紹介したUCEWシリーズの一本。
まずはボディーから見ていきましょう。
キルトメイプルの杢目が非常に美しい個体です。
今でも杢目の美しいギターというのは非常に人気ですが、このモデルに関しては特筆するべきポイントがあります。
それはトップ材の厚さです。
現在流通しているギターに使われているトップ材は大体数mm程度です。
ですが、このギターはなんと……

脅威の12mm!!!
12mmのキルトメイプルというのは、今ではなかなか見かけることはないと思います。
木材が豊富にあった昔だからできたことですね。
ちなみにバック材はマホガニーが使われています。
ネックジョイントには現行品にも採用されているAll Access Neck Joint (AANJ)と呼ばれるヒール加工が施されていて、ハイフレットへのアクセスがしやすいようになっています。
次にネック周りを見てみましょう。

ネックもバーズアイメイプルが使用されていて非常に高級感がある仕上がりです。
ネックは当時のスタンダードなRG(RG550やRG570)に比べて若干幅が狭く厚みがあります。
指板はローズウッドで指板Rは400R(一般的なRGは430R)

ヘッドには”u.s.a.custom”と独自のロゴが記されています
PUはDimarzioのPAF PROにVS-1という定番の組み合わせ。(筆者の個体はAir NortonとTone Zoneに変更済み)
ブリッジは当時開発されたばかりのLo-Pro Edgeを搭載。
Lo-Pro Egdeは滑らかな操作感やチューニングの安定性から現在ではj.custom等ハイエンドモデルに採用されています。
これだけ贅沢な仕様でありながら当時の販売価格は25万くらいだったらしいです。(おそろしい・・・)
ちなみにこのギターを作ったのはIbanezのカスタムショップではありません。
じつは当時はまだIbanezのカスタムショップが無く、カリフォルニアにあったHosono Guitar Worksという工房で作られました。
この工房のルシアーであったTak HosonoさんはのちにIbanezのLAカスタムショップにてマスタールシアーとしてSteve Vaiをはじめとする数多くの有名ミュージシャンのギター製作を行っています。
Steve Vaiのシグネイチャーギター製作動画
(1分過ぎにTak Hosonoさんが出てきます。)
いかがでしたでしょうか?
アメリカ製のIbanezは、今ではなかなか見かけることができない非常にレアなものになってしまいましたが、USA Customシリーズを通して培われた技術等は現在のフラッグシップモデルであるj.customにも受け継がれています。
Ibanez ( アイバニーズ ) / RG8570CST-NT
< American Master Seriesを踏襲したデザイン >
カスタムショップが手掛けた限定モデルや、USA Customシリーズで培われた技術が受け継がれたj.customは入手できますので、ぜひともチェックしてみてください!
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