近年急速に市民権を獲得し、サウンドハウスでも掲載数100アイテムを超えるカテゴリーへと成長している「7弦ギター」。とはいえまだまだ「5弦ベースはともかく7弦ギターはなくてもいいでしょ」みたいな空気があるのも事実。今回は、サウンドハウスの7弦ギタリスト二人による愛機の惚気もとい、7弦ギターの魅力を伝えるための座談会をお届けします。
細谷:今回は6弦ギタリスト代表兼、進行役として参加します!では早速ですけど、7弦ギターの存在を知ったきっかけは何だったんでしょう?
宮﨑:僕はsadsのK-A-Zさんですね。アルバム『THE 7 DEADLY SINS』(2010年)の音像がとにかくエグくて、なに使ったらこんな音になるの?!って思って調べたら7弦ギターを使っていることを知ったという。
■ sads/EVIL
水田:僕は高校時代に初めてIbanezのホームページを見に行った時ですかね。その時は「7弦なんて何に使うんだ」って思ってたんですが、大学に入ってcoldrainやCrossfaithにハマったときに「7弦あったら便利!」となりました。
■ coldrain/The Revelation
細谷:なるほど。では実際に7弦ギターを導入するきっかけになったギタリストやバンドは?
水田:これもcoldrainやCrossfaithですね。基本的にリフにLOW-BとかLOW-A#が出てくるので、6弦だと弦を太いのに変えたりしないと対応ができないんですよね。
■ Crossfaith/Monolith
宮﨑:僕の場合、一番大きかったのはジョン・ペトルーシ(Dream Theater)ですね。7弦ギターをヘヴィなだけじゃなくテクニカルに使っているギタリストもいるんだとなって、自分も使ってみたいなと思いました。
■ Dream Theater/The Enemy Inside
細谷:水田はいわゆるラウド系、宮﨑はメタルでもプログレメタルがきっかけになっていると。 では、二人が所有している7弦ギターを教えてください。
宮﨑:僕はEDWARDS / E-SN-24 FIXED 7STです。
水田:僕のは生産完了品ですが、Ibanez / Prestige RG3327FXです。
細谷:スペックを見比べると意外と共通点も多いような? 2本ともパッシブピックアップと、固定式のブリッジ搭載というのは共通のスペックだね。
宮﨑:ですね。水田さんのIbanezに載ってるDimarzio / Fusion EdgeはIbanezのギター用に作られてるモデルだよね。サウンドはどんな感じ?
水田:うーん、あまり比較対象が自分の中にないのですが、とにかくよく歪みます(笑)。ダンカンのNAZGULみたいなキレキレのサウンドではなく、若干もっさりしたサウンドの印象です。ラウドだけで使うわけではないので万能という意味ではこちらのほうが好みですね。ギターのスペックに関しては、Ibanezで、パッシブのハムで、固定ブリッジでという3拍子が揃っていたら買わない理由がない感じです(笑)。宮﨑さんはなぜこのスペックのギターを選んだんでしょう?
宮﨑:まずピックアップは、パッシブのほうがオープンな音で弾きやすいから個人的にそれは必須で。ブリッジはチューニングを変えたくなったとき便利なように固定式を選んだっていう感じですね。レギュラーBだけじゃなくてドロップAとかも弾いてみたかったので。最終的に決め手になったのはナット幅です。45mmとほかの7弦ギターに比べて細めで、6弦からの持ち替えもしやすそうと思って。
細谷:6弦から持ち替えた時の違和感を軽減するなら、ナット幅は重要視するポイントだよね。ピックアップはなにが搭載されてるの?
宮﨑:ピックアップはSEYMOUR DUNCAN製のSENTIENT / PEGASUSが載ってます。フロント/リア共にセラミックのFusion Edgeとは対象的に、どちらもアルニコマグネットのピックアップです。僕のEdwardsはアッシュボディ、メイプルネック、エボニー指板で、ともすれば硬い音になりそうな材の組み合わせなんですけど、ピックアップがバランスを取ってくれている気がしますね。7弦の低音域をしっかりキレよく出力しつつ、リアピックアップでハイポジションを弾いても高音が耳に痛くならないです。
細谷:ちなみに、仮にもう1本7弦ギターを所有するとしても、同じようなスペックのギターを選びます?
宮﨑:パッシブピックアップと25.5インチスケールは必須の条件ですね。でも、2本目だったらトレモロアーム付きの7弦がほしいかもです。そうなるとチューニングを変えられないロック式トレモロでもありかなー。
水田:僕はもともとレスポールを使っていたということもあって、LTDのECとか気になってますね。
細谷:では続いて、7弦ギターの演奏感について聞いていこうかと。7弦ギターを弾いていて感じる利点は何でしょう?
宮﨑:僕が利点だと感じるのは、スケールを下降する際に移動できる弦が1本多いところですね。6弦では運指的に難しかった音運びができるようになるのですごく楽しいです。
水田:普通のチューニングの曲と、ダウンチューニングの曲を1本で弾ける点ですね。先ほども言いましたが、6弦でLOW-Bとか使おうとすると弦を変えなければならないので。
細谷:そういえば、弦は何を使ってるんでしょう?
水田:ELIXIR NANOWEBの09-52ですね。
宮﨑:僕はSITのPower Woundでゲージは09-54です。
細谷:二人ともプレーン弦は細めなんだね。昨今は各メーカーから7弦ギター用弦も多くリリースされるようになったよね。 → 7弦ギター用弦 一覧
では逆に7弦ギターを弾いていて苦労すること、大変だと思うポイントは?
宮﨑:余弦のミュートが6弦よりも大変になるのと、7弦はテンションが緩めなので、強く押弦してしまうと音程がシャープする点ですね。ピッキングも強すぎると音が暴れやすいので、左手も右手も最低限の力でプレイすることが重要になると思います。
水田:プレイに関してはほぼ言ってもらったとおりなので(笑)それ以外で言うと、ケース選びが少し慎重になる点ですかね。7弦はヘッドが大きくなって全長が普通より長くなるので。以前持っていた7弦レスポールはレスポール用と謳われているケースでは入らず、今回のIbanezはIbanez純正のケースでもヘッドに干渉したのでフォークギター用に収納してます(笑)
宮﨑:変形の7弦ギターとか買っちゃったら、ますます困る羽目になりそう(笑)
細谷:音作りの上で大変な点や、注意するポイントはある?
水田:低音に限って言うと、ダウンチューンした6弦ギターと7弦ギターを比較すると、7弦は音の輪郭がボケた、デブな感じになりがちなんですよね。そこをいかに細マッチョにもっていくかがポイントだと思います。TS系のODをフィルターとして噛ますのが人気ですが、ラウドをやるならマストですね。
宮﨑:TS系、特にOD808はメタルでも王道のブースターですね。あと個人的には、歪ませて使うならフレットラップないし何かしらのミュートは必須だと思います。余計な倍音をカットしてあげることで実音感がかなり増すので。
↓Gruv Gear / FretWraps String Muters Large
細谷:では、音作りする上で参考にしているギタリストや音源があれば教えて下さい。
水田:僕は特にないですね……。フルチューブのハイゲインアンプだったら大体いい音。
宮﨑:モダンな音像で一番参考になるのはPeripheryだと思います。全員パッシブピックアップのギターを使ってるという点でも、個人的に参考になるバンドです。
■ Periphery/Blood Eagle
細谷:二人は7弦専門?それとも6弦と使い分けての使用なんでしょうか?
水田:本来は7弦一筋です。だけど今は6弦も持っていますね。
宮﨑:僕は使い分けですね。
細谷:使い分け方は?
宮﨑:6弦は半音下げ、7弦はレギュラーチューニングっていう感じで使い分けてます。
水田:チューニングというと、7弦レギュラーの開放弦はB音なのですが、たまにCとかC#の開放が必要な曲が来ると悩みますね。アップチューンするのもありですが、使っている弦のゲージによってはテンションが高くなりすぎちゃうので、大学の時は仕方なくカポで対応していました。
細谷:チューニングで使い分けているっていうのはおもしろいなー。他の7弦ユーザーの方も各々の使い分けがありそうで面白いですね。6弦派としてそんな低い音いるのか?と思っていましたが、使い分け次第のように感じます。
宮﨑:そうですね。単純に音域としてどう変わるか?ってだけで見ると、たかだか2音半低い音が出せるようになるだけなんですけど、じゃあそれを演奏にどう活用する?ってなると、3ノート・パー・ストリングスで考えても3音 選択肢が増えるわけなので。低い音出せるとカッコいいじゃんってポイントも勿論あるんですけど、それよりも咄嗟のときに弾ける音が多いよ!ってところを推したいですね。
細谷:私を含め6弦派のみなさまも少し興味が湧いてきたのではないでしょうか。7弦ギターも、使うギタリストによって個性が出る奥深い楽器のようですね。