安倍元総理大臣が銃弾により尊い命を奪われてしまった。世界でも安全な国と知られる日本で、あってはならないことが起きてしまった。ご冥福をお祈りします。ちょうど筆者が6歳の時、アメリカではケネディー大統領が暗殺された。その衝撃は世界を震撼させ、小学1年生の自分もニュースを知って、恐ろしいことがおきるものだと思っていた。同様の大事件が、2022年の日本でおきてしまったことに、言葉がでない。
過去、日本社会を揺るがしたもうひとつの大事件が、ロッキード関連の汚職疑惑だ。結果として、それまで日本国をカリスマ的に導いてきた田中角栄元総理大臣が失脚することとなる。しかしながら、真相は100%解明されることはなく、田中元総理がまんまとはめられてしまったという説は、今でも根強い。田中元総理は国民的な人気を博していただけに、何かしっくりこない結末であったことを覚えている。その一連の報道の中に登場したのが、児玉誉士夫氏という政界の黒幕の存在だ。右翼の要人であり、暴力団の顧問を務めながらも、鳩山氏を始め政界に金脈をつくり、日本の政治に貢献した方だ。連日のニュースを見聞きしながら、日本には「黒幕」なるものが存在することを心にとめることになる。
そんな幼い時の思いが心の片隅に残っていたこともあってか、いつしか自分もどんな時でも黒幕でいたい、と思うようになった。簡単にいうと、有名にはならない、人様の前で目立たない、誰にも知られない、という存在だ。が、実質的には物事をコントロールし、多くの人を支配する権力を持っている。黒幕の利点は唯一つ。人から刺されることがない、ということ。何しろ前面にでることがないのだから、刺されようがない。殺されることがない。それが黒幕の特権だ。何たる魅力ある立場だろうか。
もしかしてサウンドハウスの経営にも、黒幕に憧れる自分の思いが絡んでいるのかもしれない。業界の最大手にまで短期間で成長したこともあり、いくらお客様から愛される会社であっても、同業者で敵は多いはず。でも、黒幕なら大丈夫なのだ。何しろ、本社のある千葉県成田市では成田空港につぐ最大企業であるにも関わらず、自分は公にでることがこれまでなかった。自慢ではないが、成田市で一番大きな会社の経営者であるにも関わらず。成田の商工会議所から呼ばれたことさえない。音楽業界関係の諸会合からは招かれたこともなく、また国内の展示会など出品したこともない。自分には運転手もいないし、ホテルに行く時はロールスロイスではなく、ボロの車で誰からも気をかけられずに自分で駐車場に停めて歩くことを好む。見かけの服装は20代の時からまったく変わってないので、まあ、会社の経営者には見られない。嬉しい限りだ。
ネット環境が激変し、社会が大きく変わってきた昨今、この黒幕である、ということがサウンドハウスの成長を助けたと思っている。それどころか、いつまでも黒幕でいたい、と思うようにもなったのだ。何しろ、業界関連の会合には一切呼ばれることもないので、時間の浪費がない。新聞や雑誌のインタビューに答えるために時間を作る必要もなく、お客様優先の仕事に専念することができる。つまり国内の業界関連と縁がないことから、時間をセーブできたのだ。だからこそお客様のために時間を費やし、ひたすら仕事に打ち込むことができた。
とはいえ、女川に進出したことをきっかけに、メディアの報道を避けることができなくなった。旧女川中学校の譲渡式典には全国ネットのTV局も来られたし、複数の新聞社からインタビューを受けざるをえなかった。これも時代の転換期だろうか。女川の発展には皆さんの協力と理解が必要なのは明らかなことから、チャンスがあれば今後もインタビューに応じて語ることにした。
待てよ。。。黒幕が表にでるということは、刺されるということではないのか。自分が「サティアン」にこもり続けて、地下組織から人を動かすことができれば、それは身の安全を確保することになる。しかし一旦、地上にでると、それは銃撃を受けて死ぬ可能性が生じることを意味する。まだ、自分にはやることが残っているので、死ぬには早い。よって、いつまでも黒幕でいたいと願う反面、出る時がくれば顔を見せるという新たなる時代の到来だ。そんなことを気にかけながら、寝言をもやもや書いている。
