ある日、海辺沿いの2階建てのビルで仕事をしていた。その事務所で海岸近くのイベントを企画し、ちょうどそれが始まろうとしていた。そしてみんなが慌ただしく準備をしていた時、何と、津波警報が発令されたのだ。「うん?津波がくる?」ちょっとした地震は数分前にあったが、まさかこの程度の地震で津波がくるはずがない。それでも海を見渡すと、確かに遠くの水面がちょっとだけ盛り上がってきているようにも見えた。
まあ、そんな日もあるかなと気にもせず、準備に追われていた矢先、ちょっとした床下浸水が始まった。「まじかよー?」、と一瞬、不安にはなったが、それでも誰もがそこまでの津波とは思わず、避難もせずに仕事を続けていた。イベントはもう始まるし、この程度なら大丈夫と踏んだのだ。
すると突然、足元の水嵩が一気に増してきた。「まさか!」「ありえない!」が現実になってしまった。そしてあっという間に足元から、ぐーーと、水面が上がってきた。ほんまもんの津波が襲ってきたのだ。濁流のようにものすごいスピードで、階段下から水が追ってくる…。「やばい!」と急いで階段を上がるも、足元が水につかったと思いきや、一瞬のうちに水嵩が2階の天井近くまで増してきて、自分を飲み込んでしまう恐怖の瞬間が訪れた。
しかも慌てて階段を駆け上った際、大切な鍵を手元から水の中に埋もれた階段に落としてしまったことに気が付き、「この鍵だけはなくなったら困る」と、その時だけは躊躇せず、水の中に潜り、その鍵をかろうじて見つけ、手にすることができた。
だが、潜ったからには上に浮上して息をしなければならない。もはや建物の1階から2階まで全部が津波にのまれているに違いない。果たして、2階の上に空間があるのか。なければ死んでしまうぞ。。まだ死ねないな。生きるために水没から脱出しなくては。。「行け!」「上を目指せ。。。!」
2022年6月18日、宮城県女川町にて早朝4時、津波にのまれ、死に直面した夢を見る。女川のシーパルピアでこの記事を書いている最中、なんと、津波の避難に関するアナウンスが館内に流れた。初めて聞くメッセージだ。万が一の際は避難してくださいという。。。。 油断大敵。女川の地には今、生きている人だけでなく、震災で亡くなった多くの人々の思いが込められている。その声が聞こえてくる。。。
女川に進出するということは、女川に繋がる人々の思いを背負いつつ、町の発展に貢献することに他ならない。そんな重責を果たして自分は担うことができるのだろうか。心の中まで津波に襲われる前に、上を目指して走り続けるしかない。
