サウンドハウスが徳島に進出してから久しく時が経つ。人口が減少し、過疎化が進んでいる地域でも、そこに拠点をおいて雇用を創出し、地域に貢献することができると確信しているからこそ、躊躇なく徳島の進出を決めた。
世界で一番大きい音楽系の会社、ドイツのトマン社は、ドイツ中央に広がる草原のど真ん中にて事業を拡張し、世界最大の音楽系ネット通販会社の自動倉庫を建築した。それに追随するアメリカの一番手Sweetwater社も、インディアナ州のフォートウェイン郊外に、どでかい会社を造りあげていった。どちらの会社も、その規模は尋常ではなく、誰が見ても一つの小さな音楽の町を想像するくらい、会社の存在そのものが街の様相を呈している。
そんな世界の「ビッグボス」を現地で見て来たからこそ、日本でもきっと同様のことができる、と考えるのはあさはかだろうか。サウンドハウスは成田で創業し、成田の本社は大きくなったが、もう周辺に拡張するスペースはあまりない。そこで徳島に目をつけ、和田島町という徳島市の南、小松島市の海岸沿い、その一番奥に佇む古びたぼろぼろの鉄工所から、サウンドハウスの徳島拠点をスタートさせた。そしてそこに和田島タウンを造りたい、と言い始めてから早くも5年の歳月が流れた。
結論から言おう。和田島タウンは見切り発車どころか、未だにスタート地点に立てていない。その理由は唯ひとつ。働き手が足りないのだ。あと50人雇用できれば、そして県外からも多くのスタッフが参加してくれれば、周辺には十分な土地があるだけに、社宅を建てて居住環境を整え、働きやすい街づくりを目指すことができる。仕事があるから、そこに人が住む。そして産業が何もない和田島町に陣取って人口が増えることにより、和田島タウンが生まれるのだ。また、住民が増えるということは、その町にコンビニもできるし、きっとファミレスも誘致できるだろう。しかし、和田島タウンの夢は、未だに実現しない。
もしかして、2022年2月より始動した東北、宮城県女川における「音楽のまち 女川」の街づくりの方が先になるのかもしれない。なぜなら、今のところ一緒に仕事をしたい、という大勢の応募者があるからだ。とはいえ、そのほとんどは隣の町、石巻からの通勤希望であり、街そのものを造成し、人口を増やすための原動力にはならない。それでもチャレンジするのは、まだ始まったばかりであり、必ず道が開かれると信じているからだ。和田島タウンの夢もあきらめていない。そして、今、「音楽のまち 女川」を夢見ている。夢を見ることができるだけでも、まだまだ人生、捨てたもんじゃないと思う今日この頃である。

日峰神社からの景色 遠方に和田島町を望む