誰もが避けるような嫌なトピックについて書くことも、これまた自分に課せられた苦行だ。ここ最近、子どもたちの将来を考えることが多くなった。そして現実を見据え、考えれば考えるほど、悩みが尽きないのだ。社会問題に関心のない諸君はここから先、読まないことをすすめる。気落ちしてしまうかもしれないから。
日本は少子化が進み、このままでは数百年後、人口はゼロになってしまうと言われている。だから、子どもの数を増やすことが大事だと言われている。しかし現実の日本は、真逆のことをしている。国をあげて子どもの数を増やすことが国策としても掲げられているというのに、日本は世界でも中絶大国として知られている。人工妊娠中絶の件数は昨今、年間で15万件を超え、1日平均にすると約450件という凄まじい数字だ。そして10代の女性が妊娠すると、大半が中絶するとも言われている。ところが実際には30歳未満の中絶件数は、全体の半数少々にしかすぎず、残りの半数近くは、30歳以上の方による妊娠中絶というデータにも驚きを隠せない。
かといってアメリカのように、中絶を法律で禁止するわけにもいかないのが日本の実情だ。なぜなら、日本では望まれない子どもが生まれても、その子どもたちを保護して育成する社会環境が整っていないのだ。現実は厳しく、生まれてきた子どもの多くが不幸な家庭環境に置かれているだけでなく、虐待まで受けているという悲惨な環境が目に余る状況となっている。その実態があまりにひどいため、国連子ども権利委員会などが日本に対して注意を促しているほどである。平和な国、日本と思いがちだが、現実は程遠いようだ。私たちの国はいつの間にか、子どもが生まれてこなければよかったのに、と思わざるをえないような、まさに子どもにとって劣悪な社会環境を作りあげてしまったように思えてならない。
さて、サウンドハウスは地方創生、活性化に協力し、地方の子どもたちに明るい未来を提供するため、そして音楽を通じて町を元気にするため、東北の女川に進出することにした。いろいろな偶然の出会いが重なり、いっきに話が進んだ結果、旧女川中学校を取得し、これから女川にて事業展開をしながら町に貢献していきたいと願っている。その主たる目的が、子どもたちの未来を音楽で明るくすることだ。そのため、無償で音楽を教え、子どもたちが音楽を学ぶことによって人生がより楽しくなるだけでなく、自らの人生に自信をもって生きてもらいたいと願っている。
しかし現実は、子どもたちの数があまりに減少してしまい、女川町には今や、小中学生、ともに100人ずつしかいない。そして実社会をみると、こんなに人口が減少している町中でもDVが横行し、地域周辺では幼児虐待があることを聞き、日本社会の行く末に不安さえ感じるこの頃である。まさに自分は無力を感じざるをえない。だからこそ、サウンドハウスの役割がある!と声を大にして言いたいのだが、所詮それも夢か。そんな創業者の思いを理解してくれる社員はいるとも思えない。余計なおせっかいと思われても不思議ではない。なぜなら、結局のところ、何もできずに終わってしまうのだから・・・そんな悲観的な声が聞こえてきそうである。
それでもいいや、自分で描いた夢を追い続けていこう。そう心に決めて、ひとりでもいいので女川に行くことにした。所詮、人間、生まれてくるときはひとり。死ぬときもひとりぼっちだ。どうせなら、自分が正しいと思ったことを今、とことんやりとげたい。そんな思いと「夢」にかられて、ここから熱い戦いがはじまろうとしている。まさに出陣の前夜だ・・・女川の町を子どもたちでいっぱいにする。そんな夢を描きながら。
