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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~珠玉のピアニスト佐藤博さん取材記パートⅤ~ その73

2022-04-18

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

■ 名キーボードプレイヤー佐藤博さん取材備忘録 最終回!

山下達郎さんが日本トップピアニストとコメントされたピアニスト、作曲家、プロデューサーであった佐藤博さんの取材記パートⅤです。
私は1995年、TVニュースの取材で日本を代表するキーボードプレイヤー、佐藤博さんを取材。佐藤博さんは国内の著名アーティストのアルバムに多数参加し、名演を残す一方、歌手のプロデュースなども多く手掛けています。
今回は前回紹介できなかった佐藤さんがプロデュースした作品や佐藤さんが好きだった演奏家などのアルバムで構成します。

■ 佐藤博さんは音楽を俯瞰できた演奏家であり、プロデューサーだった!

通常、音楽家は自分の想定する各楽器の演奏者を集め、自身の音楽を具現化します。佐藤さんはキーボーディストであり、ドラムやベースなどのプログラマーであり、アレンジャーであり、ミキシングエンジニアであり、プロデューサーでもありました。
佐藤さんは音楽に関わる全ての職種を網羅できるクリエイターだったのです。

■ アウェイクニング/佐藤博

Jポップ史上の名盤と云われる佐藤さん4枚目のソロアルバム「アウェイクニング」。当時、最新だったリンのドラムマシンでドラムパターンをプログラミング。ベースもミニモーグ等で演奏。出来上がったソロアルバムの質の高さは大きな話題を集めました。また、ドラムマシンの出現に音楽業界ではドラマーが失業するなどの噂も流れた時代でした。

しかし、ギターだけは打ち込みができない為、鳥山雄司さんや松原正樹さん、鈴木茂さんなど、ギタリストの手を借りて音楽制作をしていました。
佐藤さんは基本、ワンマンオペレーションの人でしたし、そういった志向の強い方でした。自分の描いた音楽の最終形が見えていて、それを具現化できる力を持っていました。
佐藤さんは機材好きで知られていましたが、理想を実現するための道具がシンセサイサーであり、ドラムマシンだったのでしょう。
私が佐藤さんにインタビューをした際に自分が作る音楽は日本だけにとらわれず、世界が認めるオリジナルを作りたいと仰っていました。佐藤さんの視線は狭い国内だけではなく、世界に向いていたのです。

■ 推薦アルバム:羽根田征子 『SORA』(1989年)

佐藤博さんプロデュース、羽根田征子の傑作セカンドアルバム。佐藤さんは演奏者であり、プロデューサーの視点を持つ、稀代のミュージシャンですが、その志向が分かるアルバム。楽曲をどう聴かせるかは制作の前段階で頭に描いていたと思われます。日本を代表するセッションミュージシャンを要所要所で使い切るのも、音楽を俯瞰できる視点があったからにほかありません。
そんな佐藤博のプロデューサー志向をこのアルバムで聴くことができます。
佐藤さんの名盤、「タッチ・ザ・ハート」や「アウェイクニング」からの提供曲は異なるヴァージョンとして聴けば、違った発見があります。佐藤さんの楽曲の良さが際立っています。

推薦曲:『ROSY HEART』

佐藤博のアルバム、「タッチ・ザ・ハート」からカバーされた「ロージー・ハート」。オリジナル曲よりもさっぱりした印象を受ける。女性ボーカルを際立たせようとしたためか。
歌詞は女性目線に書き換えられている。佐藤さんお得意のブラスサウンドは健在。

推薦曲:『恋唄千里 (IT’S ISN’T EASY)』

名作の呼び名が高いアルバム、「アウェイクニング」からのカバー。「アイ・キャント・ウエイト」は多くのカバーで取り上げられるが、私は終盤のメロディが秀逸なこの楽曲の方が好み。オリジナルでは佐藤氏によるキャラの強いアコースティック・ピアノのソロがあるが、こちらのアレンジはソフトなアコースティックギターのソロが入っている。これも女性ボーカルを聴かせる為の施策か?歌詞は英語から日本語になっていてJポップの要素が強くなっている。
ローランドD-50?のパッド音が全体を包み込み、ヤマハDX7(FM音源)によるエレピサウンドがアンサンブルの中核を作っている。当時、流行した心地よいシンセサウンドのお手本が聴ける。

■ 第50回日本レコード大賞【優秀作品賞】の受賞!

佐藤さんは青山テルマ「そばにいるね」をプロデュース。自らの演奏に加え、アレンジ、サウンド・プロデュースやミックスダウン、マスタリングまで手がけました。第50回日本レコード大賞【優秀作品賞】の受賞はまさに佐藤博が積み重ねてきた音楽への取り組みが花開いた瞬間だったと思います。

■ 佐藤博さんにお薦めしたアルバム!

取材中に佐藤さんから最近のお薦めアルバムを問われました。私は当時良く聴いていた、アル・ジャロウのスタジオライブ盤、「テンダネス」とお答えしました。佐藤さんはクルセダースのピアニスト、ジョー・サンプルが好きでご自身のプレイの延長線上にあるピアニストだと思われていたそうです。
このアルバムはベイシストのマーカス・ミラーがプロデュースし、ファーストコールミュージシャン達がアルのバックを務めています。

■ 推薦アルバム:アル・ジャロウ『テンダネス』(1989年)

メンバーはスティーヴ・ガッド(Dr)、エリック・ゲイル(G)、ジョー・サンプル、フィリップ・セス(Key)、デヴィッド・サンボーン(Sax)、マーカス・ミラー(B)など。
豪華なバックを従え、アル・ジャロウの見事なパフォーマンスが聴ける。ジョー・サンプルのアコースティックピアノも聴きものであるが、フィリップ・セスがシンセサイザーを担当し、楽曲に現代的なタッチを加えている。

推薦曲:『サマータイム』

ジャズスタンダードの名曲、「サマータイム」。楽曲のイントロ部分には新たなリフが加えられ、スタンダード曲が新たな色彩を放つ。アル・ジャロウの歌唱は円熟期に入り、楽曲に得もいえぬ彩を加えている。ジョー・サンプルのピアノソロも秀逸!

■ 今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:佐藤博、羽根田征子、アル・ジャロウ、ジョー・サンプル
  • アルバム:「アウェイクニング」「SORA」「テンダネス」
  • 曲名:「ROSY HEART」「恋唄千里 (IT’S ISN’T EASY)」「サマータイム」
  • 使用機材:フェンダー・ローズ・エレクトリックピアノ、アコースティック・ピアノ、ローランドD-50、ヤマハDX7など
 

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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