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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~私が取材した素晴らしいミュージシャン~ その69

2022-03-17

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

■ 山下達郎に日本一のピアニストと言わしめた、佐藤博さん取材記

前回は静岡県浜松市出身の世界的ジャズピアニスト上原ひろみさんの取材記をお送りしました。今回は山下達郎さんに日本でナンバーワンのピアニストと評された、日本を代表するキーボードプレイヤーであり、作曲家、プロデューサーでもあった佐藤博さんの取材記です。取材対象の佐藤博さんにたどり着くまでに面白い話があります。

佐藤博さんは私の大好きなキーボードプレイヤーで山下達郎さん、南佳孝さん、吉田美奈子さんなど、Jポップを代表する大御所達と共演をし、数々の歴史的名演を残しています。

また、ご自身のソロアルバムも多く発表されております。残念ながら2012年に急逝されています。
私は佐藤さんの演奏を聴き、Jポップを学んだといっても過言ではありません。私の身体の中には佐藤さんのピアノプレイの記憶が血液となって流れています。
そういう意味では一番取材をしたかったミュージシャンであり、佐藤さんとの時間は私のかけがえのない宝となりました。
取材中の佐藤さんとの会話は至福の時間以外の何ものでもありませんでした・・・といっても今回は文字数がオーバーしてしまい次回になります。申し訳ありません!
今回の鍵盤狂漂流記は佐藤博さんが残した名演と佐藤さんの取材にたどり着く迄のよもやま話です。

■ 佐藤博さん取材は最初は別のミュージシャンの設定だった!

私が浜松の支局にいたときに、TVニュースのカメラマンリポートを制作していました。カメラマン目線をテーマとした内容でしたが、いつもとは違ったカメラマンリポートをしようと、経済ネタを取り上げることになりました。
そのテーマは・・・日本のCDは3000円を超えるものが多くありますが、どうして輸入盤は1000円台で買えるのか?その理由を探る・・・というものです。
時は1995年。1991年にバブルがはじけ、円高傾向になりました。94年には1ドルが100円を突破し、95年には1ドルが80円を超える円高になりました。
浜松には軽自動車の老舗、S自動車があり、円高を押さえるために国内の部品メーカーに価格の圧縮を要請するなど弊害も出ていました。円高をテーマにした経済ネタは多くの記者が取り上げていました。
しかし、私は音楽好きなので車よりもCDでした。
国内盤と輸入盤の価格の違いをミュージシャンを通して見たら、今が見えるのではないかという発想です。前々回の穐吉敏子さんの教え「社会を見なさい」を有言実行しようというものです(笑)。一方、好きなミュージシャンを取材できるという不埒な想いも裏にはありました。

私は大好きなミュージシャン山下達郎さんの事務所に電話を入れました。その答えはけんもほろろ・・・ではなく、直ぐにOKがでました。私の心は踊りました。達郎さんを取材するのは夢のまた夢です。話を進めるうちに担当者が

「あっ、TVの取材ですか?」
私:「はい。TVです」
担当者:「申し訳ありません。山下はラジオならOKなのですが、TVはお断りしているんですよ」
私:「・・・」
夢が砕けた瞬間でした・・・(涙)。担当者にはお礼を言い、電話を切りました。

■ 山下さんNGで次のミュージシャンは

考えてみれば、山下さんはTVには出演されないのは分かっていました。残念ですが、しかたありません。次のミュージシャンに想いを巡らせたところ、頭に浮かんだのは山下達郎のアルバムで素晴らしピアノを弾いている私の大好きなピアニスト、佐藤博さんでした。
佐藤さんの事務所に連絡を取り、問題なくOKがでました。
私が佐藤博さんのピアノを意識したのは大学2年生の時。先輩のバンドが南佳孝さんの「月夜の晩には」という曲をコピーし、ピアニストのソロが話題になっていたのです。
その内容とは
「あんなピアノのソロを聴いたことがない」
「想像を超えている。あれは果たしてソロなのか?」
「佐藤博というピアニストが弾いているらしい。凄いソロだ!」などなど・・・。
実際にオリジナルを聴いて私は驚き、仲間が話している意味を理解しました。
そのトラックが入っているのは南佳孝さんのセカンドアルバムでした。
ブレイク・・・
佐藤博さんと私の会話は1回目では書ききれないので、次回に持ち越させていただきます。
スミマセン。誰も聞いたことの無い、お話がでてまいります。ご期待下さい!

■ 推薦アルバム:南 佳孝 『忘れられた夏』(1976年)

南佳孝のセカンドアルバム。ブラジル音楽やジャズなどが香る楽曲多数。独特な節回しは、この時点で完成している。大ヒットした「モンロー・ウォーク」でブレイクするシンガーソングライター渾身の2作目。

推薦曲:『月夜の晩には』

サンバをベースにした南佳孝初期の大傑作曲。フェンダー・ローズピアノを弾いているのが佐藤博さん。
サンバホイッスルからドラム~ベースソロへ・・・当時はかなりユニークなイントロだった筈です。しかし、もっとユニークなのが佐藤博さんのローズピアノのプレイ。
ギターソロ(イイ音!)の後にくる、ローズのソロは最高!!リズムとメロディーが混然一体となり、Jポップでこんなにいかしたピアノソロがあるかと私は言いたいです。クリエイティブでスポンティニアスで美しいメロディで・・・空間を生かしまくっている。どこからこんなソロのアイディアが出てくるのだろう!開いた口が塞がりません。必聴です!!
そしてローズピアノのプレイはソロだけにとどまらず、バッキングにも才気が溢れています。
取材中の佐藤さんとの会話は次回に・・・乞うご期待!


■今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用機材

  • アーティスト:佐藤博、南佳孝、山下達郎
  • アルバム:「忘れられた夏」
  • 曲名:「月夜の晩には」
  • 使用機材:フェンダー・ローズ・エレクトリックピアノ

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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