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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~珠玉のピアニスト佐藤博さん取材記パートⅡ~ その70

2022-03-24

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

■ Jポップ史上に残る奇跡の30秒間の裏話!ピアニスト佐藤博さん取材記 パートⅡ

今回も山下達郎さんが日本トップピアニストとコメントされたキーボーディストであり、作曲家、プロデューサーでもあった佐藤博さんの取材記パートⅡです。

私は1995年にJポップを代表するキーボードプレイヤー、佐藤博さんを取材する僥倖に恵まれました。佐藤博さんは山下達郎、吉田美奈子、細野晴臣、鈴木茂、角松敏生など、多くのJポップアーティストの演奏に参加し、歴史的名演を残しています。2012年にご逝去されています。
今回を含めた3回は前回紹介できなかった取材中での佐藤さんとの貴重な会話や佐藤さんご自身の音楽への想い、共演されたミュージシャン達の話題などをご紹介できればと考えています。

■ TVニュースのリポートで佐藤博さんを取材!

私はTVニュースのカメラマンリポートで佐藤博さんを取材しました。最初は山下達郎さんにお願いしようと思いましたが、山下さんはTVにはご出演されないことから佐藤博さんに辿り着きました。
リポートのテーマは「日本のCDは3000円を超えるのに、どうして輸入盤は1000円台で買えるのか?その理由を探る・・・」という経済ネタです。
大手レコード会社等を取材し、分かった事はアメリカなどの輸入盤はターゲットが全世界であることに対し、日本盤は国内中心の販売というマーケットの狭さにありました。もう1つは東京という世界屈指の高い土地価格の上にある音楽スタジオ費用の使用料でした。
それでは佐藤さんのお話です。

■ 佐藤さんから聞いたお宝音楽話!達郎さんが佐藤博さんにした話とは?

佐藤さんはとても物腰が柔らかく静かな方でした。こちらの質問には真剣に向き合い、答えて下さいました。
ニュースに必要なインタビューが終わり、カメラを置いて音楽の話が始まりました。当時の新しい機材やシンセサイザーの話、最近聞いたベストな音源などなど…話の流れの中で私は、以前から思っていたことを佐藤さんに質問しました。
私:「達郎さんのマンデー・ブルーという曲の中で、短い生ピアノのソロがあります。私はああいった佐藤さんのプレイが大好きなのですが、もっとご自身のアルバムにああいった演奏を入れることはできないのですか?」
随分、偉そうな質問です(汗)すると佐藤さんが笑いながら…
佐藤:「この間、渋谷を歩いていたら、(山下)達郎にバッタリあって、達郎にも君と同じような事を言われたよ。分かるんだけど何故か自分のアルバムでは、あんな風に弾けないんだよね…」
達郎さんのラジオ番組「サンデーソングブック」で佐藤博さんの追悼特集をした際、達郎さんは佐藤さんの演奏した「マンデー・ブルー」の素晴らしい瞬間(詳細はこの後)をコメントしていました。私は放送を聞きながら、「あの時の事だ!」と佐藤さんとの会話を思い出しました。

■ 推薦アルバム:山下達郎 『ゴー・アヘッド!』(1976年)

山下達郎の4thアルバム。「ボンバー」が大阪のディスコで火がつき、「レッツ・ダンス・ベイビー」とのカップリングでシングルカットされた。山下達郎ブレイク前夜の傑作。キーボード佐藤博、ベース岡沢章、ドラム村上ポンタ秀一、ギター松木恒秀という達郎バンドのベストメンバー!

推薦曲:『マンデー・ブルー』

山下達郎さんのバラードで私が1番好きな超名曲。当時こんな素敵なバラードは日本で誰もやっていませんでした。
佐藤博さんがフェンダー・ローズエレクトリックピアノを弾いた5人でのレコーディング。後に佐藤さんはアコースティック・ピアノをダビングしている。佐藤さんにはアコースティックピアノが入った演奏が既にでき上がっており、それを達郎さんに提案している。
楽曲後半6分尺からのブレイク後、ローズピアノの短いソロが入り、その直後にくるアコースティックピアノのソロが素晴らしい!6分尺からの30秒間はJポップ史上類を見ない奇跡の30秒間です!佐藤さんのプレイで私が1番好きな瞬間です。聴くたびに鳥肌が立ちます。達郎さんは某雑誌社のインタビューでも、このトラックの素晴らしさを語っています。必聴です!!

■ 推薦アルバム:佐藤博 『オール・オブ・ミー』(1995年)

私が佐藤さんの取材をした時点での佐藤さんの最新アルバムが『オール・オブ・ミー』。優良なJポップトラックが並ぶ。タイトルトラック、『オール・オブ・ミー』はエレピで弾かれていますが「アコースティック・ピアノに差し替えたい」とお話になっていました。

推薦曲:『ラブ・ミー』

最新アルバムの話の中で「どの曲が好き?」と佐藤さんから問われ、私は曲名が分からず、
「~♪金曜日を探しにゆこう~」とサビを歌いました。
佐藤:「ラブ・ミーだね」。さもない会話でした。
この曲がとても素敵なのです。曲も勿論ですが、アコースティック・ギターのソロ…最高です。ゴンチチのゴンザレス三上さんが弾いています。また、直後のサックスソロも最高!本田雅人さんによるものです。必聴です!
肝心の佐藤さんのアルバムと楽曲があまり、紹介できなかったので、次回は佐藤博さんのアルバム等を中心にした構成を考えています。ご期待下さい!


■今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:佐藤博、山下達郎、ゴンザレス三上、本田雅人など
  • アルバム:「ゴー・アヘッド!」「オール・オブ・ミー」
  • 曲名:「マンデー・ブルー」「ラブ・ミー」
  • 使用機材:フェンダー・ローズ・エレクトリックピアノ、アコースティック・ピアノ

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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