PAシステムを考えるにあたり、一番最初に検討すると言っても過言では無いのがミキサーではないでしょうか。
今回はミキサーの種類、選び方を踏まえつつ、おすすめのアナログミキサーとデジタルミキサーを紹介したいと思います。
ミキサーとは
マイク(ボーカル、ドラム、ギターなど)、キーボード、デッキなど複数の音声信号を入力し、個別にレベルやバランスを調整後、ミキシングして出力する機材を指します。

ミキサーの種類
アナログミキサー
マイク、楽器、プレーヤー等からの信号を、入力したアナログ信号のまま、音量、音色の調整をつまみやフェーダーで行い、出力するミキサーを指します。

メリット
- ・操作がシンプルで簡単
- 例えばイコライザーの場合、2バンドや3バンドが多く、効きがわかりやすいため、音作りもスピーディーに行えます。
- ・どのメーカーでも大体見た目が同じ
- 共通しているパラメーターが多いので、不特定多数の人が操作する現場にはアナログミキサーの方が向いています。
- ・見た目でわかる
- つまみやフェーダーの位置で視覚的に音量のバランスを把握することができます。
- ・デジタルミキサーと比較して安価
- 小型のモデルなら1万円以下でも購入可能です。
デメリット
- ・細かい音作りは苦手
- シンプルの裏返しですが、作りこむといった設定はできず、調整可能なパラメーターは見たままのもののみとなります。
- ・外部プロセッサーは別途必要
- コンプレッサーやイコライザー、エフェクトなど複数のプロセッサーを使用する場合、別に用意し、配線、設定をする必要があります。
- ・メモが大事
- 設定を保存することはできないため、バンドPAの場合は、メモ等をする必要がある。
デジタルミキサー
音声信号を一度デジタル信号に変換し、デジタル領域内で音色の処理、ミキシングを行うミキサーを指します。
メリット
- ・省スペース
- フェーダーやつまみ、スイッチなどの役割を切り替えることで多数の機能を操作することができ、また外付けの機器がほぼ不要となるため、省スペース化が可能。
- ・視覚的な操作が可能
- 本体に搭載されている液晶ディスプレイや、接続したPC画面に表示される値、メーター、グラフを見ながら細かい音作りをすることができます。
- ・綿密な音作りが可能
- 複数のプロセッサー、エフェクトを搭載し、それらは同時に使用することができます。プロセッシングやルーティングの変更など、アナログミキサーと比較して複雑な調整が可能です。
- ・設定の保存/呼出が可能
- フェーダーやイコライザー、AUXの送り量などを、シーンメモリーとして保存することができるため、バンドの転換時に瞬時に設定を呼び出すことが可能です。
- ・離れたところから設定可能
- Wi-Fi接続可能なタイプはPCやiPadなどのタブレットからリモートでの操作が可能です。お客様の位置に立ってメインスピーカーの調整をしたり、ステージに立ってモニタースピーカーのバランスを調整したりすることができます。
- ・優れた拡張性
- 専用ステージボックスが用意されている製品はLANケーブル1本で多数のチャンネルをステージとFOH(メイン卓)に相互伝送することができます。(アナログミキサーの場合は、太くて重量のあるマルチケーブルで対応します)
デメリット
- ・操作が難しい
- できることが多い=操作はその分、複雑になります。
- ・基本的には同じ人が操作
- 初見で操作することは難しいため、専任のPAが必要になることが多いです。
- ・アナログミキサーに比べて高価
ミキサーの選び方
マイク入力数
業務用音響機器というカテゴリーのミキサーのマイク入力端子は「XLR」です。使用する楽器の数分のマイク入力があるものを選びましょう。

ステレオ入力数
ステレオ入力に接続する機器は、LとRの出力端子があるものを指しています。音楽プレーヤーやデッキ、キーボード、DJミキサーが該当します。マイク入力と同じく必要分を接続可能かどうか確認しましょう。

エフェクト
バンドライブやカラオケなど、マイクにリバーブをかけたい場合は、エフェクトが搭載されているタイプを選びましょう。同じch数であればエフェクト無しモデルの方が安価になります。

USBオーディオインターフェイス
PCへミキサーでミックスした音を送ったり、PC内部の音源をアナログミキサーに取り込んで出力したりすることができます。ライブ配信をしたい場合には、USBオーディオインターフェース機能がある機種を選ぶほうが良いです。

AUX出力(呼称はMON出力など他にもあります)
AUXは、主な用途にフロアモニター用の信号として使用するというものがあります。小型のミキサーはAUXが1系統のみの場合が多く、一方で大型でチャンネル数の多いミキサーはAUXの数も増えていく傾向があります。ボーカル用とドラム用で異なるミックスを作りたい場合など、シチュエーションに合わせて選びましょう。


ワイヤレスコントロール
デジタルミキサーの多くは、専用のアプリやソフトが用意されていることが多いです。離れたところからワイヤレスで操作ができるので、客席やステージなど、実際に音を聴きながら音作りをすることができます。例えば、ワンオペ現場の場合、アナログミキサーだと、卓側とステージ側を行ったり来たりする必要がありますが、それが無くなるという大きなメリットがあります。


おすすめアナログミキサー
CLASSIC PRO/AMシリーズ
推しポイント
- THEアナログミキサーというスタンダードな配置
- 操作もシンプルで初心者でも安心
- お買い得な価格帯
- AM02、AM03はUSBオーディオインターフェイス搭載
- AM602FX、AM802FXはマルチエフェクト搭載
- AM602FX、AM802FXはMONITOR出力があり、メインと同じ信号を異なるレベルで出力することが可能
Soundcraft/NotePadシリーズ
推しポイント
- Hi-Z入力に対応しているので、パッシブのエレキギター、エレキベースをダイレクトボックスが無くても直接接続可能
- USBオーディオインターフェイスを搭載しているので、PCの音楽を流したり、配信に使用したりすることができます
- 8FXと12FXは、リバーブ、ディレイ、コーラスエフェクトを搭載
- AUXはスイッチ切替により、モノラル出力で使うか、ステレオ出力で使うか選択可能
- メイン出力がバランスXLRなので、長距離配線も可能
BEHRINGER/XENYXシリーズ
推しポイント
- ch数に合わせた豊富なラインナップ
- XENYX1003Bは電池駆動にも対応
- XENYX1204より大きなモデルは、フェーダー調整、バランスXLR出力
- XENYX1622より大きなモデルは各chにルーティングスイッチ搭載
- USBオーディオインターフェイス搭載モデルもある
おすすめデジタルミキサー
CLASSIC PRO/DMシリーズ
推しポイント
- DM20は、モーターフェーダーを搭載したデスクトップタイプでは一番お手頃な価格
- アナログミキサーに近い操作感のため、初めてのデジタルミキサーに最適
- DM20専用iPad用アプリによる快適なコントロール
- よりコンパクトなタイプのDM16
- DM16のワイヤレスコントロールは、アプリではなく、ブラウザーを立ち上げてコントロールするタイプのため、PCでもiPad/iPhoneでも操作可能
Soundcraft/Uiシリーズ
推しポイント
- 場所を取らないステージボックスタイプ
- 本体にWi-Fi機能を内蔵しているので、外部Wi-Fiルーターを用意しなくてもワイヤレス接続が可能
- 外部ルーターを介した接続や有線LANケーブルでの接続にも対応
- Lexiconエフェクト、dbxプロセッサー、Digitechギターアンプモデリング搭載
- 専用アプリではなく、ブラウザータイプなので、例えばPCで複数画面を立ち上げて、メイン、AUX、FXなどをそれぞれ並べてコントロールすることも可能
- Ui24Rは、ディスプレイ出力用HDMI端子、オーディオインターフェイスとしても使用を可能にするUSB端子を搭載し、マルチトラック録音/再生にも対応
BEHRINGER/X32シリーズ
推しポイント
- デジタルミキサー界に革命を起こし、衝撃を与えたX32シリーズ
- サイズ、タイプ違いの4ラインナップを用意
- AES50ネットワークを使用した専用ステージボックスやモニターコントローラーによる柔軟な拡張性
- 高音質なMIDAS製マイクプリアンプを搭載
- 名器と呼ばれている著名なプロセッサーにインスパイアされた高品質なエフェクトを多数搭載
QSC/TouchMixシリーズ
推しポイント
- コンパクト・デジタルミキサーの先駆けとも言える存在
- TouchMix-8、TouchMix-16はノートPCサイズ
- 大型カラーディスプレイはタッチコントロール対応
- 楽器の種類に合わせて最適な設定がされているプリセット・ライブラリー
- 専用アプリによるワイヤレスコントロールに対応
- ゲイン、エフェクト、アンチフィードバック、チューニングを簡単に行えるウィザード
- マルチトラックレコーディングに対応
- 最上位モデルTouchMix-30Proは、DAWに対応する32in/32outのオーディオ・インターフェイス機能を装備
ミキサーの音質の違いについて
これについては難しいところがありますが、「百聞は一見に如かず」ということで、比較音源を用意してみましたので、ずばり聴いてみてください!!
いかがでしたでしょうか。
今回は「ミキサーとは?」という所から、種類、それぞれのメリット、デメリットも含め、ご紹介させていただきました。ミキサーを選ぶ際の判断材料の足しになれば幸いです!!