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デジタルミキサーのオートミキシングとは?

2022-08-30

テーマ:How to

オートミキサー(自動マイクミキサー)は、マイクを使用していないときに、マイクの音声信号の音量レベルを自動的に下げるミキシングツールです。これは、複数のマイクを同時に使用している場合に特に有効で、意図しないノイズを減らせます。今回は、デジタルミキサーQSC TouchMix-30 Proのオートミキサー機能の仕組みについて説明します。

オートミキサーの必要性

オートミキサーは、主に放送局でのパネルディスカッションや会議、セミナーなどのスピーチ用途に使用されます。また、劇場公演では俳優のワイヤレスマイクにも使用されます。さらに、裁判所や市役所の会議室のように、ミキシング・エンジニアが常時いない場所でも、オートミキサーは使用されています。

技量が高いミキシング・エンジニアであっても、フリーディスカッションにおいて、次にどの参加者が発言するかを完璧に予測するのは困難です。エンジニアが迅速な対応ができないため、パネリストによる突然の発言が拾われなかったり、言葉の始まりが欠落したりします。適切に調整されたオートミキサーは、発言していないパネリストの音量レベルを下げ、発言するパネリストへゲインを割り当てを自動的に行います。オートミキサーは、ハウリングを抑え、パネリストが紙をめくる音や空調音などの外来ノイズを抑え、一人の発言を複数のマイクが拾ったときに発生するコムフィルタの動作を低減して音質を向上させます。

オートミキサーは音声用途に適していますが、音楽演奏のミキシングに使用するには限界があります。オートミキサーでバンドをミックスしようとすると、満足のいく結果は得るのは難しいでしょう。しかし、ホーンセクションやバッキングボーカルなどであれば、オートミキサーを使うと良い結果が得られるという見解もあります。

どのように機能するか

オートミキサーは、複数の音源をそれぞれのレベルに応じてバランスを取り、様々な信号レベルを素早く自動調整します。

TouchMix-30 Pro デジタルミキサーは、割り当てられたチャンネルの信号レベルを比較し、どの人(または複数の人)が現在話しているかを判断します。チャンネルを制御し、話をしているチャンネルにはより多くのゲインを、話をしていないチャンネルには少ないゲインを割り当てます。

オートミキサーの重要なパラメータの1つに、最大減衰量があります。これは、基本的にチャンネルにどの程度の減衰が適用されるかを決めるしきい値です。初期設定の- 60 dBでは、オートミキサーはオートミックスに含まれるすべてのチャンネルに最大60 dBの減衰を適用します。減衰量を大きくすると、ノイズ量は少なくなります。スピーチ用途では、デフォルトの-60 dBが標準です。

QSC TouchMix-30 Proデジタルミキサーは、独立した2つのオートミキサーを搭載しています。

音楽用途の場合、オートミキサーは最大減衰量を60 dBよりかなり低く、通常3 dBから6 dBの間に設定すると最も効果的に機能します。例えば、フルホーンセクションでオートミキシングを使用し、その楽器グループ内で一定の音量レベルを維持する場合、適切な最大減衰量は3 dBです。すべてのミュージシャンが演奏しているとき、それぞれのチャンネルは3 dBずつ減衰されます。そして、あるプレイヤーがソロをとるとき、オートミキサーはそのチャンネルのゲインを上げ、ミックスエンジニアがソリストのためにレベルを上げているのと同じ効果をもたらします。

実際のゲイン調整

典型的なパネルディスカッションの構成を見てみましょう。下図では、4人の話し手がいますが、誰も発言していません。各話し手のマイクは、60 dBレベルの周囲ノイズを拾っています。各マイクからの信号は同じなので、すべてのチャンネルが6dB減衰しています。

次の図では、最初の話し手が話し始めたとき、そのマイクレベルが15 dB増加しています。オートミキサーは発言者のチャンネルの減衰を止め、他の3つのチャンネルのゲインを15 dB減衰させます。

次に話し手1と3が同時に話している場合、オートミキサーは1と3に3dBの減衰をかけ、発言者2と4をさらに減衰させます。

その結果、すべてのマイクのゲインの合計が一定となり、スピーカーから聞こえる周囲ノイズも一定に抑えられています。さらに、4つのマイクの内、どれかは必ず減衰するため、ハウリングの可能性も大幅に低減されます。

2つのオートミキサーを使う

先程は、4人の話し手がいる一般的なパネルディスカッションにオートミキサーを使う例について説明しましたが、もっと多くの話し手がいて、プレゼンテーションのスキルにばらつきがあるような場合も多くあります。よくある例としては、4人のプロのジャーナリストが4人のゲストに話をするテレビ番組があります。2つの独立したオートミキサーを使用すると、各話し手のグループに異なる設定を適用できます。

曲の演奏では、ホーンセクションとバックボーカルのレベルを管理するために、2つの独立したオートミキサーを準備すると、それぞれに必要な設定ができるため、非常に便利です。TouchMix-30 Proは、24の入力チャンネルをグループ化できる2つの独立したオートミキサーを標準装備しています。2つ以内のオートミキサーを必要とするあらゆる用途に対応できます。

まとめ

オートミキサーは、会議、プレゼンテーション、パネルディスカッションなど、複数の話し手と複数のマイクが存在する場面に多く使用されています。オートミキサーは、複数のマイクが1人または複数の話し手をピックアップする際に発生するコムフィルタの動作を低減して、ハウリングや外来ノイズを低減し、音質を向上させます。オートミキシングの詳細と、そのパラメータ調整方法については、こちら2部構成のトレーニングビデオ(Part 1 / Part 2)をご覧ください。

では、オートミキシングをお楽しみください。

この記事はQSCによるWhat is Auto Mixing on a Digital Mixer?の翻訳です。

Christophe Anet

Christophe Anetは、電気音響エンジニアであり、QSC Live Soundのシニア・プロダクト・マーケティング・マネージャーです。長年にわたり音響への情熱を持ち、世界中のレコーディングスタジオの設計、音響心理学の講義、レコーディングスタジオのコントロールルームの調整などを行ってきました。ギターを弾いていない時は、スイスアルプスでロッククライミングをするか、大自然の中で水彩画を描いています。

 
 
 
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