昨今のPA事情を考えると、デジタルミキサーは外せません。業務で使用するプロ用機器をはじめ、ライトユーザーでも手軽に使える低価格なモデルも増えてきました。しかしながら、デジタルミキサーと聞くだけで身構えてしまうこともあるかもしれません。むしろライトユーザーの方にこそデジタルミキサーを使用し利便性を知っていただき、より裾野が広がってほしいと願っております。
前置きはこのくらいとして、初めに、ミキサー本体とハードウェアについて説明していきます。次回オーディオネットワーキング編も準備していますので、少しでも製品選びの参考になれば幸いです。
1. デジタルミキサーの定義
デジタルミキサーの定義を考えるうえで、従来のアナログミキサーと比較してどんな違いがあるのでしょうか。アナログミキサーとの違いはこの2つです。
① 軽量、コンパクト
② 音声デジタル伝送可能
それぞれの違いについて考えていきます。
① 軽量、コンパクト
従来のアナログミキサーと言えば……

上記画像のように、ディスプレイ(コントロールスクリーン)等はなく、目に見えているツマミ/フェーダーのみでコントロールしていきます。シンプルで分かりやすい反面、多チャンネルで使用したい場面では、そのCH数分の大きさのミキサーが必要となります。
30CHのミキサーとなると……

上記画像のようにサイズも重量も大きくなるため、設置場所や移動の問題などを抱えることになります。
デジタルミキサーでは、CHコントロールを階層化できます。見た目が16CHでも2階層として32CH分を操作でき、BUSやAUXOUTのコントロールも階層化されたフェーダーでコントロールできます。EQコントロールやDSPコントロールに関しても1つのディスプレイ上で操作可能で、省スペースなうえ視覚的に状態を確認することができます。

DM20の例です、8CH分のフェーダーですが、階層化されておりSPDIFとUSBの入力を含めると最大20CHの入力制御が可能です。

X32の例です。画像はCH毎のHOME画面、EQの他DSP機能も1ディスプレイで調整が可能となっています。
これによりサイズのコンパクト化、軽量化が可能となり、設置場所や移動の問題が少なくなります。
② 音声デジタル伝送可能
次に音声信号のデジタル化による、伝送時のノイズや音質劣化等がなくなることです。
さらにLANケーブルやXLRケーブル(AES/EBU)、光デジタルケーブル(OPTICAL、ADAT)を使用しますので、1本のケーブルで多チャンネルの音声信号を伝送可能なため、現場の配線トラブルが少なくなります。
これまでのアナログミキサーでは1CHに1本のケーブルが必要でしたので、ケーブルにかかる経費、配線の煩雑さを考えるとやはりコスパが良いと感じます。
(後ほどオーディオネットワーキング編で、デジタル音声伝送のお話には触れますので、少しお待ちください。)
ラインナップ
デジタルミキサーのラインナップを一部ですがご紹介します。
大まかな分類で考えますと、ミキサー本体自身にディスプレイ(コントロール画面)が搭載されているか、リモートコントロールなのかで大きく分類されます。
ディスプレイ搭載型
CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / DM20 デジタルミキサー モーターフェーダー
QSC ( キューエスシー ) / TouchMix-8 デジタルミキサー
BEHRINGER ( ベリンガー ) / X32 デジタルミキサー
リモートコントロール型
Soundcraft ( サウンドクラフト ) / Ui24R Wi-Fi コントロール・デジタルミキサー 24ch
BEHRINGER ( ベリンガー ) / X AIR XR18 リモートコントロール・デジタルミキサー
昨今では、アナログミキサーの拡張機能として、USBオーディオインターフェイス内蔵モデル、スマートフォン等でリモートコントロール可能なモデル等、ハイブリッドモデルもあり、それらも含めるとデジタルミキサーの裾野は拡大していると言えます。
アナログミキサーハイブリッド型
ZOOM ( ズーム ) / LiveTrak L-8 配信向けデジタルミキサー / レコーダー
2. ステージボックス・オプションカードとは?
デジタルミキサー本体について、ここまでお話しましたが、拡張機能としてステージボックスやオプションカードと呼ばれるものが存在します。
それぞれの機能と特徴を説明し、今回のハードウェア編は締めくくりたいと思います。
ステージボックスとは
いわゆる入出力端子の拡張機能を持つボックスです、デジタル伝送を基本とし、デジタルミキサーが遠い位置にある場合でも、デジタルケーブル1本で多チャンネルの信号伝送が可能となり、広いステージやPAブースが遠い位置でも一つのミキサーでコントロールを集約することができます。メーカー毎に対応しているミキサーが決まっているので、適切な組み合わせを選択しましょう。
■ ステージボックスのラインナップ
BEHRINGER ( ベリンガー ) / S32 デジタルステージボックス
Soundcraft ( サウンドクラフト ) / Mini Stagebox 32R ステージボックス
オプションカードとは
オーディオネットワーキング編で詳しいお話はしますが、デジタル伝送においては規格がいくつか存在していて、その規格を揃えるためのオプションカードが各メーカーから販売されています。これによってDANTEやMADIといったそれぞれの規格に合わせてデジタルミキサーをセットアップできるため、さまざまな環境に対応ができるようになっています。
■ オプションカードのラインナップ
BEHRINGER ( ベリンガー ) / X-DANTE X32用オプションカード
Soundcraft ( サウンドクラフト ) / 32CH MADI + 32CH USB Si Option card
最後に
ここまでハードウェアの観点から、デジタルミキサーを説明してきました。今後も発展していくカテゴリーで、今後はデジタルミキサーが主流になってきます。より多くの方にデジタルミキサーの利便性を知っていただければ幸いです。