音の拡がりや生演奏を聴いているような臨場感あるサウンドで人気の「開放型ヘッドホン」。室内での音楽鑑賞をはじめ、レコーディングなど音楽制作でもモニターヘッドホンとしてお馴染みですね。各人気ブランドがラインナップする開放型ヘッドホンの代表モデルを中心にご紹介。構造や選び方、特徴についても解説するのでぜひヘッドホン選びの参考にしてみてください。
目次
開放型ヘッドホンとは
開放型ヘッドホンとは、別名オープン型、またはオープンエアとも呼ばれており、ヘッドホンのハウジング部分がメッシュ状の構造になっているのが大きな特徴。ドライバーユニットが出力する音がハウジングによって塞がらないため、開放型特有の音抜けの良い立体的な音場、自然でクリアな音質が特徴です。一方、音漏れする構造になっているため、自宅やスタジオなど室内で使用するのが基本。電車や飛行機などの公共機関、図書館や飲食店など、周りに迷惑がかかる場所では使用を控えることが大切です。
開放型ヘッドホンと密閉型ヘッドホンの違い
開放型ヘッドホンは上記の通り、ハウジング部分がメッシュ状になっているのが主な特徴。音質も抜けが良く立体的な音を楽しむことができます。一方で音が漏れてしまう分、低音域の量感はどちらかというと控えめな傾向。ダンスミュージック系やハードロック系よりも、ポップス、クラシック、ジャズ、歌ものなどの方がどちらかというと得意です。
密閉型ヘッドホンは、ハウジング部分が塞がれていて、音漏れしにくい構造になっています。空間表現力、音抜けの良さや臨場感では開放型に劣りがちな一方、開放型には無いしっかりとした音圧、豊かな低音、音の情報量の多さは密閉型ヘッドホンが得意とするところ。どちらが優れているというよりも、開放型・密閉型によってそれぞれの特徴があるので、どういった用途で使うか、どんな場所で使うかなどを考慮して選択するのが良いと思います。
開放型ヘッドホンの選び方
開放型ヘッドホンとは言っても形や音質、仕様もさまざまです。一概には言えませんが参考までに、選ぶときのポイントを挙げてみたいと思います。
装着感
開放型ヘッドホンというと、基本的には室内でじっくりと音楽を聴くことが多い気がします。そのため装着感は音質の良し悪しと同じくらいこだわりたいポイント。イヤーパッドのタイプでいうと、主に耳の上に乗る「オンイヤー型」と耳を覆うように装着する「オーバーイヤー型」があります。
オンイヤー型はどちらかというと下位グレードのヘッドホンだったり、ポータブル向けのヘッドホンに多いですが、耳に乗っかる分蒸れたり、耳が疲れやすい傾向にあります。
長時間でも快適にリスニングをしたい場合は、耳を覆う「オーバーイヤー型」がおすすめ。普段からメガネを着用している人は、メガネとイヤーパッドの干渉具合にも気を付けたいところです。
ケーブル
ヘッドホンの宿敵といえば「断線」。大切に使っていてもどうしても皮膜が破れたり、ちょっとしたきっかけでプラグの根元あたりの接触が悪くなったりなど、ヘッドホンを使ったことのある人なら誰しもが経験するのでは。
着脱式ケーブルを採用するヘッドホンを選択すると、そんな断線の心配もかなり軽減できます。万が一断線しても、ケーブルを買い替えれば復活。さらに、サードパーティのケーブルに買い替えることで音質の改善が期待できたり、持ち運びや保管がしやすくなったりと、着脱式ケーブルだといろいろとメリットがあると思います。
音質
開放型でも音のキャラクターはさまざま。先述ほど「開放型は低音再生が苦手」というようなことを述べましたが、開放型でも低音の厚みがしっかりしたモデルももちろんあります。その他にも、高音域の繊細さがピカイチなモデル、ボーカルの再現が得意なモデルなど、開放型とは言えど音質はさまざまです。
WEBに掲載されているユーザーレビューやショップレビュー、その他にもブログなども参考にしつつ、可能であれば試聴してから選ぶのがやはりベストですね。
開放型ヘッドホン おすすめ5選
開放型ヘッドホンの特徴や選び方について解説してきましたが、それではここからはサウンドハウスの扱うヘッドホンの中でも人気、もしくは個人的におすすめしたい開放型ヘッドホンをご紹介します。
1. AKG / K712PRO
まずは、開放型ヘッドホンといえばAKG(エーケージー、アーカーゲー)。オーストリア・ウィーンで誕生し、プロ用のマイクやヘッドホンのトップブランドとして、プロミュージシャンやスタジオエンジニア、オーディオファンからも人気のあるブランド。
K712PROは、そんなAKG開放型ヘッドホンのリファレンスモデルとなる、AKGの開放型ヘッドホンを代表するモデル。ブラックを基調にしたシックなカラーリングながらもオレンジの配色が目を惹く、見た目もかっこいいヘッドホン。
イヤーパッドは耳を覆う円形のオーバーイヤータイプ。装着するとわかるのがボディの軽量さと装着感の良さ。装着していても重さの気にならず、長時間の使用にも最適です。
音質はなんともいってもAKGらしい高解像度な音質、情報量の多さ、繊細な中高域の再現性の高さがポイント。ストリングスの細かなニュアンスやボーカルの息遣い、空間表現を非常に上手に再生してくれます。
2. SENNHEISER / HD490PRO
SENNHEISER(ゼンハイザー)は、1945年にドイツで創業された音響機器メーカー。こちらもプロ用マイク、ヘッドホンで高い人気を得ているブランドです。開放型ヘッドホンを初めて発売したのがSENNHEISERと言われており、その世界初のヘッドホンHD414は、日本・世界を代表するテクノ・音楽グループのYMOが使用していたことでも有名ですね。
そのSENNHEISERが手掛ける最新の開放型モニターヘッドホンがHD490PRO。
HD490PROには、ケーブルやイヤーパッドが付属した「HD490PRO PLUS」もラインナップされています。HD490PROの特徴といえば、その楕円形の大型イヤーパッド。ヘッドホン本体も軽量なので、耳をすっぽりと覆うように装着することができ、フィット感も抜群です。音質は、開放型とは思えない豊かな低音が印象的。とはいっても、豊かな低音に負けない存在感のある中音域、高音域は非常に自然でクリア。音の解像度、情報量の多さも秀逸でバランスの良さが際立っています。開放型らしい立体的な音質と、密閉型にも劣らない十分な低音がほしい!という人は、これ一択かも。
3. beyerdynamic / DT900PRO X
こちらもSENNHEISER同様、ドイツで誕生した音響機器ブランドbeyerdynamic(ベイヤーダイナミック)。どちらかというと欧米での知名度が高いブランドですが、某専門誌やミュージシャンのPVなどでも、目にする機会が多くなってきました。
紹介するDT900PRO Xは、beyerdynamicミドルグレードに位置するモニターヘッドホン。上位機種のサウンドを継承する独自の「テスラドライバー」を採用し、beyerdynamicならではの、歪みのないクリアなサウンド。原音を忠実に再現する原音再生力の高さがポイント。装着感は、ややしっかりめのフィット感。パッケージから出したばかりの時は、側圧がタイトに感じる人もいるかもしれませんが、使用していると馴染んでくると思います。なお、イヤーパッドが立体裁断なので、側頭部に隙間なく沿うようにフィット。DT900PRO Xが出力する音を耳にしっかりと伝えるので、情報量の豊かさ、原音の表情をしっかりと聴き取ることができます。
音の印象としては、癖のない典型的なモニターヘッドホンらしいサウンド。AKGやSENNHEISERとは違い、音の輪郭がはっきりとしていて音の粒が細かく、良い意味で硬さのあるキャラクターの音質のように感じられました。
楽曲全体のバランスやパートのニュアンス、表情などをしっかりと聴き取りたい人には、かなりハマるヘッドホンではないでしょうか。
4. SONY / MDR-MV1
SONY(ソニー)といえば、誰もが知っているのが「MDR-CD900ST」。今回紹介するのは、SONY初となる開放型モニターヘッドホンのMDR-MV1。空間表現力にこだわり、ソニーの開発した360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ)に対応するヘッドホン。360度に広がる音に包まれているように聞こえ、もはやヘッドホンとは思えない、新しい音楽体験を実現するモデルです。音楽制作用としてはもちろん、音楽鑑賞、映画鑑賞としても十分に性能を発揮してくれます。
重さもわずか223gと非常に軽量。イヤーパッドもスエード調の肌触りの良い素材を採用。デザインもどこかMDR-CD900ST、MDR-7506あたりを踏襲した感じもあり、ずっとMDR-CD900STを使用してきた人にも、試してもらいたいヘッドホンです。
5. Austrian Audio / Hi-X65
Austrian Audio(オーストリアン・オーディオ)は、2017年にオーストリア・ウィーンで創業されたオーディオブランド。オーストリア・ウィーンといえばAKGと同じですが、それもそのはず。Austrian Audioは、AKGに在籍していたメンバーが立ち上げたブランドです。しかし、見た目も音質もAKGとは異なる、Austrian Audioらしい個性あふれる設計となっています。
Hi-X65は、Austrian Audio開放型ヘッドホンの上位モデル。どこか堅剛で現代的なデザインに感じられますが、頭部に沿うように設計されたデザインは装着感も良く、頭にぴったりとフィット。イヤーパッドは低反発フォームを採用し、モッチリとした肌触りが特徴です。ヘッドバンドは軽量なメタル素材のため、ハードなスタジオワークにも耐える頑丈なつくり。現場でガンガン使いたい人でも安心できそうです。
音質面は、原音に忠実でニュートラルなサウンド。解像度も高くアコースティングギターの細かなタッチやシンバルやバスドラムの残響音もリアルに再現してくれます。
見た目の好みは分かれそうですが、思った以上に作りの良さと上位機種ならではの高級感も感じられます。他の人と被りたくない人にもおすすめできる一台ですね。
いかがでしたでしょうか?
上記のヘッドホン以外にも良いヘッドホンはたくさんありますが、ぜひ参考にしてみてください!