PAシステムで、パワーアンプとスピーカー間にギターシールドを接続される方を、いまだに見かけることがあります。
今回は、改めて初心者のかた向けではありますが、スピーカーケーブルとギターシールドにどのような違いがあるのか、まとめました。
■ 目次
1. スピーカーケーブルの特徴
スピーカーケーブルとは
パワーアンプとスピーカーを接続するためのケーブルで、ローインピーダンスで大きなパワー(大きな電力)を持った音声信号(電気信号)を受け渡しします。
そのため、大きな電流を安全かつ損失を少なく受け渡すことを目的として設計されています。
いくつか定番どころのスピーカーケーブルをご紹介します。
BELDEN ( ベルデン ) / 8470 スピーカーケーブル
CANARE ( カナレ ) / 4S6 スピーカーケーブル
スピーカーケーブル考察
スピーカーケーブルは2芯または4芯が主流で、外部導体(いわゆるシールド部分)はありません。中心導体の断面積は14-20AWG程度が多く見られます。(AWGは数字が小さいほど面積が大きくなります。)最大電流ですが、BELDEN/8470では、18Aとかなり大電流まで耐えられる仕様になっています。4芯のケーブルであれば、スピコン端子の+1/-1、+2/-2の4極ピンアサインでも対応できますし、その他の用途にも対応できます。実際にケーブルを触った感触としては、どちらのケーブルもワイヤリングは硬めで芯線自体がかなり丈夫な印象を受けました。
2. ギターシールドの特徴
ギターシールドとは
エレキギターを中心とした楽器から楽器用アンプまでを接続するためのケーブルです。エレキギターを筆頭にハイインピーダンスで微弱な音声信号(電気信号)を受け渡しします。微弱な信号は外来ノイズの影響を受けやすいため、シールド(外部導体)処理がなされており、より優れた音質で信号を届けることができます。またギターシールドは、演奏時のプレイアビリティに配慮された工夫がなされているのも特徴です。
いくつか定番どころのギターシールドをご紹介します。
BELDEN ( ベルデン ) / 8412 ギターシールド
< スペックまとめ >
- 線芯数: 1
- 導体断面積: 22AWG(GS4) 18AWG(GS6)
- 外部導体: 導電ビニル及びOFC(無酸素銅)
- 耐電圧: AC500V 一分間 異常なし
形状 | 型名 | 販売 単位 |
外径 | 質量 | 中心導体 | 絶縁体 | 外部導体 | 電気特性 | |||||||||
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導体断面積 (AWG) 導体構成 |
外径 | 外径 | シールド構成 編組密度 |
内部導体 抵抗 |
外部導体 抵抗 |
静電 容量 |
|||||||||||
m | mm | kg /100m |
mm2 (AWG) 本/mm |
mm | mm | mm/持/打(%) | Ω/100m | Ω/100m | pF/m | ||||||||
シースカラー /
|
GS-4 | 200 | 4.0 | 2.7 | 0.39 (22) 50/0.1(OFC) |
0.82 | 1.82 | 導電ビニル + 0.1(OFC)/6/16 (93%以上) |
4.7 | 3.1 | - | ||||||
GS-6 | 100 200 |
5.8 | 5.0 | 1.0 (18) 127/0.1(OFC) |
1.3 | 3.0 | 導電ビニル + 0.1(OFC)/8/16 (92%以上) |
1.8 | 2.5 | 160 |
ギターシールド考察
スピーカーケーブルと大きく違うのは、外部導体(いわゆるシールド)があるということです。微弱な信号を受け渡すので、このシールド部分があるかないかが重要なファクターになります。導体面積も18-22AWGと、スピーカーケーブルと比較して面積が小さい=線が細い、ということが分かります。最大電流に関して、BELDEN/8412では4Aとなっており、やはり流せる最大電流はスピーカーケーブルに比べ、1/4程度でしょうか。ケーブルを実際に触った感触として、スピーカーケーブルよりより柔軟性があり、取り扱いしやすく、演奏パフォーマンスにも影響が出にくいようプレイアビリティにも配慮されていました。
3. それぞれ誤った用途で使用した場合
パワーアンプとスピーカー間に、ギターシールドを接続した場合
これはギターシールドの(電気的)耐久性を考えると、微弱な信号を受け渡すことが目的で設計されていますので、大きな電流が流れることは想定されていません。パワーアンプからの大電力の信号を受け続けると、ギターシールドで受けきれない電力は、熱へ変換されていきます。ギターシールドに熱エネルギーが蓄積されると、最悪のケースではギターシールドが焼けるような事態が想定されます。従って、必ずスピーカーケーブルを使用する必要があります。
ギターとギターアンプ間に、スピーカーケーブルを接続した場合
スピーカーケーブルは、ギターからの微弱な電気信号を受け渡すことに問題はありません。しかしながら、ギターシールドはシールド(外部導体)がありますが、スピーカーケーブルにはシールドがありません。従って、外来ノイズの影響や反対にケーブルから発生するノイズが他の機器に影響を与える恐れがあります。やはり、この場合もギターシールドを使うことが有利であることは間違いありません。
ということで、用途にあわせた適材適所なケーブルを使うことはとても重要です。適切な使用方法が、それぞれの機器の性能を引き出すポイントになりますので、参考にしていただければと思います。