誰でも気軽に始めることができるようになった生配信やゲーム実況。しかし誰でもできるがゆえに、快適に視聴できない番組が多くあることも事実。映像のグレードアップは気づきやすい改善点ですが、音質のグレードアップは見落とされていることが多いようです。
今回は、配信初心者の方や動画制作者の方に向けて、視聴者をひきつけるために音質を改善する方法をお伝えします!

目次
- トークの音質が視聴者の満足度に直結!? ~聞き取りやすい音声の重要性~
- 外部マイクの使用で大幅な音質アップ! ~USBマイクとコンデンサーマイク+オーディオインターフェイス~
- マイクの持つ指向性と設置場所 ~向きと距離で音が変わる~
- 配信前の音質調整 ~OBSなどのソフトで音質を調整する方法~
トークの音質が視聴者の満足度に直結!?〜聞き取りやすい音声の重要性〜
話者の声の音質について意識したことはありますか?テレビやラジオ、有名YouTuberの番組では当たり前のようにケアされていますが、意識して聞いたことはないかもしれません。しかし現実的には、話者の音質が良いだけで「良い番組」と感じますし、音質が悪いと「質の低い番組」に感じてしまうのです。
画質に例えるとわかりやすいのではないでしょうか。
YouTubeや配信を見ている時にインターネット回線が不安定になると、画像の質が悪くなり、不鮮明になります。すると途端に意識が現実に戻ってしまい、不快に感じてしまいます。また、ライティングが不十分な場合やカメラの質が悪い場合も不快に感じるはずです。
音声に関しても同じことが言えます。話者の声が歪んでいる、聞き取りにくいなど質の低い状態が続くと無意識に「不快」と感じ、視聴をやめてしまう可能性が高くなります。
視聴者の皆さんは、テレビなどの影響で「質の良い番組」に慣れているのです。

<プロの収録現場ではカメラだけでなく音響機器も質が高いのです>
テレビ品質までは難しくとも、「聞き取りやすい快適な音声」はある程度の機器を揃えることで誰でも実現することができます。
外部マイクの使用で大幅な音質アップ! 〜コンデンサーマイク+オーディオインターフェイスとUSBマイク〜
「聞き取りやすい快適な音声」を手に入れる第一歩は、外部マイクを使用することです。スマートフォンやパソコン(以下、配信端末)にはマイクが内蔵されており、そのまま生配信や番組制作に使用することができます。しかし内蔵マイクはあくまで簡易的なマイク。限界が低く番組制作で使用されるマイクとは大きく異なりますから、音質も同じものにはなりません。まずは外部マイクを導入して音質改善を図ってみましょう。
導入方法は大きく分けて2種類あります。
コンデンサーマイク+オーディオインターフェイスを使用する
外部マイクの種類は動作原理からダイナミックマイクとコンデンサーマイクに分けられます。手軽に高音質を感じられるのは後者のコンデンサーマイクで、繊細で聞き取りやすい音質が特徴です。

<コンデンサーマイクの例 SENNHEISER MK 4>
しかしコンデンサーマイク(外部マイク)は業務用のアナログ音声出力端子(XLR端子)を介して音声出力されるため、配信端末にはそのまま接続できません。

<MK 4のXLRと呼ばれる出力端子>
従って、外部マイクを配信端末に接続するには、さらにオーディオインターフェイスと呼ばれる別の音響機器が必要になります。USBなどで配信端末と接続します。業務用XLR端子とUSBの通訳をする機器だと考えれば良いでしょう。

<PCにマイクを接続するにはオーディオインターフェイスが必要です>
コンデンサーマイク+オーディオインターフェイスの利点は、発展性が高いことです。マイクまたはオーディオインターフェイス個々のグレードアップが可能であるため、スキルアップにあわせてマイクをハイエンドのモデルに買い替えていくことができます。
また、オーディオインターフェイスをグレードアップすることで、放送局などのプロフェッショナル環境に迫る、さらなる高音質を手に入れることができます。歌配信や歌ってみた、楽器録音など、生配信以外の音楽制作用途を考えている場合はコンデンサーマイク+オーディオインターフェイスの組み合わせが良いでしょう。

<コンデンサーマイク+オーディオインターフェイスは音楽制作兼用に適しています>
一方で使用に際してはある程度音響機器の知識が必要になります。機器が増える分トラブルも増えますので、知識にあまり自信がなく不安な場合は後述のUSBマイクから試してみることをおすすめします。
USBマイクを使用する
コンデンサーマイク+オーディオインターフェイスをひとつの筐体に収めた音響機器がUSBマイクです。USBケーブルを配信端末に接続するだけで簡単に使用することができます。あまりに簡単で説明することがないほどです。
以下はSENNHEISERのUSBマイク「Profile USB Microphone」ですが、本体に必要なノブやスイッチが搭載されています。

<USBマイクはオーディオインターフェイスとマイクが一体になっています>
高音質配信を目指す場合は、適切な音量(入力音量)設定も必要です。大きすぎるとバリバリとした原音が破壊された音になってしまいます。これは歪んだ音と呼ばれ、音を扱う上での最大のタブーとも言えるでしょう。小さすぎても音が良くないので、小さすぎず、大きすぎず、適切な設定をすることが重要です。
USBマイクではProfile USB Microphoneのように本体に備えられたノブで音量を簡単に設定することができます。Profile USB Microphoneの場合は、大きすぎるとLEDの色がオレンジに変わるので、最適な音量設定がすぐにわかるようになっています。声を出しながらつまみを回していき、大きい声のときにLEDが黄色くなるか、ならないか程度の位置に設定すると良いでしょう。

<ミュートまたは音量が大きすぎると色が変わるようになっています>
マイクの持つ指向性と設置場所 〜向きと距離で音が変わる〜
高音質化を図る場合、マイクそのものを外部マイクに変えるだけでなく、設置環境や設置方法にも気を配る必要があります。設置環境や設置方法の改善は配信端末の内蔵マイクでも効果がありますので、試してみると良いでしょう。
音を拾う向き「指向性」
すべてのマイクが全方向の音を均等に収音するわけではなく、マイクによって「得意な向き」があり、これを指向性と呼びます。配信端末の内蔵マイクは多くの場合で無指向性(全指向性)と呼ばれる、全方向の音を均等に収音するマイクが使われます。
無指向性のマイクは声だけでなく反対側から来ている音も均等に収音してしまうため、音に含まれる話者の声の割合が低くなってしまいます。つまり、会話の収録には向いていないのです。

<スマートフォンやPCは無指向性マイクが多く使われます>
会話の収録に適しているのは特定の方向の音を中心に収音する単一指向性(カーディオイド)と呼ばれるタイプのマイクです。マイクの購入時には単一指向性またはカーディオイドの記載があるか確認しましょう。
また、外部マイクの場合はマイクの正面がマイクごとに異なります。マイクの正面を間違えると音質が大きく変わってしまうので、使用前によく確認しておきましょう。

<マイクの正面を使用前に確認しましょう。Profile, MD 445, MK 4>
正面が確認できたら、使用時はマイクを口の方向に向けることを忘れずに。単一指向性マイクは正しい方向を向けるだけで音質が大きく向上します。「Profile USB Microphone」のようにチルト機構があれば利用しましょう。
口からの距離と設置環境
距離も音質に大きく影響します。マイクと口の距離が近くなることで、必然的に音全体に閉める声の割合が大きくなり、周囲のノイズの割合が低くなります。これだけで、音質の向上を見込めます。

<口に近づけるだけでノイズが減っていい音になります>
加えて、距離が近くなることで「近接効果」と呼ばれる低音増強効果が生まれます。マイクに近づくと低音が多めの音になるため、近くで喋っているようなリアリティのある音になります。低域が魅力の男性の場合は大きな効果があるでしょう。
なお、カラオケなどでおなじみのハンドマイクにおいては、至近距離で使用することが前提となっているため、予め低音が少なめに調整されているマイクがほとんどです。つまり、ハンドマイクの場合は至近距離以外では低域の少ない音になってしまうため注意が必要です。
最適な向きと設置場所を得るためには、マイクスタンドを用いることが必要です。マイクの購入時にはマイクスタンドを一緒に購入しましょう。「Profile USB Microphone」の場合は、Streaming Setというブームアーム(マイクスタンド付き)セットもあります。音楽制作用途の場合は設置の柔軟性が高いマイクスタンドが便利ですが、配信用途であればスマートに常設できるブームアームが便利でしょう。

<デスクトップ使用ではブームアームを使うと便利です>
なお、ノイズだけでなく、部屋の反響音もクリアな音声の障害となります。吸音材を壁に張っていくとノイズが抑えられ、クリアな音になります。
配信前の音質調整 〜OBSなどのソフトで音質を調整する方法〜
最後に、配信ソフト側での音質調整を紹介しましょう。配信の定番ソフトOBSでは「フィルタ」という機能で音質や画質の補正を行うことができます。不要な音をカットして特性を調整するイコライザー、音量の大小を整えるコンプレッサーなどの「エフェクト」を使用して音を整えることができます。これらのエフェクトはプラグイン形式と呼ばれ、サードパーティから販売されているエフェクトを好きなように追加することができます。
ProfileをOBSで使用する場合は、「音声入力キャプチャ」で「Sennheiser Profile」を選択すればそのまま使用可能。音質調整する場合は、音声入力キャプチャの「フィルタ」で、イコライザーやコンプレッサーなどのエフェクトを選択して調整します。

<OBSで音質調整することも可能です>
ただしエフェクトによる音質調整は技術を必要とします。エフェクトでの調整が無料で簡単に見えてしまいますが、実際はマイクの変更や置き場所を調整するほうが手軽で高い効果が得られます。
SENNHEISER Profile Streaming Setは、これだけで配信環境を大きくグレードアップできるUSBマイクセットです。Streaming Setで視聴者をひきつける配信環境を手に入れてみてはいかがでしょうか。