
<MKE 400-Ⅱ>
音楽制作の世界では絶大な知名度と実績を誇るドイツの老舗マイクメーカー、SENNHEISER。同社からは音楽制作や舞台音響向けの製品のほか、撮影用のマイクも多くリリースされています。
「MKE 400-Ⅱ」はカメラ向けマイクの中でも中堅に位置づけられる製品。どのような特徴を持ち、どのような用途に向いているのかレビューしてみます。
SENNHEISER ( ゼンハイザー ) / MKE400-II
マイクユニットに隠されたさまざまな特徴
「MKE 400-Ⅱ」は、動画撮影に最適なカメラ用のモノラルマイク。コールドシューに装着でき、3.5mmマイク入力があるカメラまたはスマートフォンで使用できます。

<付属ケーブルで一眼レフに接続した>
さまざまな特徴がありますが、ノイズ除去に関わる点を挙げてみます。
まずは指向性の強いマイクユニットが特徴として挙げられます。
マイクは音をよく拾う方向と拾わない方向があり、これを指向性と呼びます。スマートフォンカメラにおいては指向性を持たない「無指向性」というマイクもよく使われています。

<内部に備えられた音響干渉管>
これに対し「MKE 400-Ⅱ」は、カメラを向けた方向の音声を集中的に拾うことができる超指向性タイプで、インタビュー収録やVlogなどカメラを向けた人のトーク収録で効果を発揮。正面の声を集中的に収音するため、トークが聞き取りやすい音になります。内部のマイクユニット前方に備えた音響干渉管によって、話者の声にフォーカスできる鋭い指向性を生み出しています。

<付属のウインドシールドを装着した>
続いての特徴は風防を標準装備していることです。
風は単純ながら頭の痛い問題です。トークを収録しても風の音が大きければ声を聞き取ることができなくなってしまいます。「MKE 400-Ⅱ」はウインドプロテクション(風防)機構を内蔵、風の音を小さく抑えることができます。加えて、ファー付きウインドシールド(ウインドジャマー)も付属。風が強い環境においてはウインドシールドを装着することでさらに風の音を抑えることが可能です。

<ショックアブソーバーがあるので移動しながらの撮影にも強い>
最後はショックアブソーバー(衝撃吸収機能)です。
マイクは筐体を伝ってマイクユニットに伝わってくる音も拾ってしまいます。手で持って移動すれば、歩行による振動、持っている手のこすれ音などがノイズとなって収音されます。「MKE 400-Ⅱ」ではショックアブソーバーを内部に装備し、音響干渉管とマイクユニットはショックアブソーバーで「吊られた」状態になっています。結果、筐体を伝う振動が吸収され、ノイズが減少しています。
実際に使ってみると、カメラ本体のマイクとは全く異なる聞き取りやすい音でトーク収録を行うことができました。特に指向性の鋭さは音を聞くだけですぐに「なるほど」と思える音。録音においては音を綺麗に録音することと同様にノイズを抑えることが重要です。「MKE 400-Ⅱ」は知識がなくても装着するだけでノイズ低減を実現してくれるマイクと言えます。
下位機種MKE 200から差別化された仕様と機能
「MKE 400-Ⅱ」と同じようなマイクとして「MKE 200」というモデルも販売されていますので、違いが気になる人も多いでしょう。重要な違いをまとめてみました。

<本体脇にスイッチを装備>
「MKE 200」では一切スイッチ類が無いのに対し、「MKE 400-Ⅱ」はローカットフィルターとレベル調整スイッチが装備されています。右のローカットスイッチをオンにすると低域をカットできるため、ノイズ低減に効果的。また、左のレベル調整スイッチでカメラにあわせて音量を調整でき、汎用性の向上に貢献します。

<3.5mmプラグのヘッドホン・イヤホンを装着できる>
スイッチ類に加えてヘッドホン端子も装備。音を聞きながら撮影することができます。
カメラはヘッドホン出力を持たない機種もあればヘッドホン音量が不足する機種もあります。「MKE 400-Ⅱ」は70mW(32Ω接続時)という十分な出力のヘッドホンアンプを搭載しているので、十分な音量で撮影されている音を聞くことが可能。音の異変にいち早く気づくことができます。

<左がMKE 400-Ⅱ 右がMKE 200>
最後にマイクの特性の違いを紹介します。
「MKE 400-Ⅱ」の指向性は「MKE 200」より鋭い特性を持ちます。また、音域ごとの収音性能を示す周波数特性について、「MKE 200」は低域が予めカットされているのに対し、「MKE 400-Ⅱ」は低音から高音までフラットな特性。スイッチで可変できるので、トーク収録以外の用途にも使うことができます。
近距離のトーク収録用途、また、機械が苦手という人は「MKE 200」が良さそうです。対して、屋外でさまざまな対象物を収録する用途、汎用性を求める場合は「MKE 400-Ⅱ」が適していると言えるでしょう。「MKE 400-Ⅱ」の仕様と機能は「MKE 200」をカバーできますので、どちらか1台だけ選ぶのであれば「MKE 400-Ⅱ」が良いでしょう。
スマートフォンで収録するならMKE 400-Ⅱ Mobile Kitで
「MKE 400-Ⅱ」と同時に「MKE 400-Ⅱ Mobile Kit」という製品もリリースされています。スマートフォンで収録する場合に最適なセット製品で、SENNHEISER製の堅牢なスマホホルダーとManfrotto Pixiミニ三脚がセットになっています。
SENNHEISER ( ゼンハイザー ) / MKE400-II MOBILE KIT
「MKE 400-Ⅱ Mobile Kit」を使用することで、スマートフォンカメラによる高画質に加えて高音質環境も実現できます。

<iPhoneは変換アダプター経由で接続する>
付属のケーブルは3.5mm TRRSというプラグなので、iPhoneの場合はそのまま接続できません。Lightning-TRRS変換ケーブルを用いて接続できますので、iPhoneで使用する場合はあわせて用意すると良いでしょう。
数え切れないほど多くの特徴を持ちながらも、難しいセッティングは一切不要。カメラに装着すれば低ノイズ環境を手にすることができるオンカメラマイクが「MKE 400-Ⅱ」です。心配せずとも音質はさすが老舗マイクメーカー。全く問題なく、非常にクリアな音質で収録ができました。加えて、数々の特徴により使うだけで低ノイズサウンド。ノイズと必要な音の差はS/N比として表されますが、カメラのマイクや格安マイクと比較すれば一目瞭然の高S/Nサウンドを楽しむことができます。トーク収録をレベルアップしたいビデオグラファーはぜひ使ってみてほしいマイクです。
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