現代のレコードプレーヤーでSP盤レコードを再生できるカートリッジがあるのをご存じでしょうか。
SP盤は、かつて庶民に親しまれていた蓄音機を使用して78回転で再生するアナログレコードです。現代でも一般的な「ヴィニール素材」で作られたレコード盤とは異なり、「シェラック素材」という天然樹脂で作られたレコードです。

戦後ヴィニール素材の33回転、45回転のレコードが主流になってからは、音楽市場からは姿を消していったメディアではありますが、昨今のレコード人気により、その独特な癒やされる音質と、78回転が織りなすエナジー溢れる音の魅力が見直されてきているようです。
さて前回のブログに引き続き、78回転にさえ対応していれば現在のレコードプレーヤーで再生できるSP盤用カートリッジをご紹介しながら、気分が高揚するSP盤を5枚程、ご紹介していきます。
前回のブログ『Shall We シェラック?現代のレコードプレーヤーでSP盤レコードを再生できるカートリッジ!!』
今回も使用するSP盤カートリッジはこちらです!
audio technica ( オーディオテクニカ ) / AT-MONO3/SP SPレコード用カートリッジ
78回転搭載の3スピードのレコードプレーヤーとこのカートリッジさえあれば、手軽にSPレコードを楽しむことができます。 ヘッドシェルへの取り付けも簡単です。
前回は弊社の管楽器担当に曲の解説をしてもらいながら、私のおじいさんが所有していた強烈な音質のクラシックSP盤をお送りしました。
そして今回は打って変わって海外のポピュラー音楽等から奇跡的に(?)生まれた、トランシーでアガるSPレコードをご紹介!今回はアーティストや曲についての資料的な詳細は省き、そのアガり方について各曲触れていきます。
ヴィニール素材のレコード盤と比較して割れやすいSPレコードではありますが、ロック・ポップスファンの方、さらにはパンク系、サバービア系DJの方にとっても変化球のレアグルーヴネタとしてSP盤を楽しむきっかけになれば筆者としてもうれしい限りです。
○ SCAPPA-SCAPPA / GALLO E LA SUA CELEBRE ORCHESTRA
男たちが「ジャンゴ!(?)」と掛け声で盛り上げるポルカパンクなインストです。アーティストクレジットにオーケストラと記載がありますが、かけてみるとサーカス・オルガンと掛け声だけのシンプルなもの。ドラムもベースもないのにこのアッパー度は、当時の録音技術による絶妙な雑味とシェラック素材にとるレコード盤、そして78回転による賜物といえるでしょう。サイコビリーを流すイベントやイギリスのテディ・ボーイがいるようなパブでも血が騒ぎそうな、シェラック・パンクと名付けたい一曲。
○ THE WEDDING SAMBA/XAVIER CUGAT AND HIS ORCHESTRA(Vocal ABBE LANE)
東京キューバーンボーイズに通じる、ボッサ/ラテングルーヴナンバー、1951年ものです。
とは言え一部アビー・レーンという女性ヴォーカリストの歌が入るラウンジテイストです。サバービア/渋谷系仲間の同窓会パーティにもいいかもしれません。
実にファンキーで上品な大人グルーヴ。
ちなみにカップリングB面の”MY SHAWL"は初期ゲンズブールのラテンナンバー好きにも聴いていただきたいインスト。
好みによってはWサイダーな一枚と言えるでしょう。
○ GO ON! GET OUT!/TEX RITTER
映画「真昼の決闘」(High Noon)の主題歌のB面に収録されたノベルティチックなグッドタイム・ミュージックです。
少しボールルームなテイストもあるので、DJとなると使える場面はかなり限られると思います。
しかしノベルティ風ならではの効果音とコーラスは、ハマった時の盛り上がりは凄まじいと思いますので、いざという時のためにケースに忍ばせておきたい一枚。
○ CARIOCA / MARGET CARMEN and HIS DANCE ORCHESTRA
戦前に日本でリリースされたオムニバスアルバム「ダンス・ヒット・メモリーズ」にも収録された中から1曲。
カリプソも少し入ったような高速ボッサ/ラテン・グルーヴ。大昔のダンス・ミュージックとは言えやや辺境な感じもしますが、ジョージィ・フェイムのESSO BESSOをかけるようなDJの方には面白いかもしれません。
○ YODEL BOOGIE/ROSALINE ALLEN AND THE BLACK RIVER RIDERS
もうタイトルからしてイッちゃってる感ある、ヨーデル声で歌うブギー・ミュージック。
ヨーデルというと、歌声にリバーブがかかっているイメージが強いですが、まだリバーブのない時代なのでしょうか、この録音ではナチュラルハイな女性ボーガルが支配する怪しげなアーリー・ダンス・ミュージックです。
酔っぱらった状態でかけて大音量で踊るべし!

さて、それぞれ簡単にですが、大昔に蓄音機で親しまれていたSPレコードの世界をお伝えいたしました。 割れやすかったり、蓄音機でかけると音量が大きかったりするうえ、音量調節もできないハードが故に、今でもアンダーグラウンドなメディアではありますが、 このSP盤カートリッジがあるじゃないですか!
ノスタルジックに楽しめるだけでなく、聴き方によっては音楽の楽しみ方の一つとして、もっと定着していく事を願います。 あなたのお父さん、お爺さんのお家からもSPレコードがいつか出てくるかも知れません。 Shall we シェラック?
