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蠱惑の楽器たち 26.音楽と電気の歴史2 レコード1

2021-12-30

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

レコードの歴史について、ざっくり見ていきたいと思います。年表はレコードの誕生から現在までの系譜です。現在知られている円盤レコードの前にも筒型の蓄音機がありました。今回は蓄音機の前身となるフォノトグラフと初の蓄音機フォノグラフについてです。

■ 1857年 フォノトグラフ(phonautograph)マルタンヴィル

エドワール=レオン・スコット・ド・マルタンヴィル(フランス)が発明したフォノトグラフが、電気的音響装置の前身といえるかもしれません。これは音を記憶する装置で、電気を一切使わず、シリンダーに音を視覚的に記録するものです。音響機器というよりは、音を視覚化するための計測器のようなものです。ただマルタンヴィルは科学者ではなく、会話を記録することに興味を持っていて、速記の延長線上の発想のようです。つまり文字として読めるのが理想であり、音を再現するという発想はなかったようです。そして解剖学からヒントを得てフォノトグラフの構造を考案したようです。

構造としては、鼓膜に相当するダイアフラムを音で振動させ、耳小骨の代わりに豚毛を用いて、シリンダー表面に振動の軌跡を描く構造になっています。上絵では模式的にダイアフラムに針をつけただけですが、実際にはリンク構造にしたりして、先端が左右に振れるように工夫していたようです。

シリンダー表面はランプ煙で黒くし、それを引っ掻き削り取っています。シリンダーの回転は手動です。軸にはネジが切ってあり、回すことで移動し、螺旋状に音を記録できるようになっています。フォノトグラフで描かれた波形を拡大すると以下のようになります。2008年に音として復元することに成功しています。人類最古の録音となっています。

マルタンヴィルは速記の代替として考案し、波形を目で読むことが最終目標でしたが、これは残念ながら断念したようです。しかし音響の研究用機材として研究所に少しは販売できたようです。この発明に見合った利益は得られなかったようですが、その後の蓄音機の基本構造が入っているのは明らかです。報われなかった可哀そうな発明でした。

■ 1877年 フォノグラフ(Phonograph)エジソン

上記のフォノトグラフを参考に改良し、再生可能なものにしたものがフォノグラフです。当初は現在のレコードというよりは、電話の音声記録が主とした目的だったようです。当時エジソンが考えた他の用途は、音声手紙、音声文書、障がい者向、教育、音楽、人形、時計、広告、演説の記録などで、かなり多岐に渡って利用できることをアピールしていますが、コンセプトが先進的過ぎて、これらを実現するのに数十年から100年かかりました。またせっかく発明したフォノグラフですが、他の発明で忙しかったためか10年ほど放置されてしまいます。

フォノグラフの構造は、シリンダー表面の錫箔を入力音で振動したニードルで削って、凸凹を作ります。基本的にはフォノトグラフに近い構造ですが、振動を凹凸に記録したところが画期的な発明となります。再生するときは、出力用のニードルを削った溝に当てて、回転させれば、出力用ダイアフラムが振動し音が出るという仕組みです。まだ電気を使わない完全機械式なので、音量も不足気味です。出力部にホーンを取り付けるなどして音量を稼いでいました。

■ フォノグラフの製品化

10年ほど放置されていたフォノグラフですが、ライバルが出てきたため開発を再開し、製品化を推し進めます。シリンダーをワックスシリンダーへ変更し、交換可能にしたり、回転をゼンマイを使って自動化するなど、製品として使いやすいものへと進化して行きます。エジソンは録音機能にこだわっていました。

1899年にエジソンスタンダードフォノグラフが一般向けに販売されます。最長4分程度の録音再生が可能でした。モデルチェンジをくり返して、操作性、耐久性など向上して行きましたが、大量生産に適した円盤形レコードの勢いには勝てず、30年後の1929年でフォノグラフの製造は終了しました。この後、再生専用メディアとしては、現在もある円盤形レコードが独占することになります。録音はテープレコーダーが担って行きます。


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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あちゃぴー

楽器メーカーで楽器開発していました。楽器は不思議な道具で、人間が生きていく上で、必要不可欠でもないのに、いつの時代も、たいへんな魅力を放っています。音楽そのものが、実用性という意味では摩訶不思議な立ち位置ですが、その音楽を奏でる楽器も、道具としては一風変わった存在なのです。そんな掴み所のない楽器について、作り手視点で、あれこれ書いていきたいと思います。
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