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シンセサイザー鍵盤狂漂流記 その211 ~追悼 偉大なるプロデューサーMr.「Q」 PartⅡ~

2024-11-28

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 楽器

巨星墜つ クインシー・ジョーンズ

アメリカ音楽の大プロデューサーであったクインシー・ジョーンズさん(以下敬称略)が11月3日にお亡くなりになり、その音楽活動に終止符を打ちました。新聞紙面を見たときに少し気が遠くなるような感覚に襲われました。
クインシー・ジョーンズは私の大好きなミュージシャンであり、プロデューサーでした。クインシーの音楽は、気品に満ち、美しく、いつも新しい何かが含まれていました。
ジャズという背骨を持ちながら提示される音楽はあくまで分かり易く、商業的な切り口はあるものの、それとは異なる大衆性も持ち合わせていました。

クインシーブランドの確立へ

クインシー・ジョーンズが10代の時に、盲目のピアニストでありシンガーのレイ・チャールズとナイトクラブで演奏したことが音楽に関わるきっかけとなりました。クインシーはバークリー音楽大学でジャズを学び、トランペット奏者としてプロフェッショナルのキャリアをスタートします。その後、ライオネル・ハンプトン楽団でアレンジに関わり、プロデューサーという音楽を俯瞰する立場にまで登りつめます。
クインシー・ジョーンズはジャズの演奏家であり、アレンジャーであり、プロデューサーであり、レコード会社の経営にまで携わる多面的な能力を有した音楽家でした。
1961年にクインシー・ジョーンズはマーキュリー・レコード、ニューヨーク支社の副支社長に就任。マーキュリー・レコードにおいてプロデューサーとしての仕事も始めます。
マイルス・デイヴィスやフランク・シナトラといったレジェンドミュージシャンのプロデュースにもその能力を発揮しました。
1978年にはマイケル・ジャクソンのプロデューサーに就任。当時、マイケル・ジャクソンはクインシー・ジョーンズにプロデュースを頼みたいと考えていましたが、エピックレコード側としてはクインシー・ジョーンズはジャズの要素が強すぎる為、賛同しなかったといいます。
マイケル・ジャクソンは79年、クインシー・ジョーンズのプロデュースで『オフ・ザ・ウォール』をリリース。マイケルはこのアルバムでヒットメーカーとしての第一歩を踏み出します。

■ 推薦アルバム:マイケル・ジャクソン『オフ・ザ・ウォール』(1979年)

初めてクインシー・ジョーンズをプロデューサーに迎えたマイケル・ジャクソン5枚目の傑作アルバム。クインシー人脈を生かしたバンドメンバーが演奏を担当。腕利きミュージシャンを集めたサウンドは高度な完成度で聴きどころ満載。
1枚のアルバムから米国トップ10にシングル4曲を送り込んだのは初めてのこと。
プロデューサーがクインシー・ジョーンズであることを不満に思っていたエピック側を沈黙させる結果となった。
アルバムはビルボード・チャートで全米3位を獲得。次作『スリラー』への足掛かり的なアルバムとなった。シングルでは2曲が全米1位を獲得。4作品が全米チャートトップ10入りを果たした。
クインシー・ジョーンズのプロデューサー起用はマイケル・ジャクソンの運命を変えることになった。

推薦曲:「今夜はドント・ストップ」

マイケル・ジャクソンが初めて作詞、作曲を手掛けた楽曲。全米1位を獲得。
「今夜はドント・ストップ」を初めて聞いた時、冒頭のストリングスアレンジに度肝を抜かれた。後にこのストリングスアレンジはクインシー・ジョーンズの十八番となった。ブラザーズ・ジョンソンでもこのストリングアレンジを想起させる作品がある。
いずれにしろゴージャスでキャッチー。これから何かが始まる期待感をリスナーに抱かせる。マイケルのリズムの捉え方が楽曲のグルーブに貢献している。

推薦曲:「Rock With You」

クインシーのブレインであるロッド・テンパートンによる楽曲。全米1位を獲得。
この楽曲はベースとドラムが打ち込みでキーボードにはグレッグ・フィリンゲインズ、ギターはポール・ジャクソン・ジュニア、ワーワー・ワトソンといった一流セッションマンが参加。独特のグルーブの素となった。
ロッド・テンパートンは英国「ヒートウェイヴ」のバンドリーダーであり、コンポーザー。ロッドはこの後もクインシー人脈の重要メンバーとしてクインシーに重用されることになる。

■ マイケル・ジャクソン:『スリラー』(1982年)

全世界での売り上げ枚数が1億枚を超え、全米チャートでは37週1位という驚異的な記録を樹立させた音楽史上最大のモンスター・アルバム。シングルカットされた7曲全てが全米トップ10ヒット入りを果たすという歴史に残る大名盤となった。
レコードセールスだけでなく、タイトル曲の「スリラー」はビデオ化され、MTVの台頭と共に世界中で大ブームを巻き起こした。ビデオも「スリラー」のプロモーションに関わることで相乗効果をもたらし、アルバム大ヒットの流れを作った。

推薦曲:スリラー

ドラムやパーカッション、ベースは打ち込み。巧みで機械的シンセサイザーのベースラインによる、うねりがオオカミの叫び声などと混然一体となり、この楽曲のムードを構築している。
ビデオスタッフも超一流の面子を使い、空前の予算をかけた。ハリウッドの映画と肩を並べるクオリティの高さとマイケル・ジャクソンを狼男にする演出、ユーモラスなゾンビダンス、そしてクインシープロデュースによるスキのない楽曲……マイケルの下にアメリカの才能が集結。時代が欲した要素がうねりとなり「マイケル・ジャクソン」という時代のアイコンを作り上げたシンボリックな名曲。

推薦曲:今夜はビートイット

エドワード・ヴァン・ヘイレンのロックギターを全面に出し、ヴァン・ヘイレンの強力なソロが聴ける傑作楽曲。この楽曲は3枚目のシングルカットとなり、全米1位を獲得。
マイケルとギャンググループが強烈なダンスを繰り広げる「ビートイット」のプロモーション・ビデオは「スリラー」同様、楽曲を売る為の方程式に組み込まれていくことになる。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲

  • アーティスト:マイケル・ジャクソン、クインシー・ジョーンズなど
  • アルバム:『オフ・ザ・ウォール』『スリラー』
  • 推薦曲:「今夜はドンド・ストップ」「Rock With You」「スリラー」「今夜はビートイット」

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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