イーグルスの重要メンバーでありベースプレイヤー
ウエストコースト・ロックの雄、イーグルスのオリジナル・メンバーであったランディ・マイズナーさん(以下敬称略)が2023年7月26日に亡くなりました。享年77。
ランディ・マイズナーは1946年アメリカ、ネブラスカ州生まれ。そのキャリアはカントリー・ロック・グループ、ポコのベーシストからスタートしました。1971年にグレン・フライや、ドン・ヘンリーらとイーグルスを結成。イーグルスのアルバム『呪われた夜』『ホテル・カリフォルニア』など5枚のアルバムに参加しています。1998年にはイーグルスとともにロックの殿堂入りを果たすという偉業を成し遂げています。
今回は偉大なるベースプレイヤーであり音楽家だったランディ・マイズナーの音楽を彼の作品から振り返りたいと思います。
ランディ・マイズナーはベースプレイヤーでありながらソングライティングもこなす音楽家です。イーグルスをはじめ、自身のソロアルバム『ワン・モア・ソング』など多くをリリースしています。
ロサンゼルスの高級ホテルであるビバリーヒルズホテルの夕景をジャケットにした『ホテル・カリフォルニア』はウエストコースト・ロックの名盤です。
タイトル曲である「ホテル・カリフォルニア」は哀愁を帯びたドン・ヘンリーによる歌唱と最後に押し寄せるドン・フェルダーとジョー・ウォルシュのツインギターソロで瞬く間に世に知れることになりました。
ドン・ヘンリーの歌唱やツインリードが語られる一方で、ベースの存在はどこか置いてけぼり的な扱いになっている印象があります。
私は「ホテル・カリフォルニア」のキモはベースにあると考えています。そのベース・を弾いていたのがランディ・マイズナーです。とかくベーシストの存在は忘れられがちですがマイズナーの弾くベースラインの素晴らしさが名曲「ホテル・カリフォルニア」屋台骨であると私は考えています。
■ イーグルス:『ホテル・カリフォルニア』(1976年)

1976年、ウエストコースト・ロックの大名盤でカリフォルニアの退廃をテーマにしたコンセプト・アルバム。タイトル曲「ホテル・カリフォルニア」もその例外ではない。音楽雑誌のアルバム・チャートでは8週連続全米第1位を獲得。グラミー賞では最優秀レコード賞も獲得している。
ベースプレイヤーのランディ・マイズナーが作曲した「トライ・アンド・ラブ・アゲイン」も印象的なトラック。
推薦曲:「ホテル・カリフォルニア」
「ホテル・カリフォルニア」とタイトルが付く以前はライターであるドン・フェルダー、ドン・ヘンリー、グレン・フライからは、「メキシカン・レゲエ」と呼ばれていた。
「ホテル・カリフォルニア」を聴くと美しいメロディラインに惹かれてしまうため、この楽曲がレゲエ由来なことを忘れてしまう。レゲエといっても、ボブ・マーリーのようなアーシーなレゲエではない。あくまで味付け程度だ。
楽曲を聴くとランディ・マイズナーのベースラインは想像されたポップスのラインからはかなりズレているのが分かる。私のバンドメンバーであるベーシストは「よくこんなフレーズを思いついたものだ」と話していた。
私はこのベースラインこそが「ホテル・カリフォルニア」を唯一無二の存在にしている一番の要因だと考えている。
ベースラインのフレーズとオブリガート的なギターリフが相まって「ホテル・カリフォルニア」独特のグルーブが生まれる。このベースラインを作りだしたランディ・マイズナーの創造力に感服せざるを得ない。
実際のライブを聴くとグレン・フライはアコースティック・ギター、ドン・ヘンリーとジョー・ウォルシュはエレキ・ギターを弾いている。ギターを弾くイーグルスのメンバーは3人しかいないが、ステージ裏で第4のギタリストがレゲエのコードカッティングをしている。レゲエ的テイストを担っているのはイーグルスのメンバーではない誰かだ。(笑)
■ 推薦アルバム:イーグルス『呪われた夜』(1975年)

イーグルス1975年リリースの4枚目のアルバム。全米1位を獲得。元々はカントリーテイストが強かったバンドだったが、前作でギタリストバーニー・レドンが脱退。新メンバーとして参加したドン・フェルダーがイーグルスのロック化を推し進めたものと考えられる。
ランディ・マイズナーのペンによる名曲で後のイーグルスのライブの定番となった「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」は全米でトップ10入りをしている。
推薦曲:「呪われた夜」
冒頭のベースから始まるイントロはポップスというカテゴリーからは想像を超えている。このベースのフレーズがマイズナーから生み出された(イントロアレンジはドン・フェルダーとされている)とすればその創造力は恐るべし!としか言いようがない。これだけインパクトのあるベースによるイントロを私は聴いたことが無い。このベースのフレーズにギターカッティングが絡みさらにツインギターのハモリフレーズが導く曲展開はイーグルスの音楽が新境地に突入したことを物語っていた。
推薦曲:「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」
ランディ・マイズナーの1番の大ヒット曲。壮大なストリングスによるアレンジはドラマチックそのもの。サビのブレイクはこの歌のテーマを象徴する部分であり、哀愁あるメロディとマイズナーのハイトーンボイスと相まってウエストコースト・ロックを代表する楽曲に仕上がった。この楽曲はデイブ・メイスンなど、多くのアーティストにもカバーされている。
私は1979年、イーグルス2度目の公演を武道館に聴きに行きました。既にランディ・マイズナーはバンドを脱退し、ベースプレイヤーはティモシー・B・シュミットに代わっていました。「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」はライブで演奏されました。私としてはランディ・マイズナーのボーカルが聴けないのが残念だった記憶があります。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
追記:グレン・フライもジョー・ウォルシュもギタリストでありながらフェンダーローズピアノやハモンドオルガンを器用に弾いていました。
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲
- アーティスト:ランディ・マイズナー、ドン・ヘンリー、ドン・フェルダー、グレン・フライなど
- アルバム:『ホテル・カリフォルニア』『呪われた夜』
- 曲名:「ホテル・カリフォルニア」「呪われた夜」「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」
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