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Rock’n Me 16 洋楽を語ろう:ジョー・ウォルシュ

2022-01-31

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

こんにちは。洋楽を語りたがるジョシュアです。
第16回目では、ギタリスト・シンガーソングライターであるジョー・ウォルシュJoe Walshについて語ります。一文でまとめると「バンドとソロ活動で名を売り、名機をジミー・ペイジやピート・タウンゼントに譲り、イーグルスをスーパー・バンドにし、豪快なキャラだけど音楽は繊細な人」です。

ジョーはアメリカのカンザス州で1947年に生まれ、オハイオ州の大学在学中にバンド活動を本格化させました。大学を中退し、1969年、ジェイムス・ギャングという3人組バンドでギタリスト・ヴォーカリストとしてデビューしました。” Walk Away” “Funk #49” などの代表曲を生み出しました。この活動中、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジやザ・フーのピート・タウンゼントと仲良くなり、ジミーには1959年製のギブソン・レスポールを譲って、それはジミーのメイン・ギターとなりました。また、ピートにはグレッチ6120を譲り、そのギターは『Who's Next』という名作のメイン・ギターとなりました。

■ ジェイムス・ギャング “Walk Away”

youtubeで動画を見る

ジェームス・ギャングを脱退した後は、自身のバンド、バーンストームを結成し(実質的にはジョーのバンド)、後にソロ名義となりました。気だるそうなダミ声が特徴的ですが、スローな曲で美しいコーラスを聴かせるなど、見た目によらない繊細さも兼ね備えています。ギターにおいて個人的に感心するのはベンディング(チョーキング)で、クォーターから半音・一音・一音半など、音程・速度とともに使い分けています。クリーンからディストーションまで色々な音色を響かせ、レスリー・スピーカーをつないで美しいモジュレーションをかけたり、トーキング・モジュレーター(トーク・ボックスとも呼ばれる)を”Rocky Mountain Way”のソロで用いたりして彩りを加えるほか、スライド・ギターの名手でもあります。

■ ジョー・ウォルシュ “Rocky Mountain Way”

(1973年発表の曲ですが映像は1980年代のものです)

1975年、彼の人生を大きく変える出来事が起きました。イーグルスというバンドにギタリスト・ヴォーカリストとして加入したのです。イーグルスはジョーの加入で一気にパワーアップし、1976年には『Hotel California』を発表し、世界的な名声を収めました。タイトル曲では、ギブソンSGのダブルネックを弾くドン・フェルダーと、テレキャスターを持つジョーとのツインギターソロが、ロック史に残る名場面となりました。このようなイーグルスのサウンドは「ウェスト・コースト・ロック」や「AOR (adult-oriented rock)」と呼ばれ、後の音楽に多大な影響を及ぼしました。ちなみに、「グッバイ」の日本語訳が曲名となっている某バンドの代表曲では、Aメロのベース・フレーズがこの曲にソックリです。ついでに、途中でツイン化するギター・ソロの展開も...。「もちろん」こういうのは「道を外れている」と思います。

■ イーグルス “Hotel California”

イーグルスはベスト・アルバム『Their Greatest Hits (1971-1975)』が「史上もっとも売れたアルバム」としても知られています。しかし『Hotel California』以降は巨大化しすぎました。音楽的に行き詰まり、バンド内の人間関係も悪化して1980年に解散しました。ジョーはソロ活動を続け、薬物依存の影響による停滞期もありましたが、1994年にはイーグルスが再始動しました。次の動画はその再始動コンサートのもので、曲は彼らのデビュー曲”Take It Easy”。ジョー加入前の曲ですが、ジョーによる間奏と終奏のカントリー・タッチなソロは雰囲気抜群です。イーグルスの再始動後、ジョーはイーグルスと自身のソロ活動をコンスタントに行い、リンゴ・スターのオールスター・バンドにも参加して精力的に活動しています。

■ イーグルス”Take It Easy”

個人的には、2003年のワシントンDC公演を2回観たのが思い出深いです。会場は2日間ともMCI Centerという巨大アリーナ(収容人数約2万人)でした。当時のアメリカはコンサート・チケット代の高騰が著しく、彼らのチケットは175ドル(当時のレートで約17,500円)でした。しかしどうしても観たかったため、調子に乗ってチケット争奪戦に参入し、2公演もチケットを取ってしまいました。

■ 2003年7月12日MCI Center公演(追加公演)フライヤー

■ 2003年7月11日・12日MCI Center公演チケット

いざコンサートに出向くと、2日とも全く同じセットリストと展開で、「金返せ」という怒りが自分のなかに芽生えました。しかし、それはあくまでも散財した自分に対する怒りであり、コンサートの内容自体は(ほぼ同一とはいえ)文句のないものでした。イーグルスのコンサートは、各メンバーのソロ・ナンバーも披露されるのが恒例ですが、コンサートの中で一番盛り上がったのはジョーの”Funk #49”と”Rocky Mountain Way”だったことをはっきり覚えています。ジョーが裏番長として立ち続けているからこそ、番長のドン・ヘンリーも安心してイーグルスを続けられているんだ、と実感しました。実際、もう一人のギタリスト、ドン・フェルダーが脱退しても、もう一人の番長グレン・フライが亡くなっても、イーグルスはしぶとく続いています。私が観た2003年のツアー名は『Farewell I』でしたが、何度も「さよなら」を言いながら、ふてぶてしく活動を続けてほしいものです。


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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ジョシュア

1960年以降の洋楽について分かりやすく、かつマニアックに語っていきます。 1978~84年に米国在住、洋楽で育ちました。2003~5年に再度渡米、コンサート三昧の日々でした。会場でのセットリスト収集癖があります。ギター・ベース歴は長いものの永遠の初級者です。ドラム・オルガンに憧れますが、全く弾けません。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズに関するメールマガジン『Depot Street』で、別名義で寄稿しています。
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