ギターと同じチューニングでありながら弦が4本しかないベース。 その構造からギターより簡単なパートと思われたり、目立たない地味なパートという印象を持たれたりしてしまうこともあります。
ギターとは難しさも役割も全く異なる楽器なのに、まわりにうまいギタリストがいたからという理由でベースに転向した人、させられた人も少なくないでしょう。
そのパターンでベーシストになった人の多くは8ビートのルートを刻み続け、たまに3度や5度を弾くという初心者あるあるなプレイスタイルをしばらく続けることになります。
ルート刻みが悪いというわけではありません。 どっしりとしたリズムの8ビートルート刻みは男気溢れるベースラインで、動き回るベースラインとは違った魅力があります。 しかし、ルート刻みしかできない人と、それもできつつメロディアスなベースラインも奏でられる人は違います。 これを機会に色々なプレイを覚えて脱初心者してみませんか?
■ まずは3度と5度
ルート弾きをやめようと思った時にまず思いつくのが、3度(マイナーキーの場合は短3度)と5度を加えたベースラインです。 簡単でどんな曲でも使いやすいのですが、ただ3度と5度をいれただけではあまりルート弾きと印象は変わりません。 ただし、この3度と5度も使い方によっては上級テクニックに変わります。
○ 小節の頭にルートを弾かない
3度、5度をいれてもあまり印象が変わらない原因は、コードチェンジの頭に結局ルート音を弾いているところにあります。 例えばコードがCならまずはCを弾き、そのコードが続いている間に3度や5度で動いていくという弾き方ですね。
それもいいのですが、たまには最初からルートを外れてみましょう。 例えば以下のようなコード進行の場合です。
Cmaj7⇒A7⇒Dm7⇒G7
2つ目のA7をルートではなく、3度目であるC#に変えて弾いてみてください。 するとCからの半音進行でA7に繋がり気持ちいい聞こえ方をします。
3度と5度なら必ず置き換えられるわけではないのですが、循環系のコード進行の場合には使える場合が多いです。
詳しくは長くなるので割愛しますが、興味がある人は理論を突き詰めてみてください。 特にジャズをやる人はこの手の理論に強い傾向にあり、中にはルートをほとんど弾かないプレイというのもあります。
○ バスドラをどう意識するか
ベースはバスドラに合わせるのが基本とされています。 同じ低音楽器ということもあり、同時に聞こえると相乗効果で曲がしまった感じになります。
これはだれから学んだわけでもなくとも、自然とできているベーシストがほとんどです。 聞こえ方として気持ちいいのでしょうね。
しかし、逆にとらえればありきたりなリズムとも言えます。 一目置かれるベーシストになるためには、バスドラに合わせるという基本は抑えつつもあえてずらすリズムも使えるといいでしょう。
有名な曲でバスドラと合わせて演奏していないものとしてはPolisのWalking on the moonを参考にして頂ければと思います。
The Police - Walking On The Moon
バスドラからは大きくずれていますが、弾いていることはルートと3度と5度くらいなもので難しいことはしていません。 もしこの曲がバスドラやコードチェンジに合わせてルート弾きをしていたら、全く違う印象の曲になった事でしょう。 曲に合わせたベースを考えることも大切ですが、曲を変えてしまうほどのベースを弾くようになったらバンド内でも重要な存在になれます。
■ ゴーストノートとスタッカート
流れるようなベースラインとは対称的に、休符を生かしてノリを生み出すプレイに必要なのがゴーストノートとスタッカートです。 ゴーストノートはドラムでも必須スキルですし、ギターではブラッシングという奏法でゴーストノートの役割を果たします。
ベースではギターのブラッシングの弾き方と似ていて、弦をミュートした状態で弾き、音程がよくわからないパーカッシブな音を出す奏法です。 実音を出さない時にスタッカートで無音の間を作るのか、ゴーストノートを使うかで曲のノリが全く違うものになります。
手書きで恐縮ですが3つのパターンを作ったので弾き比べてみてください。 指弾きでもピック弾きでもかまいません。
一番上はブラッシングなしです。 スタッカートを意識しながら弾いてください。 次に真ん中のリズム譜ですが、先程は休みだったところの全てにブラッシング記号である×が書いてあります。 そして最後にブラッシングと休符が混ざったものです。
実音がはいっているポイントは全て同じなのに、曲のノリはかなり違って聞こえるはずです。 このゴーストノートとスタッカートを区別して効果的に曲の中で使うことができるようになれば、もう初心者ベーシストとは呼ばれません。
■ 最後に
ここで紹介したのはベース奏法のごく一部です。 地味な印象が強い楽器ではありますが、チョッパーやタッピング、コード弾きなどの目立つプレイもあるので、決してバンドの中で埋もれるだけのパートではありません。
ロックだとビリーシーンやレッチリのフリーはバンドの中でも主役級に目立つ存在だし、ジャズベーシストのジャコパストリアスはベースだけで曲を成立させています。
実は自由度の高い楽器でもあるのでどんなベーシストになりたいか、様々な奏法を覚えながら自分のスタイルを確立していってください。
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