サイモン&ガーファンクルの音楽は時代と共に… パートⅡ
前回はサイモン&ガーファンクルの代表曲「サウンド・オブ・サイレンス」を切り口にポール・サイモンという音楽家とヒットに至る背景等を取り上げました。
今回は彼らの代表曲や映画のサウンドトラック制作から見えるポール・サイモンの音楽を検証します。
サイモン&ガーファンクルというデュオユニットの社会的背景
ポール・サイモンとアート・ガーファンクルは1964年リリースのファーストアルバムにクレジットされた「サウンド・オブ・サイレンス」のリアレンジしたシングルで全米1位を獲得。
フォークの隆盛期は終わりつつあり、人々が新しい音楽を求め始めている時代でした。フォークとロック、生ギターと電気ギターなどを1つの対立軸として掲げ、議論がされていました。所謂、アコースティックからエレクトリック、フォークからロックへの移行期だったと言えます。
そんな60年代中期を象徴していたのが、フォーキーだった楽曲「サウンド・オブ・サイレンス」の電化でした。プロデューサーが勝手にドラムと電気ベース、電気ギターをオーバーダビングし、8ビートに仕立てた「サウンド・オブ・サイレンス」。アルバムトラックでは見向きもされなかった楽曲が全米1位となったエポックはまさに時代がこの種の音楽を要求していたことになります。
ポール・サイモンという音楽家
サイモン&ガーファンクルの音楽は時代の波に乗り、スター街道を駆け上がることになりますが、60年代中期以降にポール・サイモンという音楽家の成長があったことは我々が忘れてはならない事実です。60年代中期のポール・サイモンは時代を牽引できる能力を持ち得ていたとは思えませんし、サードアルバムからヒットした「スカボロー・フェア」は完全な彼のオリジナルではありません。映画「卒業」のサントラ制作でも新たな曲は却下され、旧曲が採用されています。そういう意味ではまだ彼の音楽は発達途上にあったのです。
■ 推薦アルバム:サイモン&ガーファンクル『パセリ・セージ・ローズマリーアンドタイム 』(1966年)

サイモン&ガーファンクルのサードアルバム。「サウンド・オブ・サイレンス」のシングル全米1位という期待感もあり、アルバムセールス全米4位という当時の彼らにとって最高位を記録。
「スカボロー・フェア」は名曲ではあるものの、楽曲の粒が揃わないセカンドアルバム「サウンド・オブ・サイレンス」のリリース年と同年にこのアルバムがリリースされていることを考えれば潤沢に制作時間があったとは思えない。
一方、楽曲の質としては後年ベストアルバムにもクレジットされることになる「早く家に帰りたい」や「59番街橋の歌(フィーリン・グルービー)」などの佳曲が作られており、ポールのオリジナリティが確立され始めた時期なのではないかと考える。
推薦曲:「スカボロー・フェア」
サイモン&ガーファンクルの特性である2人のハーモニーが上手く生かされている楽曲。イギリスの民謡から引用されたとされる楽曲はポール・サイモンのフィルターを通し、素晴らしい楽曲に生まれ変わっている。ポールは英国在住の際、英国人ミュージシャンからギターモチーフや民謡を教わり、このスカボロー・フェアに反映させた。また、自身のオリジナル反戦曲からの引用もある。アート・ガーファンクルも楽曲制作に貢献している。
推薦曲:「7時のニュース/きよしこの夜」
クリスマスソング、「きよしこの夜」の背景に当時の世相を反映したDJが読むニュース(ベトナム戦争関連、公民権運動関連、キング牧師関連など)を延々と流すという彼らのメッセージとも受け取れる内容。
■ 推薦アルバム:サイモン&ガーファンクル『卒業/オリジナル・サウンドトラック』(1968年)

映画の『卒業』の有名シーンでこの脚は不倫相手であるロビンソン婦人の脚。手前にロビンソン婦人のストッキングを履く脚をナメて、その後方にダスティン・ホフマンを置くという絶妙な1カットがレコードジャケットのアートワークに採用されている。
マイク・ニコルズ監督はポール・サイモンにサウンドトラックを依頼。ポールは新曲を提示するものの、ニコルズ監督はサイモン&ガーファンクルが既に発表していた「サウンド・オブ・サイレンス」「スカボロー・フェア/詠唱」「4月になれば彼女は」などが映像に合っていると判断。新曲は却下し既発の名曲が採用されることになった。
推薦曲:「ミセス・ロビンソン」
イントロはポール・サイモンのアコースティック・ギターのカッティングから始まるシンプルなアレンジになっている。『ブック・エンド』に収録されている同曲とは別のトラックで、歌いまわしも変わっている。
「ミセス・ロビンソン」のタイトルは当初は「ミセス・ルーズベルト」だった。しかし、オファーを受けたポールが締切りに間に合わなかったことから、ツアーの途中に作った楽曲「ミセス・ルーズベルト」をサウンドトラックの1曲に充てることになった。
アート・ガーファンクルの提案で、主役のダスティン・ホフマンと不倫をするロビンソン婦人にちなみ、「ミセス・ロビンソン」とタイトルを変更したのは有名な話。
推薦曲:「4月になれば彼女は」
ポール・サイモンの3フィンガーを崩したアルペジオのイントロから始まる。2分にも満たない爽やかな楽曲。ポールはこういった小作品を作らせても非常に上手い。
ポールのフィンガーピッキングの素晴らしさとアート・ガーファンクルの歌唱がピタリとはまっている。
映画「卒業」ではロビンソン婦人とのベッドシーンでダスティン・ホフマンがロビンソン婦人と重なる瞬間にカット替わりし、プールの浮き輪ボートにホフマンが滑り込むという編集ワークが秀逸。このシーンに使われているが「4月になれば彼女は」だ。マイク・ニコルズ監督の音楽を充てるセンスには敬服する。
是非、映画をご覧下さい。本当に素敵なんです!
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲
- アーティスト:ポール・サイモン、アート・ガーファンクル
- アルバム:「パセリ・セージ・ローズマリーアンドタイム」「卒業/オリジナル・サウンドトラック」
- 曲名:「スカボロー・フェア」「7時のニュース/きよしこの夜」「ミセス・ロビンソン」「4月になれば彼女は」
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