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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~夏全開!ブラジル音楽名盤レビュー!日本人ミュージシャンのサンバ、ボサノバⅢ~ その92

2022-09-20

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

ボサノバというジャンルのJポップの担い手、南佳孝さん 第1巻

夏必聴!のサンバやボサノバ名盤、名曲を作曲家や演奏家などから検証するサンバ、ボサノバ大特集。
前回に続き、ボサノバそしてサンバのブラジル音楽を素材に音楽制作をする日本人ミュージシャンを取り上げます。今回は南佳孝さんです。

ブラジルと縁の深いシンガーソングライター

南佳孝さんと言えば、お歳を召した方々は「モンロー・ウォーク」が頭に浮かぶ筈です。
郷ひろみさんが1979年に同じ曲の異なるタイトル、「セクシー・ユー」でこの曲を大ヒットさせました。
この曲を書いたのが南佳孝さん。来生えつこさんが詞を書いています。来生さんの楽曲冒頭部はイパネマの娘からインスパイアされたらしく、リオデジャネイロのイパネマ海岸を彷彿させます。~♪ジャマイカ辺りのステップで…とありますが、ジャマイカだとレゲエになるので、そのステップがどうなるのかは疑問です(笑)。
南さんは「セクシー・ユー」でその存在を知られるようになりますが、初期のアルバムにもブラジル由来の曲を多く書いています。
鍵盤狂漂流記でも紹介した1976年、セカンドアルバム「忘れられた夏」の「月夜の晩には」はサンバをベースにした素敵な曲。1978年リリースの「サウス・オブ・ザ・ボーダー」の「日付変更線」も典型的なボサノバの名曲です。
ご自身の声質がブラジル的楽曲にマッチするというのもあるのでしょうが、サンバやボサノバなど、ブラジル由来の楽曲にインスピレーションを受けているのが分かります。
それが単なるコピーではなく、楽曲にサムシングニューを持たせるのが南さんの南さんたる所以だと思います。

■ 推薦アルバム:南佳孝『どこか遠くへ』(1991年)

さまよう男の心をテーマにした南佳孝14枚目のアルバム。 T-SQUAREのサックス、伊東たけしさんやPSY・Sのボーカリスト、CHAKAさん、楠瀬誠志郎さん、東京スカパラダイスオーケストラ等がゲストで参加をしている。バラエティ感のあるアルバム。
このアルバムでもボサノバやサンバを素材にした曲が光りを放っている。

推薦曲:「MONTECARLO SAMBA」

このアルバムの中で一番の出来だと確信する楽曲。怪しげなパーカッシブなシンセに導かれ、印象的なストリングスとベースのフレーズが被る。この辺りの演出はアレンジャーの松本晃彦氏のセンスによるものだろう。モンテカルロ・サンバというタイトルではあるが、サンバというよりボサノバっぽい。
モンテカルロのカジノを舞台にした恋の行方が幻想的なガットギター?によって彩られる。Bメロのメジャーセブンスコードを纏うメロディが美しく、曲中ブリッジ部分のフレーズも素晴らしい。そして、サビはとってもポップ!という、楽曲を引き立てる音楽的仕掛けに溢れている。サウダージ感溢れるアウトロ部分のスキャットも最高で、こういう奥行のある楽曲は南さんしか作れないのではないかと思う。

■ 推薦アルバム:南佳孝『NUDE VOICE』(2001年)

南佳孝さんによるジャズのスタンダード・カヴァー集。アレンジとプロデュースは渡辺貞夫オーケストラの音楽監督をしている村田陽一(tb)さん。
ポンタ・ボックスや熱帯JAZZ楽団、渡辺香津美さんなど日本ジャズのファースト・コール達が参加している。

推薦曲:「マイ・ファニー・バレンタイン」

ジャズスタンダードをボサノバタッチで村田陽一さんがアレンジ。ギタリストは鍵盤狂漂流記その90、91で紹介した日本ボサノバのマエストロ、中村善郎さんがガットギターを弾いている。艶やかな音色、滑らかなタイム感は唯一無二。
また、村田陽一さんによるトロンボーンソロや低域を支えるブラスアンサンブルが、楽曲の陰影を深くしている。村田さんのピアノソロ!も聴きもの。

推薦曲:「ザ・ギフト & ザ・ギフト」(デモ・バージョン)

イージー・ゴーメの歌唱でヒットしたボサノバの名曲で別名は「リカード・ボサノバ」。
この曲も人気曲でジャズミュージシャンが好んで取り上げた。
シャンソン風のアレンジは村田陽一(tb)さんによるもの。南さんはこういった陰りのある曲との相性が良く、自身の表現力が楽曲に上手く反映されている。ここでも村田さんが、ピアノを弾いている。

■ 推薦アルバム:南佳孝『BLUE NUDE』(2002年)

前作に続く南佳孝さんの「ヌードシリーズ」。前回のジャズに対し、今作はボサノバのカヴァー集。
フランスの画家、アンリ・マティスの後期の傑作、JAZZシリーズの切り絵がジャケット。
夏を思わせるアートワークが秀逸。アルバムテーマである「ブルーヌード」と絶妙のマッチングになっている。
村上ポンタ秀一や佐山雅弘、ショーロ・クラブ、ブレッド&バターらが参加している。
松本隆作詞の名曲「ミッドナイト・ラブ・コール」もボサノバタッチで復活。

推薦曲:「ソー・ナイス」(サマー・サンバ)

ワルター・ワンダレーの大ヒットアルバム「RAIN FOREST」からのナンバー。このトラックも前作同様、村田陽一さんのアレンジ。
メンバーは村上ポンタのドラム、佐山雅弘のピアノなど豪華なメンバーが顔を揃えている。
佐山雅弘のアコースティックピアノが曲の輪郭を浮き彫りにし、井上信平さんのフルートソロでテンポが倍になる。その後、女性スキャットというサウダージなメロディ。
村田陽一さんの冴えたアレンジがリゾート感を演出している。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲

  • アーティスト:南佳孝、村田陽一など
  • アルバム:「どこか遠くへ」「NUDE VOICE」「BLUE NUDE」
  • 曲名:「MONTECARLO SAMBA」「マイ・ファニー・バレンタイン」「ザ・ギフト」「サマー・サンバ」

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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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