シンクロナイズド ・トレモロユニット(以下トレモロユニット)が開発されて、70年以上が過ぎた。当初は曲の味付け程度のものと設計されたが、1960年代中盤以降、ジミ・ヘンドリックス等の登場でギター奏法の一部として一般化された。今日に至っては、さまざまな発展系のトレモロユニットが発表されているのは周知の通り。エレキギター奏法になくてはならない存在として普遍化されている。
ただ、我々が頭の片隅に入れてリスペクトしておきたいのは、開発者の一人、レオ・フェンダーが今日の激しいテクニカルで大胆なアーミングを想定して作ったものではないということだ。
ストラトキャスターを発表するにあたり、一番最後まで難航した部分のひとつであったのはこのトレモロユニットである。後述するが、サスティーンが得られなくて、レオ達は相当悩んだ。(出典:米国誌「THE Feder STRATOCASTER」)
これは鉄の塊をブリッジプレート下に置くことで奇跡的に解決するが、この発想の時期如何で、ストラトの発表はさらに遅れたかもしれない。
主にビグスピー社のビブラートユニットに対抗するためにフェンダー社のトレモロユニットは作られたか、当時他社と勝っていた点が最低5点あると思う。
- チューニングが狂いにくく高低可変ピッチの幅が大きいため、容易に好みのセッティングにできる。
- トレモロユニットが小さくコンパクトで、アームが簡単に取れ保管できる。
- 弦高、オクターブ調整、アームの操作具合の調整が容易にできる。
- 故障や磨耗しても代替えパーツが市場に豊富にあり、簡単に修理が可能。
- 現代においては(特に1990年代以降)様々な音色変化を楽しむ事ができる。
1954年製のトレモロユニットは大小約50個の部品で作られていた。そのうち、少なくとも35個以上のパーツは今日、改良する事ができる。
ではサウンドハウスで購入する事ができ、また改良できるパーツ(商品)を述べてゆこう。今回は2回にわけて説明する。PART1はボディ上部から改良してゆく。
改良する前に大事な注意点が2点ある。
変化の感じ方は人それぞれということ。この記事では私が確信した、またはギターリペアマンや知り合いのギタリストから得た事例をなるべく公正に言質をとっているが、もしかすると特に変化を感じない人もいるかもしれないということをお断りしておく。
2つ目は、改良はパーツを一つ一つ換えていくこと。一度に複数交換すると効果がわからなくなる。地道に換えてゆこう。
では、部品ごとに変化を述べてゆく。
ブリッジプレート
シンプルに言えばサドルの下「金属の板一枚」である。激安ギターのストラトタイプなら、数百円程度のコストしかかけていないであろう。取り付けるにはトレモロを全部分解しなければならなくて、セルフでは取り付け後のサドル等の調整が難しい。私はギターリペアマンに取り付けて貰った。
この値段が高くコスパのよくないパーツ、普通は交換しないと思う。だが、私は弦振動を直に受ける面積のあるパーツである事を考えて廉価版ギターが買える金額の10,000円以上を払って交換した。
結果、やはり変わった!鳴りが暖かく艶やかに変化した。はっきりわかった。私はトレモロユニットを使わないが、プレートエッジ部分の処理も優れており、アーミングも滑らかで狂いにくい。
いきなり一発目にブリッジプレートを変えてみたが、効果あるモディファイの極みと言える。個人的に一番感激した改良だ。
CALLAHAM ( カラハム ) / Top Plate for Vintage S Model Bridge
サドル
トレモロユニットの中でも交換すると、音の違いが判りやすいパーツ。主に鉄、チタン、真鍮、亜鉛ダイキャストなど素材が豊富だ。ストラトのオリジナルは鉄である。音の立ち上がりに優れており、交換するには一番無難。チタンは加工が難しく高価であるが、広く認知されている素材であり、特にKTS社はリプレイスメント業界では老舗。コードの響きも透き通っていて個性的だ。真鍮は1980年代前後に流行り、主にサスティーンの増加を狙ったものだが加えて温かみもあるサウンドであると思う。1970年代以降のストラトキャスターにマウントされた、亜鉛ダイキャストには様々な意見があるが、個人的には1970年代の音楽シーンのサウンドをアウトプットしていると思っており、音質的に全く問題ないと考える。パワフルで明るいサウンドだ。
フェンダーの現行品はスタンダードな音
FENDER ( フェンダー ) / AMERICAN VINTAGE STRATOCASTER BRIDGE SADDLES (6)
さらにフェンダーで拘るならPAT.PEND刻印が入ったこちら
FENDER ( フェンダー ) / Pure Vintage Stratocaster "Pat. Pend." Saddle Kit
KTSは綺麗な音色でサスティーンがある
KTS ( ケーティーエス ) / PR-11 For Synchronized Tremolo US pitch 11.2mm
RAW VINTAGEは分離の良いナチュラルな音
RAW VINTAGE ( ロウビンテージ ) / RVS-112
カラハム ややシャープな感じがする
CALLAHAM ( カラハム ) / Vintage S Model "CG" Saddle Set
コスパに優れるゴトー
イモネジ
1センチに満たないパーツであるが、弦振動をサドルから直に受けてボディに伝えるため、音質に大きく関与する。これに関しては私のコラム【コスバ最高!イモネジの交換で音質を変えよう】で詳しく取り上げているので、そちらを読んで実践して欲しい。
簡単に述べるとニッケル素材は自然な鳴り、ステンレスはパワーのある、くっきりとしたモダンなサウンドの傾向がある。
アーム
トレモロユニットを動かす、ルックスにも影響する粋なパーツ。素材、長さ、曲がり角度(デザイン)、太さなど様々な違いがある。素材は鉄、ステンレスに大きく二分される。後者は耐久性が勝り、折れにくいが価格が高い傾向にある。長さが短いアームで有名なのがデビット・ギルモア。ジェフ・ベックも右手の中に収まる先端に角度の付いたアームを長年愛用した。
70年代のリッチー・ブラックモアは極太アームを付けて激しくアーミングしていたし、80年代中頃には湾曲した通称『ムーン・シェイプ・スタイル・アーム』を極短期間着けていた。これは極端な音程変化よりも手から腕全体で素早いビブラートをかける奏法に向いていると個人的に考える。
カラハム社のアームはねじ切りが先端のみの短い仕様になっており、トレモロブロック内で曲がりにくく、ガタツキも少ない。長さも長短バリエーションがあり、お勧めである。(カラハムブロック専用)
角度が付いた定番品
MONTREUX ( モントルー ) / SC tremolo arm inch chrome w/white tip [8420]
短いアーム
MONTREUX ( モントルー ) / Montreux DG Stainless Arm Inch ver.2[9116]
RBタイプのムーンアーム
MONTREUX ( モントルー ) / Montreux RB Moon Stainless Arm Inch [9689]
三種類の長さが用意されている
CALLAHAM ( カラハム ) / Virtual Pop-in Tremolo Arm STD-Fender, Parchment White
直径が6mmの太いアーム
MONTREUX ( モントルー ) / Tremolo Arm 6mm Chrome [9708]
通常のトレモロブロックには加工が必要だろう。
今回紹介したサウンドハウスの商品は個人的にモディファイに使用したパーツの一例で、ホームページにはその他の商品が豊富にあるので是非とも検討してみることをおすすめする。貴方のオリジナルサウンドを探して欲しい。
次回PART2はボディ後部のパーツをモディファイしていく予定だ。

1980年代のフェルナンデスのカタログより
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