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完成した作品に適切なフォーマット

2021-02-10

テーマ:Knowledge

曲を作り、音楽や効果音を録音したり作成する方法はさまざまです。あらゆるオーディオ制作において、最終的に必要な各トラックからミックスダウンを行います。次に、マスタリングにより最終パッケージにまとめます。ここで作品はリリースされ、放送、ダウンロード、ストリーミングされたり、またはCD、DVD、SACDなどのメディアを通じて販売されます。

音楽制作において作品を作り始めるとき、新しい作品をどのように共有するかを考えるのは極めて重要なことであり、そのために曲をどのように効率良く録音するか、最適なフォーマットは何かを決めなければなりません。

デジタル時代の今、多くのオーディオ・ファイル・フォーマットがあり、最高のサウンドクオリティーを持つオーディオ・フォーマットはどれか、ストリーミングにはどれを使うべきか、様々なSNSメディアとストリーミング・プラットフォームでの違いは何か、などを調べる必要があります。インターネットで通信できる容量は増え、以前ほどオーディオファイルを圧縮する必要はありませんが、音楽制作に係わる全ての人がオーディオファイルを圧縮すると、音質は劣化するという認識を持っています。

オーディオ・コーデックとは

オーディオ・コーデックとはデジタル音声データをエンコードまたはデコードできるデバイスまたはコンピュータープログラムを指します。音楽データやストリーミングデータに対してエンコードまたはデコードするアルゴリズムを実行します。

コーデックはデジタルーアナログコンバーター(DAC)とアナログーデジタルコンバーター(ADC)両方の機能を持ち、同時に実行することができます。MP3、Winodows Media Audio(WMA)、Dolby Advancedなどが一般に使用されているコーデックの例です。音をデータへ、データを音へと変換します。

ロスと圧縮

ファイルサイズを圧縮するかしないかを含めて3種類の基本的なコーデック・タイプがあります。
詳細を見ていきましょう。

  • 非圧縮フォーマット
    録音したデータに対して圧縮しないフォーマットです。音は録音されたままの状態を保ちます。
  • 可逆圧縮フォーマット
    音質に対して妥協することなく、データを圧縮、解凍をすることができます。ファイルサイズは最大50%まで圧縮されます。
  • 非可逆圧縮フォーマット
    録音データに対して重要性が低いデータを破棄するように計算を行い、通信負荷の少ない(軽い)データパッケージを作ります。非可逆圧縮は心理音響原理を使用して極めて小さいサイズに変換します。マスキングという心理音響現象から、録音データのいくつかの要素は、「他の要素」によりカバーされ、リスナーは認識できません。音波を細分化して解析するという、このアルゴリズムは「認知コーディング」と呼ばれ、心理音響解析とデータ削減を実行し、その結果、およそ1/10までサイズを縮小できます。しかしながら、そのようなデータ/サイズ削減はコンピューターの処理量を増加させます。可逆圧縮録音データと違って、非可逆録音データは、全てのオーディオ情報を保有していないことから、音質の損失があります。音質がどの程度損なわれるかは、コーデックの性能(使われているアルゴリズムと、どの程度圧縮できるか)に依存します。

よく使用されるオーディオ・フォーマット

DSD(Direct Stream Digital)

ハイレゾリューション非圧縮オーディオ・フォーマットです。通常の16ビット/44.1kHz PCMデータやFLAC、ALACなどの可逆圧縮フォーマットより高音質です。この高品質コーデック(ΔΣ変調を使用、フォーマットは1ビット/2.8224 MHzサンプリングレート)を使用して録音されたデータを再生するのに高性能オーディオコンバーターが必要となります。

PCM(Pulse Code Modulation)

非圧縮オーディオ・フォーマットであり、アナログ信号をデジタルサンプリングします。コンピューター、CD、DVD、デジタル通信、他、デジタルオーディオアプリケーションの標準デジタルオーディオ・フォーマットとなっています。PCMレコーディングでは、増幅されたアナログ音声が一定間隔でサンプリングされ、各サンプルはデジタルステップ内の最も近い値に数値化されます。

WAV(Waveform Audio Format)

非圧縮フォーマット。非常に高いサンプリングレートと解像度を持ち、人の聴覚をカバーします。ファイルエンコードにはPCMデータフォーマットを使用します。非圧縮フォーマットであるため、ストリーミングには向いていません。

BWF(Broadcast Wave Format)

非圧縮フォーマット。WAVオーディオフォーマットを元にしたオーディオ専用のフォーマットです。EBU(European Broadcasting Union)が「放送用オーディオフォーマット」として採用しています。異なる放送環境やコンピュータ・プラットフォームの機器間でもシームレスにデータのやり取りができます。

AIFF(Audio Interchange File Format)

非圧縮フォーマットです。MacとPC両方に対応しています。Appleにより開発され、サウンドはPCMフォーマットと区別がつきません。データサイズが大きいため、使えないことはありませんが、ストリーミングではあまり一般的に利用されていません。

FLAC(Free Lossless Audio Codec)

可逆圧縮形式、オープンソース・オーディオフォーマットです。非常に効率がよい圧縮アルゴリズムであり、元のサイズに対して50~70%以上圧縮されます。高音質で音楽を保存する方法として一般的です。オープンソースのため、多くの機器とプログラム間で互換性があります。

ALAC(Apple Lossess Audio Codec)

可逆圧縮形式。M4Aファイルフォーマットを使用。他の可逆圧縮フォーマットと比較して、ファイルサイズは小さく、主にApple製品で使用されています。

MP3(Moving Picture Experts Group Layer-3 Audio)

非可逆圧縮。最も知られたサウンド・コーデックの1つであり、非可逆圧縮を使用し、非常にコンパクトなオーディオファイルを実現しています。MP3データはWAVデータの1/10にすることができ、固定、あるいは可変ビットレートでエンコードすることができます。固定ビットレートはオーディオファイルと同じ音質を確保できますが、ファイルサイズは大きくなります。可変ビットレートは無音のとき音質を落としてファイルサイズを小さくすることができます。

WMA(Windows Media Audio)

可逆圧縮、非可逆圧縮2種類のバージョンがあり、一般的にはWMAデータは非圧縮フォーマットよりサイズが小さくなります。MP3やFLACデータと同等の有用性があります。

Ogg Vorbis

オープンソース、ライセンス使用料なしの非可逆圧縮オーディオフォーマットです。転送速度を犠牲にせずWEB上でストリーミングが可能です。低ビットレートでも優れたサウンドを提供しつつ、オーディオデータを圧縮し、小さいデータサイズを実現しています。OGA/OGGファイルはMP3より高音質になるようです。

AAC(Advanced Audio Coding)

非可逆圧縮。小さいサウンドデータと非常にスムーズなオンライン・ストリーミングが特徴です。可変、または固定ビットレートで作成することができます。原音とほぼ同じ音質が必要な用途には向いていません。

選択方法

最適なオーディオ・フォーマットの選択方法はその用途により異なります。データ配信、またはメディアへ転送するとき、最適な音質のオーディオフォーマットを選択する必要があります。必要以上の高品質オーディオデータは扱いにくく、編集や共有をするのに不都合です。

  • プロのサウンド・エンジニアやコンテンツ・クリエーターは録音、編集、マスタリングするとき、音質を維持するため、非圧縮、高解像度ファイル・フォーマットを使用します。最終オーディオ・フォーマット作成が終了したら、データは配信しやすい圧縮フォーマットに容易にエクスポート(書き出し)することができます。PCM、WAV、BTF、AIFFなどは非圧縮フォーマットの例です。
  • 非圧縮フォーマットより保管容量が少なく、原音の音質をある程度維持している可逆圧縮オーディオ・フォーマットを選択することもできます。FLAC、WMA、ALAC(M4A)などがこれに該当します。
  • インターネットを通してオーディオ・レコーディングをシェアしたり、ストリーミングを行う必要があるなら、非可逆圧縮コーデックを選択してください。最近その音質が急速に改善してきて、可逆圧縮と非可逆圧縮の差が無くなってきています。MP3フォーマットが最も使われているフォーマットです。様々なビットレートで作成でき、音質とサイズのバランスが取れています。この効率の良いサイズはWeb上でオーディオデータを扱うときの標準フォーマットになりました。他に共通のフォーマットとして、Ogg VorbisとAACがあります。

もう一つアドバイスがあります。ミックスダウンを最終ミックスにエクスポートする必要があるとき、オーディオファイルは、保存メディア(CD、DVD)、放送、ストリーミングなどに最適化され、実現できる最高音質のものを選択してください。

インターネットで使用されるオーディオ

たくさんあるSNSプラットフォームを使用し、インターネットを介してオーディオ・コンテンツをシェアすることにより実現できることは無限にあります。インターネットでコンテンツをアップロードするとき、どのオーディオフォーマットを使うべきか。SNSの世界でよく起こるのは、オーディオとビデオの仕様がしばしば変更されることです。最も多い変更は、SNSメディア・プラットフォームに関連したもので、より楽しめる映像とリスニング体験をユーザーに届けるために、問題を解決するためのものです。

これらの変更全てが進化に追従するための挑戦です。次の表にその現状をまとめました。

SNS

  オーディオ・フォーマット1 ビデオ・フォーマット1
Facebook ステレオAACコーデック 128 kbps+ MOV、MP4(H.240圧縮コーデック)
Instagram ステレオAACコーデック 128 kbps+ MP4/MOV(H.240圧縮コーデック)
Twitter モノラル/ステレオAAC-LC
(low complexity)
MP4(web), MOV(モバイル)
Snapchat ステレオPCM/AACコーデック,
最小192 kbps、16/24 bitのみ,
サンプルレート48 kHz
MP4/MOV(H.264圧縮コーデック)
YouTube ステレオMP3 (MP3/WAVコンテナー), PCM (WAV コンテナー),
AAC (MOV コンテナー), FLAC 最小ビットレート(非可逆): 64 kbps
MOV、MPEG4、MP4、AVI、WMV、MPEGPS、FLV、3GPP/WebM
LinkedIn AAC/MPEG4コーデック、<=64 kbps ASF、AVI、FLV、MOV、MPEG-1、MPEG-4、MKV /WebM
Vimeo ステレオAAC-LC (Low Complexity),
320 kbps、48 kHzサンプルレート
H.240, Apple Pro解像度422 (HQ)、H.265 (HEVC)コーデック

ストリーミング・プラットフォーム

  オーディオフォーマット2
Spotify ステレオFLAC/WAV. 全てのファイルはWAV (44.1 kHz) に変換され、次のフォーマットにコード変換
Ogg/Vorbis (96、160/320 kbps) – AAC (128/256 kbps) – HE-AACv2 (24 kbps)
Pandora
Premium
AAC+ (32 kbps/64 kbps) MP3 (192 kbps)
Apple Music AAC (256 kbps)
SoundCloud WAV、FLAC、AIFF、ALAC、MP3、AAC、Ogg/Vorbis、MP4、MP2、M4A、3GP、3G2、MJ2、AMR、WMA
推奨: WAV (16 and 24 bits), FLAC, AIFF/ALAC
TIDAL HiFi マスター品質–MQA (Master Quality Authenticated)
44.1 kHz / 16 bits~96 kHz/ 24 bits (192 kHz) 2304~9216 kbps
HiFi – FLAC (44.1 kHz / 16 bits) @1411 kbps
標準 – AAC (320 kbps)

TouchMixミキサーとオーディオ・フォーマット

TouchMixの全モデルは、コンピュターを使用せずに、全入力、ステレオミックスダウンの録音、USBドライブへのダイレクト録音をすることができます。トラックは非圧縮32ビットBWF(Broadcast Wave Format)で作成され、ミキサー上でプレイバック、ミックスダウンに使用されます。または、DAW(Digital Audio Workstation)にオーバーダブとポストプロダクション編集用にインポートできます。

さらに、無料のTouchMix DAW Utility(Windows、Mac用)を使用してTouchMixトラックをDAWに、またDAWからTouchMixに転送することもできます。

結論

インターネットの通信量が増加したのにもかかわらず、非可逆圧縮オーディオファイルは、その成長と共に育った音楽愛好家と音楽制作者の間で数世代に渡り標準になっています。しかし、次の世代においては、非圧縮フォーマットの優れた音質を認識させるべきです。

高音質に関心がある全ての人のために、非圧縮、可逆圧縮オーディオを可能な限り積極的に共有し、最高品質のコーデックを求め、最も高いビットレートを選択し、この分野の技術革新から目を離さないようにすべきです。高音質オーディオ再生を目指すなら、高音質オーディオフォーマットが広く使用されなければ意味がありません。

この記事はQSCによるWhat’s the Right Distribution Format for Your Finished Audio Productionsの翻訳です。

Christophe Anet

Christophe Anetは、電気音響エンジニアであり、QSC Live Soundのシニア・プロダクト・マーケティング・マネージャーです。長年にわたり音響への情熱を持ち、世界中のレコーディングスタジオの設計、音響心理学の講義、レコーディングスタジオのコントロールルームの調整などを行ってきました。ギターを弾いていない時は、スイスアルプスでロッククライミングをするか、大自然の中で水彩画を描いています。

 
 
 
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