弦楽器を日々趣味で楽しむ皆様。演奏家の方、ご指導に当たられている先生方。演奏に欠かせない小さいけれど必須のアイテム。それは松脂ですね。

いつからお使いになっていらっしゃいますか?松脂を使い切ったご経験はおありでしょうか?これがほぼ使い切って役目を終えようとしている松脂の姿です。

画像はPirastro Eudoxa松脂、よくぞここまで使った。
筆者は日々楽器の検品で塗布しているので個人の方に比べ使用の頻度が高く、こういう状態の松脂を見ることになるわけです。
一般的には何年経ってもそれほど減らない(と感じる)松脂についてお話をしてみたいと思います。
- 松脂とはそもそも何?
- この先買い替えることはあるのでしょうか?
- 買い換えるメリットは?
- どういうタイミングで?
- どの松脂がおすすめ?
松脂とはそもそも何?
松脂と聞くと松の樹液と連想してしまいます。実際のところ弦楽器用の松脂として販売されているものはさまざまな成分をそのメーカー独自のレシピ(大抵は企業秘密のようです)で配合した樹脂の混合物です。このため製品によって、固さ、粘度、色合いが異なります。楽器の種類でも分類されていて、コントラバス用はそれ専用、と言い切って差し支えないと思います。一方でその他はチェロ用をバイオリンに使ったり、その逆もあったりします。
冒頭の写真でも色の黒いものから、薄い黄色いものまで種類があるのが分かります。
Wikipediaで弦楽器に限らず、松脂の説明があります。
Wikiでも説明されているように、滑り止め(野球のロジンバッグ、バレエのトゥーシューズに塗るなど)として広く使われているように、この滑りを止める≒摩擦を高めるという作用が弦楽器の弓に塗って使う、という事に応用されたのでしょう。
Pirastro社の公式サイトにも少し記事が載っています。

この先買い替えることはあるのでしょうか
現在ご使用中の松脂について、何かしらのご不満がありますか?例えば音や弾き心地で何となく不満が残る、粉がやたらと飛んで楽器が真っ白になってしまう、溝ができてしまって弓にちゃんと塗れない、割れてしまったetc……というような場合です。

割れてしまった松脂
買い換えるメリットは?
松脂は思いのほか音質に影響があるのはよく言われることです。確かに入門セットについてくる松脂と、ある程度の価格の松脂は比べた場合には、付きの良さ、音が滑らかになるなど感覚的な好印象が多い場合があるようです。単純に「高い松脂」はメーカーが自社での製造のレシピ、データに工夫を凝らしていて、プレイヤーの意見のフィードバックも反映させて長い年月で築き上げたレシピで作られています。
どういうタイミングで?
現在お使いの弓の毛についている松脂は取り除くことはできませんので、弓の毛替えや弓のお買い換えのタイミングで新しい松脂を購入して試すのが最も良いでしょう。
新しい毛に新しい松脂を塗って音を出すと楽器が生まれ変わった?というくらいの変化を感じられる事があります。
どの松脂がおすすめ? おすすめ5選
Hidersine ( ハイダージン ) / Hidersine 松脂3V
ハイダージン3Vは比較的廉価な松脂ですがその品質は折り紙付き。イギリスの老舗ブランドで歴史も長く、品質と価格のバランスはとても良いと言えるでしょう。
PIRASTRO ( ピラストロ ) / Pirastro 松脂 OLIV/Eva
Pirastro Oliv,Evah Pirazzi弦との相性が良い、とメーカーのサイトには記載があるものの比較的柔らかめのこの松脂は付きが良く、他メーカーのナイロン弦、ガット弦の使用には適していると思います。やや値が張りますがPirastroを代表する松脂のひとつです。
PIRASTRO ( ピラストロ ) / Pirastro 松脂 Schwaltz
Pirastro ShwaltzはPirastroの松脂の中では固いタイプ。楽器種はどちらかと言えばバイオリン、ビオラに適していると言えるでしょう。スチール弦との相性もとても良い松脂です。
Thorvaldsson ( トルヴァルドソン ) / Millant松脂ダーク
チェロの松脂と言えば「クロネコのダーク」パッケージの蓋に猫の絵が描いているので通称が「クロネコ」です。チェロに適した松脂は他にもありますが、まずはこれを試して間違いありません。弓の食いつきが違います。
KOLSTEIN ( コルシュタイン ) / コントラバス松脂オールウェザー
コントラバスの松脂も色々な種類がありますが、コルシュタインのオールウェザーは季節、特に夏場の松脂の変形などの度合いが少なく、安定した品質の松脂です。価格はそれなりにしますがそれに見合ったクオリティのためファンが多いのもうなずけます。
いくつか主要な松脂をご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。
まとめ
松脂を変えること自体は大きな出費とまでは言えないものの、弓の買い替えとなるとそうはいかないものです。しかし、弦楽器の音に極めて重要な役割を持っている弓と松脂は、使用する弦、楽器との相性がピタリと合うと、まるで弓が独りで動いて音を出している、それほどの劇的な音の改善すら感じる瞬間があります。
弓の買い替えは気軽に……とはいきませんが、より手軽に音の改善を試みることができる新しい松脂を選んでみてはいかがでしょうか。
次回は「新しい松脂を買ったら」~松脂の仕立てと松脂の正しい塗り方について
のお話の予定です。